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だがKOTO悪
【文字数:約1,000文字】
業務終了後は本部に連絡するよう言われ、「でもそれって意味あります?」と返した。
基本的に外回りだから動向を知る意味もあるのだろうけど、仕事してなかったら顧客から苦情がくるわけで、そのためにweb勤怠を導入しているわけで。
それすら使い始めのときにGPS連携しろと言われたけど、試しに連携させないまま使ってみたら何も言ってこない。
もしかしたら「位置情報を把握している」と思わせるのが目的かもしれず、それは従業員を信頼してないってことだろうか。
謎な部分もあるけど会社は嫌いじゃない。
問題を起こして大きなクレームになったときも、理由というか事情を聞いて庇ってくれたし、配置転換で対応してくれたのは嬉しかった。
恩着せがましい態度がなかったと言えばウソになるけど、こちらからの要望は概ね通してくれるし、何より有給が取りやすい。
店舗勤務だと休みの日は年末年始くらいしかなく、人件費との天秤で人員が決まるくせに、忙しくなってもフォローがない。
朝の始業から終業までが一瞬に感じられたことは何度もあって、しっかり体は疲れているから本当にしんどかった。
交代休にプラスして休みを取るのは難しく、どうしても各人の職能にバラつきがあって、それを平均化するための時間も取れやしない。
少しずつ電子化が進んで楽にはなったけど、同時に別の業務が出来て仕事の総量は変わらなかった気がする。
疲れた、休みたい、もうダメと言っちゃいけないマッチョイズムは格好いい。
だけど人間は疲れて老いるし、辞めて沖縄に行った人の気持ちが分かる。
その人はすぐ「疲れた」、「休みたい」、「もうダメ」と弱音を吐いたけれど、やるべきときは集中するし、周りからもけっこう慕われていた。
ある種のファーストペンギンというか、だれかが楽したいと言わなければ「怠け」として攻撃されかねず、率先して文句を言う人間は必要なのかもしれない。
退職の際にフランス製のカップを貰った私は、その人の意思を継いだわけでもないけれど、わりとすぐに弱音を吐く。
「たすけてドラ〇も~ん!」
残念ながらひみつ道具のない世界において、ボタン1つで仕事が終わることはない。
だから自分のできること、できないことを意識して、無理だと思ったら声にして助けを求めたり、ときに拒否するのも自分を守るためには必要なのだろう。
合理的な理由が見当たらないなら、私は次のように返す。
「だが断る」
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