スロバキア2 フルメイク
旅にまつわるBGMを聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪
スッピンからフルメイクへ
元共産の国が全てそうだとは言えないものの、たくさんの国々は、スッピンかフルメイクか、白黒はっきりしている所が多い。
まるで、早朝に通学したスッピンの学生が、デート前に向け、フルメイクに変身するかのように、このブラチスラヴァも変身具合がすごい。
旧市街の中心部に入った途端、いきなりフルメイクになり、町にどっと生命が吹き込まれたように感じる。
私とピアノの恩師・岩田朋子先生も、このフルメイクの旧市街に魅了され、バスが着いた、先程のスッピン・ブラチスラヴァはすっかり忘れ去られた。
こんな所にOO?
石畳の遊歩道をウキウキした気分で散歩していると、何かにつまづきそうになった。
「先生、こんな所に人がいました」
「あっ。チュミル像ね……」
マンホールに潜んでいるアートの銅像は、みんなの人気者のようだった。
このブラチスラヴァではベンチなどふとした所に、チュミル像以外にも色々な銅像を発見でき、その銅像と同じポーズをして撮影するのは童心に帰ることができ、とても楽しかった。
いよいよ「ひっくり返したテーブル」へ
堂々としたミヒャエル門、市庁舎や教会を散策しながら、いよいよ目的だった「ひっくり返したテーブル」へと向かう。
遠くから見ても、そのお城は確かに「テーブルをひっくり返した」形そのものだ。
「これだけちゃんと、正方形に建てられたお城も珍しいわね」
「12世紀位の王様、なかなか発想がユニークですね」
「マリア・テレジアも、ここに魅了されたみたいよ」
遠くから見てもよく目立つお城だったが、博物館になっているそのお城に登り切るのには結構距離があった。
「理菜ちゃん、待って……!」
太陽の過酷な日差しに、先生は少々疲れ気味だ。
「もう少しですね!水、飲みましょっか!」
「恥ずかしがらずに、日傘、持ってこれば良かったかな」
「ヨーロッパ、誰も日傘さしてないですもんね。でも、もう少しですよ!」
ここは弟子の頑張り所!と先生を励まし、私達は炎天下の中も頂上にたどり着くことが出来た。
頂上では、さすが爽やかな風が吹き、それは私達の疲れも癒してくれた。
テーブルの頂上から見る、ドナウ川
「理菜ちゃん、ほら、ドナウ川よ!」
「“ブラチスラヴァ”にも、流れているんですね」
「国ごとに、全然違う顔を見せる川よね……」
「そうなんですね……私も早く、先生みたいに全ての国からドナウ川を眺めてみたいです!」
先生はドナウ川に強い憧れを持った私に、宮本輝さんの小説『ドナウの旅人』を紹介下さった。
先生が卒業されたウィーン国立音楽大学で、これから私も学びを始めることになった。
先生のように私も、ここヨーロッパで大学生活を過ごせるなんて、夢のようで、私は希望を胸に抱き、そのドナウ川を眺めた。
対岸の眺めは、ウィーンのそれとはまた違った。
なんといっても、「スッピン」と「フルメイク」が混在しているのだ。
「あの先の辺りはスッピン、近くに見えるこの辺りは、フルメイクですね。あの真ん中の辺りが、昼休みにお化粧しかけた女子大生って所でしょうか……」
「こらこら!でも、面白いわ。その表現、食べ物や音楽に例えたらどうかしら?」
音楽だけでなく、文学やグルメ、あらゆる面で私をインスパイアして下さる先生ととは、この「ひっくり返したテーブル」の頂上でも話題は絶えなかった。
化粧落とし
この町のスッピンもフルメイクも堪能した私達は、満足感にあふれウィーンに戻ることが出来た。
バス乗り場へと向かうにつれ、ブラチスラヴァは化粧落としを始め、スッピンの町が再び私達を見送ってくれた。いつの間にか日は沈み、時間の経過を教えてくれた。
「次来た時は、ナチュラルメイクの場所が出来ているか、見ものですね!」
「ふふっ。そうね」
軽い熱中症になりながらも、先生も再訪に乗り気でいて下さっているようで、私は嬉しくなった。
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