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福祉はただのツールだから。

先週の話である。
千葉にある会社のオフィスで開かれた勉強会で、私は飯田大輔さんという、とても素敵な大人の存在を知ってしまった。

斎藤幸平さんの話

メイン話者は今をときめく斎藤幸平さんである。

よくぞまあこんな田舎に来てくださったなと思ったけど、当日オフィスにいた社長の熱量を見たらなんだか納得したし、それにこの会社は地元活性/改善目的の勉強会を隔月で開催していて、その履歴を見ると結構な人が登壇しているらしかった。


斎藤さんの話は主に「21世紀のコモン型社会に向けて」というテーマだった。

ざっくりと中身を伝えると、市場によって振り回される社会から自治を取り戻して、経済成長に左右されずに豊かな生活を作り出す「脱成長コミュニズム」を目指そう、そのためにも「共事者(当事者ではなくともそのことを理解し、共に行動する)意識」持とう、という内容の話。

さすが話が分かりやすくて面白かったし、今のところ「市場との付き合い方」を考える必要がすごくあるんだろうなという印象を持った。

(※勝手な要約)こんな感じの内容を事例とともにとてもわかりやすく解説してくださった  


おとなしょうがくせい

斎藤さんの話の後、地元の会社の代表がそれぞれ7人くらい「21世紀の資本論を読んでどう行動したか」というパネルトークをしてくれた。

今実際に取り組んでいることだったり考えていることの共有の場だったのだけど、私は少し穿った見方をしてしまった。
なぜならみんな「斎藤さんに丸つけしてもらいたくてしょうがない子供」みたいだったから。
自分達がやってること、合ってるでしょ?斎藤さんが言ってるのって、こういうことでしょ?

私は自分が何もやっていないくせに偉そうにも、そんなことをぼんやり思って少しうとうとし始めてしまったのだけど。

飯田さんという方が話し始めた瞬間、私は一気に目が覚めた。


飯田さんの話

飯田さんは「社会福祉法人福祉楽団」の理事長であり、「株式会社恋する豚研究所」の代表取締役である。

事業内容は多岐に渡るが、まさに「脱成長コミュニズム」を何年も前から実行されているような、今回の講演のテーマとぴったりハマることをすでに取り組んでいる会社だった。

福祉楽団公式サイトより


パネルトークの中で、医療や福祉そのものの必要性を唱えていた人が多い中で、唯一彼の話は、私の中にスッと入ってきた。

「自分達はあくまで『人』を中心にものごとを考えています。
福祉なんてものはただのツールでしかありませんから」

そうなのだ。
福祉だって医療だって農業だって、全てはただの手段でしかないのだ。

頭で考えれば至極当たり前なことでも、私には福祉を「ツール」と飄々と言ってのける彼が面白かったし、誰に言われるでもなく、自分が必要だと思うことを粛々と進めていく様子にいたく共感してしまった。


全体の質疑応答は時間切れでできなかったため、帰りがけに、ささっと飯田さんに近寄って聞きたいことだけ聞いてみた。

「脱成長コミュニズムと市場との付き合いの中で、飯田さんが考える『一番課題になりうること』はなんですか?」

私の問いに、彼はすぐに
「価格の決め方ですね。」
と返答してくれた。

価格の決め方。
これまで貨幣を持たなかったゆえにアクセスを奪われてきた共同の富に対して、価値をつける。森林も農地も人のコミュニティにさえも。

なるほど自分たちだけでは価格を決められない、市場の影響を受けざるをえないそのバランスの取りにくさには、私の想像を遥かに超える難しさがあるだろう。


私の後ろにも何人か飯田さんと話したそうな人がいてすぐその場を譲らざるを得なかったのだけど、彼とはまたゆっくりお話してみたいと思った。

それに「恋する豚研究所」というネーミングもとてもいい。とても美味しくて人気があるブランドのようだった。

年末の贈り物に何箱か発注しようと思ったし、香取のお店にも、今度足を運ぼうと思う。



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