アカデミック読書会(第33回) 開催レポート - 辺境地域と外部世界の違いは、貿易と交易の違い -
読書会概要
10/28(木)、20:00~21:30、「「世界経済」の辺境地域と外部世界の違いは何か?」をテーマに、ウォーラーステイン『近代世界システムI』の「6 「ヨーロッパ世界経済」」を読みました。
参加者2名、ファシリテーター1名の和やかな雰囲気のなか、「世界経済の辺境地域(周辺地域)としてのポーランド」と「外部世界としてのロシア」の対比から、対話は始まりました。
辺境地域と外部世界を分けるキーワードは「貿易」と「交易」です。ポーランドが世界経済の分業体制の分担を担う「貿易」をしていたのに対し、ロシアはモノの交換のみを行う「交易」をしていました。
では、どうしてロシアは世界経済の分業体制に組み込まれなかったのか? ロシアの領土が広大であったため、自給自足できたからだ、という意見が、対話内ではありました。世界経済の外部世界にあった国々(中国、日本など)を考えても、外の世界と分業する必要がない、自給自足の国であったことがわかります。
読書会の終わりには、現代の中核国であるアメリカの現状の話になりました。アメリカでは労働者が守られており、価格に反映され、アメリカ国内で製品を作ると価格が高くなります。そのため、企業は安い労働力を外に求めることになります。これが、中核国の本質的構造だ、という内容でした。
今回の読書会は、世界経済の分業体制を担っていない国々と対比することで、世界経済システムの本質について対話しました。ご参加くださったみなさまには、厚く御礼申し上げます。
次回(第34回)は、「近代世界システムとは何か?」をテーマに、「7 理論的総括」を読みます。
読書会詳細
【目的】
・資本主義とそうでない世界の違いを知りたい
・周辺(国)と外部(世界)の違いについて、理解だけなく、書かれていないことで見えてくるものを得たい
【問いと答えと気づき】
■Q
・辺境と外部世界の違いは何ですか?
・境界を決める要因にはどのようなものが考えられますか?
■A
・ロシアとポーランドの比較:貿易(ポーランドはヨーロッパに組み込まれている、ロシアは違う)
・
■気づき
・ポーランドはヨーロッパで分業になったけれど、ロシアはそうならなかった
→ポーランドは余剰を得られたけれど、ロシアは得られなかった
■Q
・著者のアプローチの仕方、歴史的推移をおさえながら、単純論理では押さえていない(因果、原因ー結果の一方通行、は避けている)
■A
・360ページ、国家権力が衰退したから経済的地位が落ちた
・経済的地位が落ちたから国家権力が衰退した(相互的)
・インフレが重税を起こす、と同時に、重税がインフレを起こす
■気づき
・ウォーラーステインのスタンス:ロシアとポーランドの違いを西洋との関係との違いで語る
→貿易(重層的な意味がある)
→国家機構の強さ(温度差がある)
→土着のブルジョワ(温度差がある)
・こういう視点(重層的な視点があること)に気づかせてくれる
【対話内容】
■ロシアとポーランドの対比
・なぜロシアとポーランド?
→書いてないことを行間から読まないといけない
→世界経済システムを説明するコントラストのため
→周辺国は貿易(分業を担っている)、外部世界は交易(ものの交換だけ、経済システムには影響していない)
→貿易は分業体制を実現している行為
→アジアでは本国の相手をしなかった(自国内で商売していた)
→アジアは自国内で自足している
→ロシアは土地が広大だったから、自足していた
・土地労働資本で考えると…
→ロシア:土地余っている、労働力が足りない(国内の開発で経済成長できた)
→ヨーロッパ:限られたリソースの生産性をあげるため分業したのかも
・ロシアとアジアを書かなかったとしたら、他の学者から批判される
・ポーランドとロシアは違う(貿易の性格に差異がある)
・朝貢貿易も奢侈品系
・世界経済と帝国(アジア、資本システムのものではない、一国内)
・アメリカ「帝国」ではない
・アメリカ(植民地)は「周辺」(原住民の皆殺し、自分の言葉で抗議できない)
■世界経済システムの外部世界としてのアジア
・アジアでは「世界経済」がでてこなかったのか?
→中国はなぜ一つにまとまっているのか?(ヨーロッパは細かく分かれているのに)
→ポルトガル:西洋や南米でやっていることに手を取られていた、アジアの君主が尊大だった、日本も軍事大国だった
・日本は日本で充足できるので鎖国できた
■資本主義を見る切り口
・いろいろな切り口をかぶせるとおもしろい(ウェーバー×ウォーラーステイン)
→素人がやってかき回すといいかも
■ロシアが世界経済の中核国にならなかった理由
・ロシアはどうして世界経済の中心にならなかったのか?
→多様性がない、成果を求められない
→ロシアには産業革命がなかった(『知識経済の形成』)
→土着のブルジョワジー:ポーランドは弱い、ロシアは強い(360ページ(『近代世界システムI』名古屋大学出版会版))
→東欧:都市の衰退(農作物を消費しない、都市が市場にならない)
→ロシアは自国で(都市を市場にすることが)できた
■資本主義とイデオロギー
・資本主義と共産主義は相容れない、わけではない
→経済についてはイデオロギーは関与しない
→資本主義と共産主義は経済人を想定しているのは一緒(次は知識なのでは?、知識共創社会)
→競合材(モノ中心、資本主義)と非競合材(知識創造、実践・アイデア中心、知識共創社会、モノが自動的に降ってくる)
・『ティール組織』と『無と知識の人類史』は重なる
・資本主義の終わりはあるかもしれない(→知識共創社会へ?)
次回の読書会のご案内
■開催日時・場所
・2021年11月11日(木)20:00~21:30 @ZOOM
■テーマ
・「近代世界システム」とは何か?
■課題本
・イマニュエル・ウォーラーステイン著、川北稔訳『近代世界システムI ― 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立 ―』 ※「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」「新版(名古屋大学出版会)」どれでもOK
※「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」「新版(名古屋大学出版会)」どれでもOK
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