アカデミック読書会(第40回)- 経済の尺度としてのお金 -
読書会概要
2月24日(木)、20:00~21:30、アカデミック読書会(第40回)を開催しました。参加者は3名、ファシリテーター1名で、読書会を進めて行きました。(ご参加されたみなさまは、3人とも、本や論文を執筆なさっているとのこと)
テーマは「16世紀の経済の尺度とは何か?」。課題本は、フェルナン・ブローデル『地中海II』、「第II部 集団の運命と全体の動き1』「第1章 経済 ― この世紀の尺度」 を読みました。
読書会では、ゴールを設定したあと、『地中海I』「第I部 環境の役割」のおさらいから入りました。
16世紀の尺度となるものは何か?、という問いを中心に対話がなされました。『地中海II』を読むと、ブローデルが多くの統計を引用し、数字を使って当時の経済の規模を示しています。そこから、お金、人口など、さまざまな単位が尺度として考えられます。
対話を進めていくなかで、やはり、16世紀の尺度となりうるものは、お金であるという流れになってきました。物々交換はコストや信用の面で不安がある、貴金属の支払いは運ぶのが大変、結局、貨幣や手形などが、効率のよい信用できる取引の手段なのではないか、それゆえ、尺度としてはお金がふさわしいのではないか、という結論に達しました。
この対話は、「第2章 経済 ― 貴金属、貨幣、物価」の内容にも踏み込み、経済の核心をついたものでした。第2章では、地中海に入ってきた金や銀、流通した貨幣、物価の上昇などを扱います。
今回の読書会は、次章の展開が待ち遠しくなる読書会でした。ご参加されたみなさまには、厚く御礼申し上げます。
読書会詳細
【目的】
数字から社会を想像する想像力を得たい
一つでも気づきを得られたらよい
このテーマでどんな要素がキーになるのか、わかったらよい
【問いと答えと気づき】
■Q
尺度を考えるのに、最重要視したのは何か?
その導き出したもののうち、どれが一番大事だと思ったか?
■A
2の答え:人口
■気づき
当時は人口こそが力だった
情報も力でもあったのかも
人口についても、農業生産についても、ある時期で止まった
→マルサスっぽい話なのかな?、と第2章に金銀の話
→経済を回すのに、金銀が必要だったのかな、と思った
■Q
ポイントを3つ挙げるとすればなにか?
■A
16世紀は人口が倍増した
貨幣経済が発達した、インフレが起こった
地方では物々交換が主流、都市とは経済格差があった
ヴェネツィアが中心になった
17世紀には地中海は低迷した
■気づき
何が言いたいのかわからない
すべてが仮説
数字が正しいと立証できなければ、読んでも仕様がないかも
地中海は相当広がりがあった
→全体としては資本主義経済が起こった、16世紀は発展した
→但し、ローカルなところはあった
■Q
地中海経済のモデルはつくれたか?(第1章の3番目の節)
■A
すべての活動は貨幣で見積もればできた( p.182)
当時の暮らしからすれば、大きすぎる、こんなに儲けているはずがない
■気づき
1つの尺度があるとわかりやすい
→今回は貨幣が大きかった(どうやって測るかというときに)すべてを貨幣で見積もっていなければ、測れない
→ブローデルの知っている範囲ではこれしかできなかった1つの尺度で、人間がそれで見えるのか?→大事なものが抜け落ちているのではないか
【対話内容】
■都市と交通路
郵便物の届く時間
→結論があるような、ないような陸路と海路なら、陸路が好まれる
当時は陸路でそんなに進めたのか?
この時代はローマ街道はあったのか?
→ローマに通じる道は整備されていた山あり、谷ありで、山岳を越えなければならなかった
→どうしていたのか?都市の周りは、誰も治めていない
■何が「信用」となったのか
ものとものを交換する
→物々交換などをするには不安。為替を発行したほうがよい
→運ぶ途中で山賊に襲われるのかも、保険はかけているのか商人同士の信用
→大阪の舟場のひとが、独特の信用関係をつくっている
→女の子を嫁がせる(できる従業員を養子にする)
→約束を破らないように規律ができている
→同じ宗派にしているヴェネツィアはどうだったのか?
→全く違う国同士ではどうだったのか?
→こいつ大丈夫を保証するものあるとよい金銀が(信用の)基準になった
ハラリ『サピエンス全史』、貨幣経済の話、キリスト教圏で流通していたコイン
→アラビア文字が使われていた
→貨幣は宗教を超えて信頼を得ている金や銀なら信用をおける
→重いので貨幣に16世紀に紙幣は出てきたのか?
株式会社が出てきたのは?
→オランダ?、イギリス?16世紀は贋金も出てきた(第2章の話)
■尺度としてのお金
ドルとか円がないと、尺度が無いと測れない
経済的規模はどうやって測るのか?
→お金で測るお金が無いと、交換の価値がわからない
国と国の経済規模はどう測る?
→GDP(新たに生み出した価値をお金で測る)なぜ測る必要があるのか?
→いまの資本主義は成長が前提となっている貧困になっているのは、数字を見ないと見えない
■経済成長の過去・現在・未来
GDPに価値があるのか?
新興国はコモディティを作っている、先進国は作っていない
(数字がないと)何も新事業を生み出されなくなる
成長をしないのを良しとする意見があるが、どんどん成長するのを良しとする国がある
成長するのが前提
→ヘーゲルからマルクスの歴史観、150年くらいの歴史しかない150年前は貧困だった
→いまは豊かになっている成長したいという渇望感が、新興国にはある
(お金が減ると)人口は減っていく、高齢化、インフラも更新されなくなる
Developed は違う形の発展があるのかもしれない(成熟社会)
SDGsでヨーロッパは覇権を握ろうとしている
ウクライナ:ヨーロッパ大陸側のメッキが剥がれる
→日本がいかに基準を作れるか祖父母の世代なら、焼け跡からの出発
→バイタリティがあった今日のご飯に困らなくなる
→価値観だけが受け継がれている
→ウェーバーの鉄の檻:その価値観だけで言われると苦しい
→中国やアメリカに追いつくのは厳しい
→インドネシアにも追いつかれる
→成長以外の軸があるといいのに二律背反で考えないといい
→他の軸を作っていくとしても、「成長しなくてもいい」ということにはならない昔は資本主義と共産主義があった
→いまは、資本主義だけ、別のものがないと困る(選べるものがないと困る)ソ連の失敗
→資本主義国と競争する
→(理想の実現ではなく)イデオロギー的な強さをアピールしようとした「競争がない」というのは嘘
→自己アピールをしないといけない、日本人は持っていない
→日本人はガラパゴスだから仕方がない(温室育ちといえなくはない)西洋から東洋に切り替わろうとしている
→どうあるべきかをつくっていく日本人は同質性が強い
→多様性の中で自己アピールしなければならない外国人とコミュニケーションしないといけない
■ウクライナと世界
ヨーロッパは移民を受け入れた
→ウクライナでどうなるか?ウクライナが緩衝地帯になっている
→NATO加盟反対歴史の教科書の出来事をオンタイムで見ている感じ
中国はどう出てくるか?、パワーバランスがどう崩れるか?
チャーチルみたいな人が出てこないといけない
ウクライナは内陸
→アメリカの海軍は動けない、だから強気で出ているキエフ公国
→ロシアよりも古いウクライナ出身のユダヤ人は多い
→(そういう意味で)ウクライナは西洋寄りかもしれないロシア系のユダヤ人の虐殺があった
→アメリカや満州、イスラエルに
【気づきと小さな一歩】
■気づき/学び
16世紀の経済の尺度とはなにか? 日本だと米、地中海だとコイン
→歴史の動きは経済から理解できる
■小さな一歩
経済はいろんなことができる、経済以外の尺度はあるのか?
→岸田首相の新しい経済、どんな事が言われているのか、聞いてみる
■気づき/学び
違いを腹落ちさせるための方法
→大量のエビデンスを見せつける
■小さな一歩
本の執筆に活かしたいが、めんどうくさい
→腹落ちさせる方法を考える
→編集者の話を聞く
→引用している人のフレームワーク等を素直に聞く前回紹介された科学哲学の本
→文庫本の本(野家啓一郎『科学哲学への招待』)はわかりやすかった
→内井惣七の本(内井惣七『科学哲学入門』)、小難しい、わかりにくいのだけどよく考える、味わいがある
■気づき/学び
16世紀:人口の増加、貨幣経済の発展→物価の高騰があった
→経済が悪くなる
→雰囲気が悪くなる
→これから資源争いがあるのではないか日本は財政が破綻する→災害か戦争で起こる
破綻を懸念している
■小さな一歩
自分のやっていくべきことはやる
→経営と執筆
→自分の軸を作る
次回の読書会のご案内
【開催日時・場所】
2022年3月10日(木) @ZOOM
【テーマ】
貴金属は16世紀の地中海地域の経済にどのような影響を及ぼしたか?
【課題本】
・フェルナン・ブローデル著、浜名優美訳『地中海II 集団の運命と全体の動き』「第2章 経済 ― 貴金属、貨幣、物価」