見出し画像

アカデミック読書会(第34回) 開催レポート - 近代世界システムとは何か? -

読書会概要

11月11日(木)、20:00~21:30、オンラインにて、アカデミック読書会(第34回)を開催しました。ウォーラーステイン『近代世界システムI』を課題本とし、「近代世界システムとは何か?」をテーマに、「7 理論的総括」を読みました。

前回まで、第1章から第6章までに読み、今回はその総括となりました。近代世界システムとは何か?、ウォーラーステインは何を伝えようとしたか?、いまウォーラステインを学ぶ意義は何か?、ポスト資本主義にはどんな社会が到来するか?、などを対話しました。

ポスト資本主義社会の社会のあり方の一つとして、「知識共創社会」という概念があるということを、対話にて知りました。知識を共に創造する社会とはどのようなものか、社会はどのように変化するのか、見たいと思える読書会でした。

読書会詳細

【目的】
・ウォーラーステインが言いたかったことを掴みたい
・近代世界システムの基礎メカニズムが人に説明できるようになりたい

【問いと答えと気づき】
■Q
・近代世界システムはなぜ始まり、なぜ終わりそうなのか?
■A
・始まったのは、単なる余剰の浪費から投資から始まった
・格差が拡大しすぎる、投資が過剰になりすぎる、闘争を覆い隠せなくなったとき
■気づき
・投資機会が枯渇するとまずそう
・ナショナリズムが高揚するとまずそう
・社会が過剰に保守化するとまずそう

■Q
・ウォーラーステインが生きていたら、現代をどう解釈するか?
■A
・ヨーロッパ近代世界システム、強い国家機構、ブルジョワジー、労働者の台頭
・中核、周辺、外篇と3つの層、形を変えて今もある
■気づき
・中核は強い国家機構を持っている(中国、アメリカ)
・多国籍企業(GAFA、アリババ・テンセント)が富を集めている
・いろいろと問題もある(貧富の格差が拡大している)
・国家機構が強い力を持っている
・勢力図がだんだんを変わってきている
・環境の問題(CO2の削減)
・テクノロジーの発展(データが価値を生む時代)
・現代は複雑化している社会

【対話内容】
■複雑化した現代
・ジャック・アタリ、エマニュエル・トッドなど、研究する必要がある
・多極化している時代(新興国、テクノロジー)

■近代世界システムとは?
・近代世界システムとは?
→中核、周辺、半周辺は維持されている
→ボジションが変わる
→周辺が半周辺に
・中核国は?、どうなる?
・中国は半周辺になりかかっているように見える
・いろんな観点がある(経済、文化など)

■GDPとインフラ更新
・経済では、中国・アメリカが抜きん出ている
・日本は高齢化、労働人口が減る、過去の遺産で切り崩していく
・GDPが減ると、インフラが更新できなくなる
・更新はできそう
・お金が行き詰まると、ジリ貧の考え方、後ろ向きの考え方になる
・この生活インフラは維持できる(この水準でできる)
・できない理由は何か?
・コンパクトシティだと、できるのでは?(行動を制限する)
・地産とか治水とか必要
・山から資源をとればインフラは維持できるのではないか?
・インフラを通じて動くものが動くようにすると経済は回る
・自分たちだけで回すのは無理がある
・高齢者ばかりで誰が主導するのか?
→75歳まで働ける社会づくりをする
→人口構成が違うが…、労働者の年齢を引き上げでもなんとかなる?
・日本は財政的に厳しくなるのは確か
・財政は企業と家計に分けたほうがよい
→企業と家計は黒字、政府は赤字、お金の回し方が変わっただけ
→ちゃんと回していければ問題ないのではないか
→知識社会になってきているので、政府はBIでお金をばらまかないといけない
・政府の赤字の垂れ流し方が問題(日本でお金を回しているだけなので(という仮定))
・家計と企業の黒字分を海外に投資するとよい

■ウォーラーステインを学ぶ意義
・過去を学んで未来を推察する
・ウォーラーステインの方法論がユニーク
・理論的総括というのが矛盾していると感じるが、そこの学ぶ意義がある(はじめはそう行っていない)
・自分のイメージを最初に出してこない
・亡くなる1ヶ月前、時事問題を投稿している(共産党宣言の最後の文章と内容的には変わらない)
・世界はさらに別の道に進むかもしれない、そうでないかもしれない
→この変化を現実にするには自分自身が戦うこと、あくまで五分五分である(労働者よ、団結せよ)
・われわれには「労働者」という自覚がない
・資本主義とは?
→労働者は労働資産がないから、労働力を売るしかない、資本家はそれを買う
・システムには思想的偏向がない(インプットとアウトプットのみ)
・システムの運用で思想的価値観が出てくる
・思想的偏向がないシステムをウォーラーステインは語っている
・すべてのパラメーターを集めて抽象化する→そのうえで判断している

■近代世界システムとは何か?
・貨幣と通貨で信用創造ができる
・資本主義から何かを取り出したものが、近代世界システム?
・近代世界システムは、資本主義の「世界経済」
・分業体制をシステムといってもいい
・断面ではなく経時的に見せてくれる
・近代世界システムは政治システムを含まない
・資本主義は節操がない
・資本家がいいように国を使っただけ
・リーマンショックは政府は救わなかった(リーマンをあえて潰した)
→倒産が連鎖的に起こった
・経済と金融が密接につながっている
・どうして市場に任せなかったのか?
→破綻しかけると救わないと復活できない
・市場の失敗も、政府の失敗もある
・資本主義は、政府が救い、私人に失敗を押し付ける
・単純に、資本家と労働者に分けられない
・潰していいときとよくないときがある(経済の状況をどう見るか)

■知識共創社会(ポスト資本主義の一例)
・社会システムと知識(16世紀)→産業革命→これからは知識がエンジンになる
・『知識経済の形成』(ジョエル・モキイヤ) 名古屋大学出版会 

・『ポール・ローマーと経済成長の謎』(デヴィッド・ウォルシュ)日経BP

→人・モノ・アイデア

【気づきと小さな一歩】
■気づき/学び
・GDPとお金に対する信仰は根強い
■小さな一歩
・GDPと社会の厚生は薄いということを理解してもらいやすい説明を増やす
・自動運転、照明の例をとって、社会の厚生のレパートリーをもっと増やしたい

■気づき/学び
・闘争が続くと必ず2派に収斂する(3つ以上の階級は存在しない)
・なんでも2つの軸がある(それ以上あると連携する)
・すべての国が世界経済に組み込まれている(複雑)
・ウォーラーステインの論じた時代はシンプル
■小さな一歩
・未来志向につなげる考え方をする
・不公平とか格差はなくならない、そのなかでどうやって生きるべきか考える
・価値観が変わってきているので、現代も学ばなければならない

■気づき/学び
・実証データと理論の関係
→実証的データの分析は理論を構成することはできない
→前提なしに分析できない
・歴史的を勉強しろといっているわけではない(背景としてもっていないさい、ということ)
・構えをもってデータをみるが、中立的にデータを見る→主張を構築する
■小さな一歩
・第2巻、第3巻も読まなければならない

次回の読書会のご案内

・開催日時・場所:2021年12月9日(木)20:00~21:30 @ZOOM
・テーマ:環境と人間との関係とは何か?
・課題本:フェルナン・ブローデル著、浜名優美訳『地中海I 環境の役割』
・詳細・申込み:後日お知らせいたします

この記事が参加している募集

最後まで読んでくださった方ありがとうございます。よろしければサポートいただけますと幸いです。本を買い、noteを書き続け、読書文化の輪を広げるために使います。