「 世界は僕らに気づかない / Angry Son 」の映画情報・評価・感想レビュー
この世の中で「 見えないもの 」扱いされている存在に、温かく真摯な光を与え、生きる希望が湧く傑作。
フィリンピン人の母との母子家庭で父を知らずに育ち、ゲイでありながら、パートナーとの将来に悩む主人公の純悟。
そんな彼のやるせなさと、それでもまっすぐに自分の人生を生きようともがく姿は、涙なしにはみられません。
心無い言葉で彼が受ける様々な傷は、見ている側にもズキズキとうずくような感覚をもたらし、「 痛かったね 」といたわりたくなります。
特に、進路も、母とも、恋人とも、何もかもがうまくいかず、ふいに走りだし泣き出すシーンは、一生忘れられないほどに、共感し、背中を叩きたくなるような気持ちになりました。
世界は僕らに気づかない / Angry Son
あらすじ
群馬県太田市でフィリピン人の母レイナと暮らす高校生の純悟。彼には同性の恋人 - 優助がいた。葛藤しながらも成長していく姿が描かれる。
公開日
2023年1月13日
上映時間
112分
キャスト
飯塚花笑(監督)
堀家一希
ガウ
篠原雅史
村山朋果
森下信浩
宮前隆行
田村菜穂
藤田あまね
鈴木咲莉
加藤亮佑
高野恭子
橘芳美
佐田佑慈
竹下かおり
小野孝弘
関幸治
長尾卓磨
岩谷健司
予告編
公式サイト
作品評価
映像:5/5
脚本:5/5
キャスト:5/5
音楽:5/5
リピート度:4/5
グロ度:1/5
総合評価:4/5
考察レビュー
監督自身もトランスジェンダーを公表しており、「 もう性的マイノリティを映画の中でひどい目に遭わせないでほしい 」と語っています。
確かに、日本国内の性的マイノリティを描いた作品というのは、差別や偏見、病気、失恋、死など、辛いことばかりが描かれがちであり、あたかも不幸しか待っていないかのように受け取られがちです。
そうした描き方が、余計に彼らに「 性的マイノリティは不幸 」というレッテルを貼り、真剣にその理不尽さを取り除こうとする動きを邪魔してしまうということもあるかもしれません。
差別や偏見は描きつつも、幸せに輝く未来を描くこと。
それがこの作品の持つ大きな力となっていると感じます。
純悟の母親であるフィリピン人のレイナも「 ガイジン 」という差別的な呼び方をされ、職場の窃盗事件の濡れ衣を着せられたり、フィリピンパブで働いていることで役所で差別され、補助金を申請できないという現実も描いています。
それに対し、はっきりと「 これは差別だ。おかしい!」とハッキリ主張できるレイナは、頼もしくもあり、それゆえに周囲との衝突も避けられません。
マジョリティならば経験せずに済む理不尽。
どんな環境で暮らしていても、こうした現実があることは、すべての人が思いを巡らすべきことだと思います。
まとめ
俳優陣の演技が光る良作です。
ハッピーエンドは安易には訪れないけれど、絶え間なく目指し続けるものだと感じました。
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