ボツ箱

皆さんこんにちは。年の瀬ですね。今年もアドベントカレンダーを楽しみに読ませていただいております。

今回もアドベントカレンダーに飛び込んだものは良いものの、ゲームを作っていなければゲームの作り方に関して何か秘策を持っているわけでもない。そんな私が唯一共有できるものといえば、失敗例くらいなものです。
そこで今回は今まで完成にたどり着かなかったゲーム未満の数々を紹介してみようと思います。ゲームが完成しない様子を楽しんでいただければ幸いです。


自己紹介

りかちと申します。「りかち」と読みます。
四等星というサークルでゲームを作っています。
最近では春のゲームマーケットでゲームマーケットチャレンジ作品を4つほど頒布しました。
また、トランプのゲームをいろいろ作っており、思いついたものをTwitterでつぶやいております。

現在の代表作はこちらです。ハードパスのシステムがお気に入りです。

ゲーム制作の方法は行き当たりばったりです。2年前の記事ですが、よければご覧ください。あれから進歩していません。ゲーム制作の技術も、肝心のゲームも。

ボツ箱

雨乞い式ボードゲーム制作の弱点は、ゲームが完成にたどり着く可能性が低いことです。結果として、大量の作りかけゲームが発生し、そのうち作者にも忘れられていきます。
自分なりに未完成ゲームに向き合い、問題点を言語化してみました。

各ゲームのタイトルは仮のものです。コードネームのようなものとお考え下さい。

理想が高すぎた ~ユージュアルアクションズ~

拡大再生産のゲーム、とりわけ重量級のゲームは往々にして終盤に姿を現しゲームの趨勢を決める強力な建物が存在します。その建物を手にするまでのプランを考えたり、手に入れた建物を存分に活用して得点を稼いだり、ゲームの目標にして醍醐味であるこれらの建物が初手から手に入ったら楽しそうだと考えて

無限に借金ができるゲーム

制作を開始しました。

序盤からクライマックスなのでゲーム自体は短く終わらせる必要があると感じました。できればプレイ時間は15~20分程度。重量級ゲームのラスト15分だけ切り取ったゲームにしたいです。
シンプルなゲームにするという方針のもとアクションを3種類に絞る方針はすぐに決まりました。また、借金をしないメリットとして借金がないプレイヤーは市場の信頼を得て定期収入が上がるというルールも決まり、建物の種類も次々に増えていきました。
テストプレイのたびに気になる点は見つかりましたが順調に解決されていきました。
もはや完成といっても差し支えない状態までたどり着きました。

しかし、意気揚々と何度かテストプレイ会にお邪魔して遊んでもらったところ、反応が思ったほど良くない。
自分としては完成といっても差し支えないと感じていたのですが、様々な人の反応を見ていると

このゲームはもっと良くなる

と感じてしまい、抜け出せなくなっているうちにテストキットを紛失して現在制作が止まっています。
プエルトリコのコンポーネントをテストキットに流用していたのでプエルトリコもできなくなって困っています。

アクションが3種類、資源もお金しかないせいで、見通しが立ちすぎるのかもしれません。
資源を1種類増やしてアクションを4つか5つにするとゲームに奥行きがうまれるのでしょうか。
今となってはわかりません。


やりたいことが実装できなかった ~宝石の百々目鬼~

ロンデルというタイプのゲームがあります。いくつかのアクションが円周上に並んでいて、プレイヤーは今いる場所から数歩先までのアクションしか選択できないゲームです。
目の前の選択肢は少ないが数手先まで見通しが立てやすいというのがロンデルの特徴ですが、ロンデルのゲームをつくるときに他人とのインタラクションを入れにくいように感じました。
他人の行動がアクション選択にストレートに影響するワーカープレイスメントと違ってロンデルはやりたいことを順番にこなしていける良さがあります。一方でインタラクションが強くなると先の先まで考えて行動計画を立てる必然性がうすくなり、ロンデルの良さである計画性に悪影響が出ます。

ロンデルに相乗り要素を加えたらどうなるか

というのが今回のゲームの思考実験のスタートラインでした。

同じマスに止まったプレイヤーは前からいたプレイヤーに乗って一緒に進むことができる。私自身ちょうど相乗りのシステムを利用したすごろくを発表したタイミングで、相乗りシステムに興味を持っていた頃でした。
先ほどの計画性の話と真っ向から対立するので一見うまくいかなそうですが、ロンデルをより早く周回したいと思わせる仕組みができれば多少見通しが悪くなっても相乗りのメリットが勝ると考えました。
相乗りされたプレイヤーは資源的なメリットが生まれるようにすれば乗る方も乗られる方も楽しくプレイできそうです。一方でどうしても選びたい特定のアクションが相乗りによって飛ばされると大きなデメリットとなるので常に相乗り一択にはならないはず。
ロンデルのメリットである目の前の選択肢自体は少ないが先まで考えると悩ましいという状態を保持したまま強烈なインタラクションが用意でき、ロンデルを回りながら自然と他人の盤面を気にするゲームになると感じました。

早速テストキットを作成します。
時計回りに都市を周回しながら資源を仕入れて売却するゲームにしました。
仕入れた資源はなるべく遠くの都市で売却したほうが高額で売却できるというルールにし、より少ない手番でプレイヤーに先を目指させるように仕向けました。資源の使い道として特定の資源の組み合わせで得点カードを入手することができ、獲得したカードによるアクション強化を取り入れました。余計な悩みを生まず、局所的な正解を探しやすいように、相乗りは任意ではなく強制に決定。

そして回してみると、そこには間延びして終盤早く終わらないかなと感じながら作業を進めるゲームが出来上がっていました。

プレイヤーに先を急がせたい。一方でどうしても飛ばしたくないアクションマスを用意したい。
この「魅力的なアクション」を設定できないまま開発無期限延期となっています。
テストキットもなくしました。部屋が散らかっているんです。


最初のテーマ設定に欠陥があった ~シンクロマジック~

バッティングゲームというジャンルのゲームがあります。アクションなどを同時に選択し、他人と被ったらデメリットがあるタイプのゲームです。
自分が一番得をするアクションはわかるが、果たしてこのアクションは希望通り実行できるのか。他人の思惑を考えてセカンドベストを取りに行ったり、回避しに行った先でバッティングして悲鳴が上がったり。他人の顔色をうかがうのが楽しいゲームです。
せっかく他人の顔色をうかがうのだからあえてかぶせにいくゲームがあってもよいのではないかと考えました。

バッティングをしたいときとしたくないときがどちらもあるゲーム

最初に考えたのはバッティングに気を付けながら資源を集めて得点化していくゲームでした。アクションを選択し、バッティングしないと資源が手に入る。バッティングすると資源を得点化できる。
資源を3種類(銅、銀、金)用意して基本となる7つのアクションカードを作成してテストプレイしました。

ダメでした。

資源がないときは資源を求めてバッティングし、資源を用意して得点化する段になると得点化パートナーがいなくてバッティングが起きずゲームが進まないのです。やる前に気づきたかったです。

たまった資源を強制的に吐き出すルールとして、操られ人形館の『Mine Out』の廃坑ルールをお借りすると面白いほどぴったりはまり、これが日本を代表する作家か……!? と感動したのは別のお話。

テストプレイで感じた問題は資源の獲得と得点化のルールを逆にすれば解決できそうです。しかし、実際に逆にしたルールを考えてもうまくいきませんでした。
得点化にバッティングを要請するとキングメイカー問題が右ストレートで殴ってくる。
資源獲得にバッティングを要請すると初めの1歩が難しすぎてゲーム展開に差が生じやすくなる。

結局、バッティングしたい瞬間があり、しかもある程度コントロールしてバッティングを狙っていけるという状況が用意できず、ゲームはここで停滞しています。

初期資源に差をつけて最初から得点化と資源収集の両方ができるようにしつつ、プレイヤーごとの初期能力を設定して他人の行動を予測しやすくすれば何とかゲームになりそうな予感はします。
ただ、どこまで行ってもゲームが停滞してつまらなくなる瞬間が発生しやすい構造に見えてしまい、先に進めません。


面白さがイメージできなかった ~バイナリーの四季~

フェイズ進行のゲームがあります。
「各ラウンドは収入→アクション→建築→祝祭を繰り返します」
みたいなゲームです。

フェイズ進行がプレイヤー間でずれるゲーム

を作ってみたくなりました。つまりあるプレイヤーが延々とアクションを行っている一方で、アクションフェイズを早々にパスしたプレイヤーがひたすら収入を得ているというゲームです。早々に拡大再生産や得点行動を降りると収入フェイズが長くなり、次のターンに大量のリソースを頼みに無双できる。一方で拡大再生産や得点行動には早取り要素があり、どのラウンドでゲームを動かしに行くべきかのレースが楽しそう。

ハードパス、私の好きなシステムです。

ハードパスを活用するには強烈な早取り要素が欲しいです。そのため、フェイズを労働フェイズ(お金を払って資源を得る)、内職フェイズ(お金を得る)の2つに設定し、資源の利用は労働フェイズ終了時にまとめて行うルールを思いつきました。
労働フェイズの基本アクションは1/3/6金→1/2/3資源、内職フェイズは2金収入とすることで、ゆっくり資源を得ていると次のターンに大差がつけられるようにしました。

ちょうど桃色飲茶娘を遊ばせてもらったタイミングで、マップの移動がこのゲームには合っていると感じました。遠くに移動するまでの時間で他人は莫大な収入を得るのです。忙しさが引き立ちます。
カタン島のような19マスのマップの外周からスタートし、島の中心部に行くほど高価な資源が手に入るように設定しました。外周12枚はレベル1資源(木材、石材、粘土、麦)が、内周6枚はレベル2資源(鉄、肉、石油)、そして中心はレベル3資源(金)が取れる。プレイヤーは資源を用意して島の中心に進むための手段を用意します。小目標が設定しやすく、一方で終盤になるにつれて効率が悪くなる得点行動を序盤どれだけ頑張るかも悩ましいところです。

こうなったらいいなが爆発的に成長していくのはゲーム制作初期の楽しい時間です。この勢いのままにテストプレイキットを作成してさあテストだ! と考えてテストキットを作ろうとして、手が止まります。

建物や得点システムが何も思いつかない

様々な資源を使って得点を稼いだり建物を建てたりという骨格は決まっているのですが、ではそのゲーム展開を彩る建物や早取り要素がある得点方法がまるで思いつかないのです。

ある日急に進展があるかもしれません。

あるといいな、進展。


ゲーム制作は雨乞いではない

この記事の前日譚の雨乞い式ボードゲーム制作の記事の締めの言葉を引用してみたいと思います。

制作期間は読めないわボツになる確率が高いわでろくな作り方ではないことは確かです。皆様のゲーム制作の仕方を私が少しでも参考にできればうれしいです。

雨乞い式ボードゲーム制作 強調部分は筆者による

その後、多くの記事に触れ、少し前向きになることができました。

中重量級ボードゲームシステム制作に立ちはだかる18の壁

ゲームを作るうえで気を付けるべき点を提示してもらいました。テストプレイで感じたモヤモヤをより高度に言語化できる手立てが手に入りました。

ゲームデザインはどこまで小手先で走り切れるかー使いやすいサブメカニクス集ー

ゲーム制作で詰まった時の解決につながるサブメカニクス集のリストを提示していただきました。今まで頭の中からひねり出してきたものが、選ぶものに置き換わることによりゲーム制作がグンと楽になる予感がします。

「完成品を素材に」〜符亀がボドゲの制作のために考えていること〜

完成品を素材にするというアイディアはボツが多い私にぴったりです。

ゲーム制作の手法が確立していくにつれ、より短いスパンで面白いゲームを作れるようになるのだと思います。
来年こそゲームを完成させる。そんな決意を胸にして今回の記事を結ぼうと思います。

(来年こそゲームを完成させるって去年も言ってなかったっけ?)
(まあいいじゃん。1年完成させない間にで制作力が上がって来年こそ実現するということで)

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