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なんで、この人の日常をこんなにも知りたくなるんだろう

 くどうれいんさんのエッセイ集『虎のたましい人魚の涙』を読んで。


 虎が(大きいネコ科の動物が)好きで、表紙に吸い寄せられてこの本を買った。表紙に虎がいてくれてよかった。

 なんで、この人の日常をこんなにも知りたくなるんだろう。なんて、周囲の人と人間くさく関わることができる人なんだろう。とにかく、やりとりが、"一歩踏み込んでいる"感じがして少し羨ましくさえなった。

 こととことに、連想した理由がわかるくらいの言葉的なつながりはあるけれど、論理的な因果や深い関連性はない。いや、もしかすると少しあるのかもしれないけれど、フィクションみたいに大げさじゃない。だから構えずにすんなり読める。

 そして。だから。「で?」の先までは書かれていない。"答え"までは教えてくれない感じ。その出来事からこんな学びがあった、とか、こう感じた、みたいな部分についての書かれ具合が"いい塩梅"で、語られすぎていない。だから、読む人はみな自分の物語としても読めると思う。

 それから。「わかるわかる」と、「その出来事からそんな気づきや連想ができるのすご」のバランスもちょうどいい。共感しながら、ときにはっとしながら、楽しく読み進められる。

 さらに。楽しいと言えば、言葉遣いが楽しい。言葉遣いというより、心の中、頭の中の"まだ外に出す用じゃない言葉"の時点ですでに楽しそう。読んでいる間は、その独自の世界観に少しお邪魔して、一緒に楽しませてもらえる。

 さいごに。そんなところまで素直に正直に書いてくれるの?という内容がときどき出てくる。だから、疑う気なんてないけれど、書かれている出来事や気持ちに嘘がないんだろうなと、信頼感が増すというか、こちらも素直に楽しく読むことができるというか、そんな感じがする。うまく言えない。でもこのうまく言えない曖昧な気持ちも肯定して、こうしてここに書けてしまう。お花を貰うとお花を渡したくなるように、素直さを受け取るとこちらも素直に返したくなるものなんだろうか。


 あとがきにも"答え"はないのかもしれないけれど、もしあとがきにはあるのだとしたら、今の私には読み取ることができなかった。何年か後に再チャレンジしよう。

 そのときの私へ。"いま"の私は、『自由な犬』が一番印象に残ったよ。やっぱり"答え"はわからなかったけど。どこが、とか、なんで、とかも。

 文庫版あとがきを読んで思い出したのは、この本を買ったときのこと。お昼休みに、会社の向かいのビルで。本屋さんに入るときは、今にもため息をつきそうな顔で。出るときは"るん♪"という顔で。


 深夜二時が近い。丑三つ時。おばけさん、そろそろ活動開始ですか?どうか私の近くは選ばないでね。そういえば、今日(もう昨日になった)の夜、Mrs. GREEN APPLEがテレビに出ていて、彼らのストーリーにも、時折かかる曲にも少し励まされた。

 ...『うたうおばけ』も近々買って、いつか読もう。ケ、セ〜ラセ〜ラッ♪

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