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『ルックバック』を観て泣いてしまうのは何故だろう。
映画『ルックバック』は素晴らしい作品だった。
素晴らしすぎて、初めて観た日の夜に、翌日のチケットを取っていたくらい。
何が素晴らしいって、あ、
(ここからやんわりネタバレ含みます。ご注意ください。)
まず音楽が素晴らしい。
haruka nakamuraはずるいって。
haruka nakamuraにオファー出したスタッフをここに呼んでくれるかな?
一言お礼を言いたい。
そして一方で、haruka nakamuraが世間により一層知れ渡ってしまったという悲しみにも襲われた。
それくらいに、『ルックバック』におけるharuka nakamuraの音楽は素晴らしかった。
映像化するにあたって「音楽」というのは非常に大きな要素の一つだと思う。音楽がハマらなければ世界観は台無しになるし、それがハマった時には一気に世界の解像度は上がる。
でも問題は、誰もその正解を知らないということ。
だからこそ作る側のプレッシャーは凄まじいと思うが、haruka nakamuraは見事にそれに打ち勝ち、完璧に『ルックバック』の世界に音を加えていった。
もう正直オープニングの音楽が流れた瞬間から涙腺は危うかったが、物語序盤のクライマックス、藤野が雨の中を走るシーン、そこであっけなくおじさんの涙腺は陥落した。
原作でも屈指の名場面、藤野が動き、音楽が乗るとこうなるんだな。。
そこからはずっと半分泣いているような状態で見続け、終盤の”FINAL ONE”はもう嗚咽しながら泣き(隣のおじさんも同様)、そしてエンディング”Light song"は放心状態でただただ歌を聴いていた。
本音で言うと、(ちょっと泣かせに来すぎかな)とも思うくらいに情緒的ではあったけれど、それでもやはり作品へのアジャスト感は素晴らしく、もうこれは変に抵抗せずに、身を任せて泣いてしまえばいいと思う。
参りました。
今現在の興行収入から見ても、かなりの人がこの映画を見ている。ということはharuka nakamuraさん自体も相当の層に知れ渡るわけで、元々のファンとしては少し複雑ではあるんだが、でもそうなんだよ、俺たちのharuka nakamuraはすげーんだよ!!もっと聴いてくれ!という気持ちの方が大きめなのでOKです。
『MELODICA』は後世に伝え続けるべき名盤だし、『Twilight』『grace』も最高。最近では蔦屋書店の店内音楽としてリリースされた『青い森』シリーズも素晴らしいので聴いてほしい。『青い森』シリーズ、読書する時のBGMとして右に出るものは無い。是非。
っと、熱くなりすぎてしまった。
映画に話を戻します。
音楽以外ももちろん素晴らしくて、まず藤野と京本の声優を務められた河合優実さんと吉田美月喜さんがとてもよかった。
河合優実さん、藤野のなんというか難しい、素直じゃない、でもとても愛らしい性格の演じ方が秀逸。
そして吉田美月喜さん、京本ってこんなになまってたんだ…最初のシーンの「またね!」がキュートすぎて心を掴まれた。
それぞれの道に進むことを決める田舎道の2人のやりとりはたまらなかった。
しかし、『ルックバック』は何故こんなにも泣けてしまうのだろう。
自分は別に何かを一心不乱に創り続けたこともなければ、努力を続けたこともない。
こんなに人に向き合ったこともない。
それでも泣いてしまうのは何故だろう。
子供の頃の思い出はうろ覚えになっていて、でも漠然と「楽しかった」ような、それでいて「切なかった」ような気がするし、思い出そうとするとその光景はどこか「キラキラ」も「ザラザラ」もしている。
ルックバックで描かれる空気感が、それこそ前述のharuka nakamuraさんの音楽も相まって、そんな記憶とマッチングしたことで、涙腺が緩められてしまったのかなと思う。
クライマックスで、藤野は「私のせいだ」と自分を責める。「こんな漫画描かなければ」と。
でもパラレルワールドの京本は、自分の意思で外に出て、美大に入る。
2人が出会っていなくても、あの4コマを描かなくても、京本は美大に入り、あの事件は起こる。
「2人が出会い、同じ時を過ごし、2人で作品を創り続けた」世界と、「出会わずにあの事件をきっかけに出会う」世界。どちらが幸せだろう。
そんなことを考えても仕方がなくて、どうあっても藤野が生きる世界は“こちら“でしかない。
だからこそ藤野は描き続ける。
この世界が幸せだったと証明するために。
京本が、藤野と一緒に書き続けられたこの世界。
藤野の背中を見続けて、追いかけ続けたこの世界。
そして振り向いたらいつだって京本がいた、この世界。
そしてそんな藤野の背中を見続けながら、“Light song“を聴くエンディングの時間。
あぁ、映画っていいよな。
そんなことを思った。
映画制作に携わる、いや、すべての創作に関わるクリエーターに、感謝と尊敬を。