僕詩。 5.こたえ
秋斗と初詣に来ていた。地元の小さな神社も、年始はそこそこ人だかりがあった。参拝をして、おみくじをひいた。
「小吉だって。聡介は?」
「末吉」
「ふーん」
「待ち人、来ない。勉学、励めばよし。結果が返る」
「俺、引越しに縁あり。出産、案ずるより産むが安し。産まないけど」
「結んでおこう」
「おう」
「寒いなー。風邪ひきそう。じゃあまた学校で」
「おう。またなー」
秋斗と別れ、境内を出たところで勝也に会った。勝也は父親と初詣に来たのだった。
「おう。あけましておめでとうございます。今年もよろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
「勝也の友達かい?」
「そう。友達、そうすけ」
「聡介です。3組です」
「そうすけくん。勝也をよろしくね。勝也にちゃんと友達がいて良かったよ」
「なに言ってんだよとーちゃん!」
「勝也くんは人気者ですよ」
「ははは。そうかそうか」
「んじゃまたな、そうすけ!ほらいくぞとーちゃん!参拝並んでるよ!」
父親といる勝也はこどもらしく見えた。父親と息子ってあんな感じなのかなと聡介は思った。父親もいまごろどこかで参拝してるだろうか。
あたらしい一年がはじまる
今年はなにが起こるだろう
今までの続きの
あたらしいページ
僕はなにをするだろう
新年度まではすぐだった。
繰り返される毎日にも、聡介は順応していた。喉元の重石は徐々に軽くなっていった。
あれから勝也とも話すようになった。自然と松野ゆいとの会話も増えた。少ないお小遣いを出し合って、みんなでカラオケも行ったりした。
中学2年生になって、秋斗は塾に通い始めた。勝也はサッカーに忙しくなった。いつのまにか、松野ゆいとは別れたらしいと噂で聞いた。
みんなはバラバラになった。クラス替えで離れてしまった。会って話すこともあるけれど、前ほどではなかった。
聡介はいまは同じクラスの裕太(ゆうた)と遊ぶことが多かった。裕太はクラスで1番背の高い子だった。絵を描くのが好きで、聡介の書いた詩を見せたら喜んでイラストを描き足してくれた。
聡介の詩のノートは3冊目を迎えていた。
変わる 変わる
季節は変わる
人も 街も 変わっていく
繰り返される毎日毎日が
一日いちにちが変えてゆくんだ
世界を変えていくんだ
僕も変わっていくんだ
僕の詩はいつか
大人になった僕が読んで
懐かしむのだろう
僕はどう変わっていくのだろう
僕の詩はまだまだつづく
悩んだり恋したりしながら
生きていく
暗いトンネルを歩くことがあっても
世界から許されているのなら
きっと生きていける
きっと きっと
こたえはないから
生きていくんだ
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