なぜ何かを"継続すること"は難しいのか 2

本記事は前回のなぜ何かを"継続すること"は難しいのかの続きの記事です。そのなぜの部分を個人の特性から人類全体の特性まで抽象度を引き上げて考察してみようというのものです。なお、こちらもぬま大学第10期の最終発表会の以下のスライドに相当するものです。本テーマは、様々な角度から考察することで、より深い洞察を得られる可能性があるため、記事がまとまった段階で不定期に公開する予定です。

継続することの難しさ

先人の知恵

課題を個人の特性から人類普遍の「あるある」とも言える特性へと抽象度を引き上げることの最大のメリットは、時代を築いてきた先人の知恵を活用できる点というにあります。アイザック・ニュートンが述べた「巨人の肩に乗る」という比喩が示すように、私たちは過去の知見を基盤にすることで、物事をより深く理解し、より優れた方法を検討することが可能になります。ここでは(心理学や行動経済学という)巨人の肩は何かを"継続すること"のために考慮するべき行動特性や意思決定に関する問題に立ち向かうための手がかりを提供してくれます。

進化的本能と未来志向の対立

人間やスキナー箱のハトを含む自然環境で進化してきた生物は、程度の差はあれ基本的には生存を優先するために、来るかどうかも分からない未来よりも目の前の現在を重視するよう適応してきました。この「現在バイアス(present bias)」は、人類が長い進化の過程で培ってきた特性の一つです。一方で、「継続すること」は現在よりも未来を見据えた行動であり、このような未来志向の行動は、進化的に刻み込まれた「現在を優先する本能」としばしば衝突することになりす。行動経済学では、この矛盾を「動学的不整合(dynamic inconsistency)」と呼び「今日は怠けたいが、明日からは努力したい」といった意思決定の矛盾がその典型的な例です。さらに、未来の報酬の価値を急激に低下させる「双極割引(hyperbolic discounting)」も、未来志向を妨げる要因として知られています。

上記のように現在よりも来るかどうかも分からない未来を優先し、何かを「継続すること」は、人間が持つ本能に逆らう行為とも言えます。そのため、それを難しいと感じるのはごく自然なことなのです。

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