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エッセイ集『なんだか痛くて仕方がない』 試し読み 「はじめに」──全文公開 【文学フリマ東京39】
のしりこです。今回は、私の初エッセイ集 『なんだか痛くて仕方がない』 の冒頭に書かれている「はじめに」を全文公開してお届けします。
この本は闘病記ではなく、痛みと共に生きるをテーマにして、線維筋痛症や慢性疲労症候群を抱える日常を中心に書いたエッセイ集です。ぜひ試し読みから、本書の世界に触れてみてください。なお、本の詳細は試し読みの後に書いております。
『なんだか痛くて仕方がない』は、12月1日の文学フリマ東京39にて販売されたエッセイ集。現在は通販サイトBOOTH(紙の書籍)とAmazon Kindle(電子書籍)で好評発売中。
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【試し読み】 冒頭の「はじめに」全て公開!
【試し読みはじまり】
はじめに
ああ、今日もなんだか痛くて仕方がない。転んで膝を擦りむいたときの痛み。勢いよく食べすぎたときのお腹の痛み。でも、それらの痛みには必ず理由があって、いつかは終わりが来る。しかし、私の痛みは違う。理由も終わりもわからないまま、毎日つねに痛くて仕方がないのだ。
本書は闘病記ではなく、痛みと共に生きることについて書いたエッセイ集だ。じつは、私は線維筋痛症と慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)という病気を抱えている。そのせいで、つねに身体が痛くて仕方がない。だが、見た目では、どこが痛いのか全くわからない。けれど、痛み止めを飲んでも、痛みは治らない。しかも、あまりにも症状がひどくて、ほとんど寝たきり生活にもなっている。なので、毎日、母に介護されながら生きている。なのに、検査などでは異常が出ない。でも、日常生活に支障が起きるほどの痛みが続く不思議な病気だ。
しかし、本書では闘病という言葉はなるべく使わないようにしている。だって、つねに痛いのに、病気と闘う必要があるのだろうか。もうすでに痛いし、勝ち負けなんてどうでもいい。病気と闘いたくない。むしろ、ゆるく痛みと付き合っていきたい。だから、私は闘病記ではない、痛みと共に生きるをテーマにしたエッセイを書くことにした。
線維筋痛症と慢性疲労症候群について
さて、現在、私は線維筋痛症と慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)という病気を抱えている。では、線維筋痛症と慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)とはどういう病気なのか。
線維筋痛症について、公益財団法人日本リウマチ財団 リウマチ情報センターの説明によると、こう書かれている。
線維筋痛症とは、三ヶ月以上の長期にわたって、身体のあちこちの広い範囲に痛みが持続したり、再発したりします。痛み以外に、身体の強いこわばりとともに、激しい疲労感、不眠、頭痛やうつ気分、物忘れなど多彩な症状を伴います。
また、慢性疲労症候群について、MSDマニュアル家庭版の説明によると、こう書かれている。
慢性疲労症候群とは、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とも呼ばれ、身体診察や臨床検査で客観的な異常が認められない状況で日常生活を送れないほどの重度の疲労感が長期間続く状態をいい、その原因は、身体的なもの、精神的なものを含め分かっていません。
と、医学的な説明は以上の通りだ。
私の場合、主に極度の疲労感、全身のあちこちにわたる激痛がつねに症状としてある。他には、頭痛、めまい、立ちくらみ、吐き気、音・光・匂いなどの感覚過敏、筋肉痛、関節痛、認知機能障害(ブレインフォグ)などがある。
まあ、こんなに一気に言われてもわかりにくいと思う。なので、もっとわかりやすく説明すると、たとえば、インフルエンザで高熱を出した時を想像してほしい。インフルエンザで高熱を出すと、身体がだるくて、寝ていないとつらい。でも、トイレに行こうと思えば、なんとか歩ける。しかし、歩くと身体がフラフラしてて、ずっと立っているのはつらい。ひとりで、家からどこかへ行くのは無理。そこに、全身の激痛を足せば、いまの私の状況に非常に似ている。そのせいでほとんど寝たきり生活になっている。だから、私の寝たきり生活はよくイメージされる寝たきり生活とはまた違う、あまり見かけない特殊なタイプだと思う。
じつのところ、線維筋痛症と慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)は共に原因不明で、これといった治療法(根治療法)がなく、症状も似たもの同士なのだ。そして、相互に併発することが多く、私も併発している。私的には、疲労感より痛みが強ければ線維筋痛症で、痛みより疲労感が強ければ慢性疲労症候群だと勝手に思っているが、じっさいのところわからない。
これらの病気は、まだ初期のころに見つかっていれば、良くなる可能性が高い。しかし、私が診断された頃には、初期の症状からすでに二十年以上も経っていた。また、すでに寝たきり生活になっていた。今後、良くなることはあっても微々たるもので、劇的に良くなることはない。おそらく、これらの病気の研究が進み、根本的に治す方法が見つからない限り、人生の最期までこの病気と付き合うことになる。
と、このように病気のことを詳しく説明したが、「つねに全身の激痛と極度の疲労感とかが病気で、ほとんど寝たきり生活」なのを、なんとなくインフルエンザでふわっと想像できれば大丈夫だ。
痛みは身近な存在だ。だから、病気のことを知らなくても、なるべく読めるようにした。まずは、私の人生を振り返りつつ、病気との出会いを書く。そのあと、寝たきり生活の始まりから介護、外出の話など、じっさいに痛みと共にどのように暮らしているのか、書いていく。そして、最後に改めて痛みと共に生きることについて、触れようと思う。
しかし、この身体にある見えない痛みは、なぜこんなにも、私の身体を痛くさせるのだろう。全く、意地悪なヤツである。そう、これは意地悪なヤツとの、私と痛みについての物語なのだ。誰にも見えないこの不思議な痛みを、確かな言葉にかえて書いていく。それでは、痛みと共に生きる物語を語っていこう。
【試し読み終わり】
本は通販サイト BOOTHとAmazon Kindleストアで購入できます
『なんだか痛くて仕方がない』は、2024年12月1日の文学フリマ東京39にて販売されたエッセイ集です。現在はBOOTHとAmazon Kindleストアで好評発売中です。
本の詳細について
『なんだか痛くて仕方がない』は、線維筋痛症と慢性疲労症候群という病気により、つねに激しい痛みなどに耐えつつも、ほとんど寝たきり生活を送りながら書き続けた、のしりこ初のエッセイ集です。6年間にわたり、noteで綴ってきたことをぎゅっと凝縮した本となっています。本に収録したエッセイの半分以上は新たに書き下ろし。note記事から修正・加筆したエッセイと新作エッセイも含め、全11篇を収録しております。
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エッセイ集『なんだか痛くて仕方がない』の目次はこのような感じになっています。
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目次『なんだか痛くて仕方がない』
はじめに
第一部 痛みの始まりと日常の変化
痛みの始まり
寝たきり生活への道のり
介護される日常に慣れていく
ヘルパーとお出かけ
第二部 それでも私は書いて生きる
孤独と不安の中で
霧の中で言葉を探す
今日も眠くて仕方がない
第三部 痛みを言葉にする
静寂の中での点滴思考
フリーダ・カーロと私の痛み
読むこと、書くこと、そして生きること
第四部 痛みとの共存、その先の向こうへ
痛みと共に生きる
おわりに
初出一覧
本の購入は、以下のサイトでよろしくお願いします。
文学フリマ東京39で『なんだか痛くて仕方がない』販売します
エッセイ集『なんだか痛くて仕方がない』は、12月1日開催の文学フリマ東京39にて委託先の千歳堂(J-48)さんのブースで、初めて販売されます。
今回の文学フリマ東京39では、新刊セットでのみの販売となります。
新刊『なんだか痛くて仕方がない』セット
販売価格:800円
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セット内容:
本『なんだか痛くて仕方がない』(B6サイズ、78ページ)
購入者限定しおり
無料配布ポストカード&名刺
本と購入者限定しおりと無料配布を持ち手のない袋に入れてお渡しします。ポストカード&名刺の無料配布分は数量限定ですが、新刊セットをご購入いただいた方には必ずセットでついてきます。
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表は猫しおり、裏は爽やかな痛痛しおり。
確実に本を手に入れたい方へ
当日会場での受け渡し限定で、お取り置きを受け付けています。
こちらのフォームからお申し込みください。締切は11月30日までです。
当日は会場で売り子をします
文学フリマ東京39の当日は、私も車いすで14:00から売り子としてブースにいます。それでは、文学フリマ東京39 J-48 千歳堂さんのブースでお待ちしています。皆様のお越しをお待ちしております!
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文学フリマ東京39詳細
日程:12月1日(日)
場所:東京ビッグサイト
入場料:1000円
委託先ブース:千歳堂(J-48)
委託先ブース ジャンル:評論・研究
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