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締切と痛み、文学フリマに向けた本作り──つぶやき日記[31] 2024年10月1日〜10月31日
これは、線維筋痛症と慢性疲労症候群でほとんど寝たきり生活を送る著者が、12月1日の文学フリマ東京39に向けて初めて本『なんだか痛くて仕方がない』を販売するために、締め切りに追われながらも原稿を書き終えるまでを描いた物語である。
2024年10月は、本の締切に追われた1ヶ月だった。とにかく、ずっと本の原稿を書いていた。原稿を書く作業自体は楽しかったが、締切に追われる夢を見るほど、つねに心の中で締切に追われていた。
文章生成AIを活用して、締切を乗り越える
10月初めのころ。すでにこのころから締切に間に合わないと、焦っていた。何か対策をしないと、このままでは本の原稿が終わりそうにない。そうして、思い切ってあることをした。そう、文章生成AIのChatGPTなどに文章を書く手伝いをしてもらうことにしたのだ。
じつは、私は線維筋痛症と慢性疲労症候群のせいで、ここ何年もほとんど寝たきり生活で過ごしながら、つねに全身の激しい痛みや極度の疲労感などに耐えつつ、文章を書いている。しかも、それにプラスして、ブレインフォグと呼ばれる脳が霧に覆われたかのような状態にもなる。そのため、なかなか脳から言葉が出てこない。そのせいで、思考をまとめるのも、文章を書くのも、ものすごく時間がかかる。
私が文章を書いていて、とくに大変だと感じることは、箇条書きに書いたアイデアを組み立てて、まとまった文章にする作業。そこで、それをAIにやってもらうことにした。
まず、箇条書きに書いた私のアイデアから、時系列に構成した文章をAIに作ってもらう。そして、次にAIが作成した文章を自分の言葉に直していく。なぜかというと、ふだん私が使わないような表現や言葉をAIが使ったり、勝手にAIが創作した話を文章に入れてくるからだ。また、AIが作成した文章には、当然ながら、自分の文章の癖やルールで書かれていない。だから、自分の言葉にして直す作業が必要となるのだ。そうすると、9割ぐらい直すことになるのだが、それでも、やはり時系列に構成した文章をAIに作ってもらうだけで、かなり楽になる。それほどまでに、いまの病気の症状のなかで、箇条書きのアイデアからひとつのまとまった文章に書くことが、ものすごく大変なのだ。
そのあとは、自分の言葉に直した文章を再度AIに読ませた。そして、改善点を挙げてもらい、それをもとに加筆・修正を繰り返す。ついでに、AIに校正をさせた。こうして、私はAIを活用しながら、本の原稿を書いていった。
最初はAIを使うことに抵抗があった。なんとなく、AIを使うと読者を騙している気がして嫌だった。けれども、AIが時系列に作った文章を直していると、アイデアが出しやすくなる。ブレインフォグのせいで頭がぼーっとして、アイデアを出すのにものすごく時間がかかる私にとって、これは新たな発見であり、予想外の嬉しい出来事だった。そのせいか、AIを活用することで身体への負担も少なくなり、文章のアイデアも出しやすくなるため、執筆の速度が前より少し速くなった。でも、本当はAIに頼らず自力で書きたかった。AIに頼って原稿を書いているとき、「これでいいのか?」と何度も自問していた。しかし、全身の激痛やブレインフォグなどがある中で、身体への負担を減らして、締切に間に合うようにテンポ良く原稿を進めるためには、AIの力を借りるしかなかったのだ。
表紙のイラストが届く
そんな中、10月中旬に妹から連絡が届いた。妹に依頼していた『なんだか痛くて仕方がない』の表紙のイラストが完成した。
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イラストを初めて見たとき、私が予想していた以上に良いものが送られて、ビックリした。痛みと共に生きるというテーマに合う繊細で可愛らしいイラストだった。「これが本の表紙になるのかな」と本のデザインのことを想像するだけで、テンションが上がった。だがしかし、いまは原稿が終わってからやる予定の表紙のデザインで、妄想する時間はない。そもそも、まだ原稿が終わっていない。イラストが届いて嬉しかったが、同時に責任を感じるようになった。妹がイラストを完成させた以上、私も完成させなくてはならない。このままでは、マズイ。時間がない。
原稿を書くか寝るかの生活へ
同じく10月中旬。いくらAIを活用して執筆速度が速くなったとはいえ、このままではやはり間に合わなそうだ。圧倒的に時間が足りない。そこで、私は1日の過ごし方を変えた。原稿に集中するために、書くか休むかの生活にしたのだ。そのため、少しでも書ける時間があればすぐに原稿と向き合う生活となった。すべての時間を本の制作に使うことにしたのだ。
しかし、あまりにストイックすぎると体調を崩して継続不可能になる。なので、休息時間には趣味を思う存分にやっていいことにした。といっても、ほんの僅かな時間で好きなことを楽しむぐらいだった。原稿を書いて疲れ切っているため、休息時間には倒れるように寝てしまうことが多かった。そのため、気になるアプリの画面を開いたまま、気がついたら寝ているなんてことが多発した。
とはいえ、体調が悪くなりそうな兆しがあったら、なるべく休むようにした。継続できなくては意味がない。原稿を書くのに夢中になりすぎると、私は限界を超えるまで無理しすぎる傾向があるため、休息を意識的にするように心がけた。また、外出を極力控えた。外に出れば、疲れて1〜2日ほど、作業がストップして寝込むことになるからだ。
そうして、この本を完成させるため、私はすべてを原稿の執筆に注ぎ込んだ。noteやSNSで「本を制作中」と宣言した以上、何が何でも完成させたかった。だが、のしりことして何も発信しなくなるのはマズイ。私のことを応援してくださる方々に心配をかけたくない。だから、SNSなどで定期的に投稿するようにした。じつは、これがちょうどいい息抜きになった。一人で原稿を書いていても、SNSを開けばリアルタイムで投稿をしている人たちの様子が見える。そのおかげで、孤独を紛らすことができた。
そして、原稿が終わる
そうやって、ストイックに書き続けた結果、なんとか『なんだか痛くて仕方がない』の原稿を当初のスケジュールより1日遅れた程度で書き上げることができた。書き終えた瞬間、解放感と達成感で胸がいっぱいになった。やっと終わった。そうして出来たのが、エッセイ集『なんだか痛くて仕方がない』だったのだ。
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さてさて、今回は、締切に追われながらも書いていた2024年10月のつぶやき日記。つぶやき日記とは、当時のしりこのTwitter(@ricrck)に載せていたつぶやきをもとに書いた箇条書きの一カ月間の日記。
★Twitterの呟きをもとに、新たに書き足して編集したものを日記に載せています。
★日記でたまに出てくる「猫様」とは、うちで飼っている猫です。
2024/10/01
10月になった。なのに、未だに半袖。秋は一体どこへ隠れているのだろう。
2024/10/02
10月なのに真夏のような暑さもあれば、涼しくなったりと身体が温度についていくので精一杯。持病の線維筋痛症の症状もいつもよりも強めになる。ぬあ。身体が疲れ切って寝てばかり。ぐにゅ。
そして、友の会からゲンロン17が届いた。なので、猫様と記念撮影。
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2024/10/04
季節の変わり目で体調が崩れているせいで、寝てばかり。とにかく、休息しないとダメな時間が多くて悔しい。本作りの時間が足りない。ぬぬ。持病の線維筋痛症さんよ、全身の激痛なんかやめて、落ち着こうよ。って、イタタタ…!
そう言いつつも、本の原稿を書く日々。とりあえず、自分が作った締切日までに文章を完成させようと書き書き中。初めての本作りなので、模索しながら作っている。ちなみに、エッセイで病気関連の本の予定。完成できるといいな。
2024/10/06
温度の変化があり過ぎて、身体がついていけていない。持病の線維筋痛症さんは、こういうのが大好きで楽しんで激痛やら疲労感やら症状を届けてくる。けれど、それでもほんのちょっとでいいから、本作りをやりたい。焦らず、ゆっくり。マイペースで。
最近、本の制作のために参考になりそうな本を読んでいる。内容が重めのものばかりなので、読んでいると心がズドーンと暗くなっていく。だから、心を癒すための本と漫画を用意して、読書することにした。フリーダ・カーロの画集とかガラスの仮面とかを読んで、癒されたい。
2024/10/07
お腹を出してゆっくりくつろぎながら、じーっと何かを見つめている猫様。猫様の目線の先には、テレビが。動くテレビ画面が面白いのか、毎日テレビを見る猫様。ふふ。人間らしく過ごす、ある日の猫様だった。
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2024/10/11
RTがRPになっていたのをこのあいだやっと気づいた。カタカナ表記ではリポストを知っていたけど、RPは流行っている言葉なんだと思っていた。
そもそも、私はいまだにTwitterやツイートなどと書き続けている人間だから、仕方がないのかもしれない。だって、X(旧Twitter)って書くのダサい。文章でどうしても使わないとダメなとき以外は使いたくない。でも、RPは広まっている気がするので、そろそろ使わないとダメなのかもしれない。
2024/10/14
先月発売された本、堀尾眞紀子『フリーダ・カーロ作品集』を自分の近くに置いて、少しずつ読んでいる。パラパラ見た限りでは、あまり他の本では触れられていないようなフリーダの絵や写真が大きく載ってて嬉しい。
そして、今月から始まったNHKラジオのスペイン語講座にも、フリーダが。フリーダ・カーロの人生を描いた戯曲を読み解くシリーズが応用編でスタート。思わず、気になってテキストだけ買ってしまった。フリーダや当時のメキシコのことを解説してくれて、スペイン語がわからなくても面白い。これは次も買ってしまいそうだ。
2024/10/15
このあいだ、友達と遊んだときにガチャガチャで「ねこのきもち だれでもアクリルチャーム」をゲットした。これは猫様にぴったりなもの。とりあえず、近くにあった猫様の写真を入れてみたが、かわいい。
普段テレビをあまり見ないのに、ミン・ヒジンが出ると知って、つい見てしまった。改めて人間味のある面白い人物だなと思った。ますます、応援したくなる。しかし、NewJeansとミン・ヒジンは今後どうなるのだろう。
ふとした瞬間に強烈な眠気が襲ってくる。ぬぬぬ。おやすみするか。
2024/10/16
イタタタ…!身体が痛い。しかも、温度が暑くなったり寒くなったりと忙しくて、身体が疲れ切っている。持病の線維筋痛症の症状が落ち着かない。ぬぬぬ。とりあえず、猫様を撫でよう。って、イタタタ…!
2024/10/18
ダメだ。今夜は頑張りすぎた。これでは、他のことができなくなる。少し反省。ぬぬぬ。とりあえず、ゆっくりしよう。
2024/10/20
本の原稿の終わりが見えない。でも、書くのだ。
SNSで、本の原稿の締切に追われて限界ギリギリの人たちを見ていて「大変そうだな…。」と思っていたけど、いまとても気持ちがわかる。
2024/10/21
なんか、今日は線維筋痛症の症状がキツイ。さっきまで、ずっと寝ていた。いまは少し落ち着いているから、本の原稿をやっている。でも、無理しすぎるとマズイから、ほどほどにしなきゃ。寒暖差、嫌い!って、イタタタ…!
急に冷えると身体が弱るから、少しずつ寒くなっていく方向がいいな。
Tiny Desk KoreaでのNMIXXの生演奏ライブ、めっちゃかっこよくて、いまでもたまに聴く。NMIXXは、全員歌が上手いグループ。とくに、パワフルに気持ちよく歌うリリーとしっとりと歌うBAEの歌声が堪らない。
2024/10/22
note記事を公開した。本の制作での話と私の近況報告を書いた。「自費出版で本(同人誌やzineみたいなやつ)を作ることになりました。」と宣言してから、どんな感じで進めているのかなど書いた。
「持病の線維筋痛症でほとんど寝たきり生活でも、本を作れるよ!」と未来の私が言えるように完成させるぞ〜、おお〜!!
2024/10/24
本の原稿を書いていて忙しいが、猫様の写真はとりあえず撮るだけ撮っている。だって、目の前でかわいい姿でゴロンとしていたら、撮るしかない。という感じで撮った猫様。はぁ、かわいい。
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2024/10/29
本の原稿をコツコツ進めている。たまに自分の書いた原稿に自信をなくしてしまうけれど、きっとこの本を楽しみにしている人たちがいるはずだと自分に言い聞かせながら、なんとか完成を目指している。
2024/10/30
今日は線維筋痛症の激痛がひどい日だ。よし、本の制作はおやすみ……としてもいいけど、おやすみしたところで痛みが落ち着く訳ではないので書く。たとえどんなに痛くても、書き続ける。しかし、イタタタ…!
ぬぬぬ。無理しない程度に頑張ろう。
2024/10/31
今日はハロウィン。「今年は本の制作に追われているけど、せめてハロウィンの日ぐらいは、猫様とハロウィンを楽しみたい!」と思って、毎年恒例のハロウィン加工の猫様を作った。ハッピーハロウィン!
今日、本の原稿を進めている途中で寝てしまったようで、気がついたらデータが消えていた。調子が悪いときに30分ほど書いたデータなので、そこまで進めていなかったからダメージは少ないけれど、やっぱり悲しい。ぬぬぬ…。
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