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私的『シン・おっさん教員』後半
前回の記事では、自校の校内研究でなぜ先生方が前のめりに学ぶようになったのか、『シン・おっさん教員』の文脈から書いてみました。
※さる先生の『シンおっさん教員』の記事はこちら
※前回の記事を読まれていない方はこちらから
今回は、いよいよ後半。校内研究を牽引してきた私がいなくなった後の校内研究をどうしていくのか?という耳の痛い問いに対する回答編です。
後半 耳の痛い話への回答
人を責めるな仕組みを責めろ
これはトヨタの有名な言葉です。
隠されがちな失敗を表に出す秘訣は、当事者を責めることなく、問題を引き起こした原因にフォーカスすることです。
ある1人のメンバーが起こしたトラブルや問題は、同じ職場で働くメンバーであれば、誰もが引き起こす可能性があります。「〇〇さんの対応がまずかった」と個人に責任を押しつけるのではなく、職場で同じトラブルが再発しないような対策を考えるのが上司の仕事です。
都合の悪いものは隠したがる。そんな人間のクセを理解したうえで、問題が発生した際にはトヨタの現場ではいったん仕事を止めて失敗や故障をオープンにし、それが再発しないような対策を考えるという習慣があります。
この習慣は、「人を責めるな、しくみを責めろ」という言葉に凝縮されています。つまり、問題が起きたとき、その作業者を責めるのではなく、作業者が失敗してしまうようなしくみを改善することが重要視されているのです。
簡単にいえば、「うまくいかない原因を人に求めるな、仕組みを整えることに注力せよ」という事だと思います。
学校でいえば、
×校内研究がうまくいかないのは、学ぶ意欲がない先生たちが悪い
○校内研究に前のめりで参加してもらうためにはどんな仕掛けをしたらよいだろう?
と言う事です。
というわけで、学びやすい仕組みづくりを考えて整えていきました。
仕組みづくり
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・一律の教科研究の廃止
・「確かな学力部会」「豊かな心部会」「働き方改革部会」の中から部会を自由選択
・研究テーマ「通いたくなる学校・働きたくなる学校」
・各部会で研究テーマに合わせてビーイングをつくり具体的に研究を進める
・指導案の簡略化
・体験・対話ベースで研究・研修を進める など
いちばん大きな変更点は、一律のトップダウンの教科研究をやめたことです。
それぞれの先生の問題意識に従って自由に部会を選び、共通の大テーマである『通いたくなる学校・働きたくなる学校』を目指して部会でビーイングをつくり研究を進めます。それを対話ベースで行なっていきます。
この仕組みで行なっていく中で、幾つもの企画が立ち上がりました。
・『全ギガ』読書会
・先生方の手帳が見てみたい
・ゴーストウォーク 先生方の教室見学
・教えてNotion
・消しゴムハンコ作り
・みんなの学級開き
・掃除・係りのシステム教えて
・Kahoot・Canva・Padlet・Flipの活用法 など
全てのスケジュールがかっちりと決められているのではなく、ある程度の余白を持ちながら対話ベースで進めていくことにより、このような企画が立ち上がり学び合うことが出来たのだと思います。
得意な人に任せる
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さまざまに立ち上がった企画。
「先生方の手帳が見てみたい」「みんなの学級開き」のような企画の対話の場面では、参加者全員が主役になります。
情報を広げるという場面では、私が伝えられるものもありますが、もっと得意な方がいる場合もあります。そこで、積極的に得意な方に任せることにしました。
「Kahoot」「Canva」「Padlet」「Flip」などの研修では、得意な人が講師となり、使い方や実践発表を行いました。
私は『シン・おっさん教員』として、学びが最大化するようにコーディネーターに徹しました。
次は、「このテーマで研修をするんだけど〇〇先生のあの実践発表してくれますか?」と積極的に声をかけました。
先生方に発表をしていただくと、「さっきの面白いね」「さっきのあれってどうやるの?」などと会が終わった後でも、自然と学び合う姿が見られるようになりました。
発表してくれた先生は、他者貢献ができてうれしいですし、周りの先生にとっても学びを深めることができ、win-winです。
先日の校内研修では、若手の先生が、その場で咄嗟に発表をしてくれました。学校全体の学びに貢献しようという気持ちがとてもうれしかったです。
次の世代を育てる
誰か一人だけが引っ張っていく校内研究は持続可能ではありません。
任せることは次の世代を育てることにつながります。
『シン・おっさん教員』としては、プレイヤーとしての面を引っ込め、マネージャーとして積極的に若い世代に任せていくことが大切だと感じています。
じゃあこの仕組みで上手くいくんじゃないの?
半分当たっていて、半分はずれです。
仕組みはあくまで仕組み。それを動かしていくのは人です。
・運用していく人にやる気がなかったら
・自分のことしか考えていない人だったら
・相手意識のない人だったら
・対話しても否定する人だったら
こんな人が運用していたらどうでしょう。
きっと上手くいかないはずです。
仕組みづくりだけではやはり足りません。
結局 熱じゃない?
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私は、坂本良晶先生と正頭英和先生が主催するEDUBASEというコミュニティーに参加しています。
EDUBASEには、月に3・4回のオンラインセミナー、坂本先生と正頭先生のマガジン、Crewの先生方によるライトニングプレゼン、SlackによるCrewの先生方との交流、そして、オフラインでCrewのみなさんと会えるEDUBASE FESと学び続けられる仕組みが整っています。
そして、その学びを加速させているのがCrewのみなさんの熱量です。
ライトニングプレゼンには毎回たくさんの方が参加、年末のEDUBASE FESでは60名以上の方が発表をしました。
そんな環境にいると、自然とその熱が伝播し、それぞれがやる気に燃えてきます。私もその一人です。
こんな熱いコミュニティーになったのは、坂本先生、正頭先生のコーディネート力による部分、学び続けられる仕組み、そしてCrewの先生方の熱のこもった交流があったからです。
教頭先生の心配事はここ?
教頭先生の指摘
リッケン先生がいなくなってしまったら、どうかな?
この真意を解像度を上げて分析すると、次の2点であると考えます。
・校内研究に熱をもって取り組んでいるあなたが抜けたらどうなるのか?
・校内研究がうまくいくようにをコーディネートしてきたあなたが抜けたらどうなるのか?
確かにここを指摘されると、図星です。
じゃあどうしましょうか。
じゃあどうする?
熱の問題
先生方は担任業務があります。担任のない教務主任の私の熱量では差があるのは仕方ないと思っています。逆にいえば熱量を持って校内研究に取り組むのが、教務主任としての本分です。
この3年間の校内研究改革の中で、多くの先生方が前のめりになって学ぶようになってきました。
教育書を読むようになった方、voicyリスナーになった方、自主研に参加する方、セミナーに参加する方、校内研修の講師をしてくださる方など熱量を持って参加してくださっています。私のいないところで、教え合ったり聞き合ったりと学びの芽が育っています。
この3年間、先生方が体験したことはしっかりと体に残っていると思っています。だからこの点についてはあまり心配していません。
私が中心となって進めてきた校内研究と全く同じように進めることは難しいと思います。しかし、私は、全く同じである必要なんてないと思っています。
対話ベースの校内研究ですから、メンバーが変われば当然形は変わっていくはずです。
自ら熱をもって学ぶよさを体験した先生方が、私が去った後どのように学びを進めていくのか、むしろ楽しみにしています。
コーディネーターの問題
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EDUBASEの成功を見ても、コーディネーターとなる人の働きは重要です。
私は、『シン・おっさん教員』として先生方と対話をし、最新の教育の情勢を見ながら、校内研究を進めてきました。
研究の形や内容、進め方について、どのように考えてコーディネートしてきたのかについては、研究主任はじめ中心となって研究を進めている方々に十分に伝えられていません。
ここは大きな課題だと感じています。
ずいぶん長くこの学校に勤めているので、いつ異動と言われてもいいように、残された日々で、コーディネートするときに気をつけてきたことについても伝えていきたいです。
教頭先生に、「リッケン先生、いついなくなっても大丈夫だよ」いってもらえるように。
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