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『恋するプリテンダー』と『チャレンジャーズ』が頭から離れない【2024年上半期映画振り返り】

いつのまにか今年も半分が過ぎてしまった。
上半期に観た映画で頭から離れられない作品が2本ある。
『恋するプリテンダー』と『チャレンジャーズ』
どちらも広い意味で『恋愛映画』の共通因数でくくることが出来るのだが、ベクトルが全く違う。

『恋するプリテンダー』は運命的な出会いをして1夜を過ごすものの、最悪の別れ方をした男女が、同じ結婚式に参加するために再会してしまい、お互い昔の恋人に嫉妬してもらうために偽物のカップルを演じ、本当に好きになっちゃうラブコメな話。

『チャレンジャーズ』は2人の男性テニスプレイヤーが1人のテニスプレイヤーを巡って錯綜するスポーツと略奪愛がテーマの話。

今回はそんな恋愛映画2本について語っていきたい。


『恋するプリテンダー』

原題は『Anyone But You』なのだが、絶対に原題のままのほうが良かった。

先ほど軽く触れたが、偽物のカップルを演じるうちに好きになってしまう話
しかし、そんな作品ありふれている。
特に昨今のラノベのラブコメものでは。
『恋するプリテンダー』がそんなありふれている偽物カップルラブコメ作品において一線を画している変わった特徴は正直言ってない。
だけど、ものすごい面白い、何より「洋画を見ているなあ!」という気持ちになれて気分上々。
舞台の9割はオーストラリアのビーチリゾートとそこに併設されている結婚式場のため、バカンス感全開で登場人物の露出度が異常に高い、5割くらいは水着シーンだ。

トップガン・マーヴエリックで余暇を楽しむためにビーチで遊ぶシーンがあったと思うが、120分ずっとそのノリとテンションを見せつけられる映画。
でも、洋画ってそれでいい。
男性キャラクターは全員マッチョだし、女性キャラクターは全員ナイスプロポーションでオーストラリアの綺麗なビーチが背景なのでもはや現代芸術と表現してもいい。

偽カップルの女性の方はビーというキャラで、シドニー・スウィーニーが演じている。
この人が出ている映画は『マダム・ウェブ』しか知らないが、挙動や表情がとても魅力的で、しかも知的だけど、ドジというかハプニングを良く起こすキャラクターだ。そのギャップがすごく良い。

男性の方はベンというキャラでグレン・パウエルが演じている。
トップガン・マーヴェリックでトム・クルーズに負けない程の強烈な存在感を放っていたハングドマンを演じていた人でもある。
とにかくハンサムで、笑顔がチャーミング、ハリウッド俳優がなんたるかを思い出させてくれる圧倒的スターオーラを放つド級の役者だ。
秋に公開されるツイスターも彼が主演なので楽しみ。
また、グレンにもギャップがあって、ムキムキマッチョで運動神経抜群そうなのに泳ぐのが下手、そして高所恐怖症という激ダサ属性持ち。
この設定がめちゃくちゃ活きるから面白い。
これについては後で話します。

偽物のカップルを演じるうちに好きなってしまう2人。
ターニングポイントがいくつかあるのだが、一番印象的なのは、とある夜に結婚式の参加者で船を貸し切ったクルーズパーティをした際、シドニーが船に落ちてしまい、グレンは我流の泳ぎ方で彼女を救いにいく。

2人は救助を待つために海に浮いている航路標識に掴まりながら待っていると、救助ヘリがやってきて助けのロープが出される。
ここで思い出してほしいのはグレンのもう一つの弱点、高所恐怖症である。
苦手な泳ぎを披露して、苦手な高いところから救助される、グレンにとっては災難な一日であるが、高所恐怖症に対して克服法がある、それは好きな歌を聴くことで気を紛らわせることだ。

心を落ち着かせるときに聴く曲はいつも一緒で、ナターシャ・ベディングフィールドの『Unwritten』という曲
それをシドニーが歌うことでグレンは心を落ち着かせる。

何故、シドニーはグレンが心落ち着く曲を知っていたのかという伏線も実は物語冒頭で仕込まれており、決してノリだけでやっていない。

ナターシャ・ベディングフィールドの『Unwritten』はEDでも流れていて、演者全員がパートを分担して歌っている。それもメイキング映像のような撮影の合間で撮影されただろう演出でとても楽しそう。
歌詞と映画の親和性が凄くて、この曲を聴くたびに映画を思い出してしまうものだから、Spotifyでずっとこの曲を聴いている。
バカみたいなシーンもたくさんあるのに、物語自体が素晴らしいハッピーエンドで終わるものだから、気持ちがハイになって泣いてしまった。

こちらの映画『マッドマックスフュリオサ』でフュリオサの母親役を演じていたチャーリー・フレイザーも出演しており、ありえないくらいスタイルがいいので、そこも注目してほしい。

『チャレンジャーズ』

ルカ・グァダニーノ監督作品を見るのは実ははじめて。
略奪愛を描いた刺激的で背徳感満載映画なのに、ドロドロさはあんまりなく爽快ささえある、この感覚を味わったのははじめてな気がする。
本当に衝撃的で、心の中でずっと笑っていた。

主役である女性テニスプレイヤーのダンカンを演じるのはジョン・ワッツ版『スパイダーマン』でヒロインMJを演じていたゼンデイヤ
彼女はとても美しいが、ルカ・グァダニーノは彼女がどの角度から撮ればより美しく映るか熟知しているようで、2人の男の人生を狂わす悪魔的なキャラというのが強烈にスクリーンに映っている。
観客も好きになってはいけない危険な女性だと理解していても、思わずその魅力に飲み込まれてしまっただろう。

ゼンデンヤに熱狂する2人の男はズワイグとドナルドソン。
どちらも魅力的なイケメンだけど属性が違い、ズワイグは野性的で無神経、ドナルドソンは知性的で神経質そうな男だ。
勝手な推論だが世の女性にどちらの男が好きかアンケートを取ったらフィフティー・フィフティーになりそうなくらい、好みが分かれそう。

物語はとある地方大会でダンカンと結婚しているドナルドソンと賞金目当てで大会に参加するズワイグが決勝戦でぶつかり合う。
2人は年齢的に選手生命としては終わりにさしかかっており、優勝するならラストチャンスであろう選手生命において節目となる大会。
運命的な決勝戦の様子とドナルドソンとズワイグが過去にダンカンに出会い、魅了されてしまった日から決勝前日までの過去を織り交ぜながら進んでいく。

ダンカンが結婚しているのはドナルドソンだが、過去を覗けばズワイグもダンカンと交際した経緯があり、それなのにどうして今はドナルドソンとくっついているのか、結婚した2人の関係性は良好なのかが分かってきて、この決勝戦が3人にとって宿命的な試合であったのかが3人の不屈雑かつ理解不能な人間模様が交錯しながら描かれている。
過去に散らばった伏線が、決勝戦で見事に回収される見事な構成。

さらに、理解不能な行動があるものの、そんな物語の転換点では必ずアップテンポで耳に残る独特のテクノミュージックが流れるので「もう、お前らが楽しそうならそれでいいや」って思考停止になってしまう。
これは理解したくないという気持ちより、3人の人間関係は聖域であり絶対に近づけないと確信してしまうからだろう。

そんな、理解し難い恋愛が描かれた映画でも、メインキャラの個々の悩みに焦点を当てるととても繊細な問題で親身になってしてしまう。

ダンカンはテニステニスプレイヤーとしての才能や人気を集めるカリスマ性がありながらも、脂がのっている時期に致命的なケガを負い、選手としての活躍の道が絶たれてしまう。
そんな彼女は何を楽しみに生きればいいのかをずっと探している。

ドナルドソンはダンカンと結婚して、彼女の支えもあり一流のテニスプレイヤーとなりセレブな生活を送れているものの、年齢を重ねるごとにいい結果を残せなくなる、しかし一流選手としてのプライドがあり簡単にはダンカンに引退したいとは言えず、美しい引き際を考えている。

ズワイグはドナルドソンよりもテニスが上手だったものの、ダンカンと別れてから散々で、テニスプレイヤーとして日の目を浴びてこなかった。マイナーな地方大会を出ては最低限の賞金をもらって生活をしのぎ、その土地のマッチングアプリで出会った女性を口説き、泊めてもらう日々だか、彼もいつまでもそんな生活ができるとは思っていない。

ラスト5分、試合はラストセットのデュースにもつれた緊迫した展開、そこからの怒涛の終わり方はもう笑うしかない。
思考を整理するうえで、誰かに考えを打ち明けることで、自分の考えをまとめる『思考の壁打ち』と呼ばれる思考法があり、おそらく球技のラリーをモチーフにした言葉だが、ラストシーンは『思考の壁打ち』をテニスで表現している言わば、逆輸入した演出になっていると思う。

試合中、2人は様々な想いを秘めているにもかかわらず緊張感を持って試合に集中している。しかし、突如ズワイグはとあるジェスチャーをすることで緊張の糸が解れ、ダンカン含めた観客を置いてけぼりにして2人だけが心を通わせる、そんなラストは痛快だ。

あと、この映画はうまく表現できないが観客を勝手に100%信用していて、大いに振り回してくる作品だと感じた。

まとめ

以上2つの恋愛映画を紹介したが、どちらの映画も恋愛の部分においては共感はできない。だけど登場人物が恋をして、笑ったり、悩んだり、時には恋に振り回されながらも成長していく姿は見ていてとても気持ちが良いし、何より楽しそうで、もうそうなったらこちらも楽しむしかないのだ。
最近恋愛映画の楽しみ方がわかった気がする。










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