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私のカルチェラタン:新任教師のパリ研修 1

木々の緑の合間に点々と浮かぶ赤い屋根。赤と緑のコントラストがまぶしく目に映る。オルリー空港からパリ市内に向かう車の中から最初に見たフランスの風景だ。

ついにフランスにやって来た。心が波打っているのを感じる。何でも見てみたい。何でもやってみたい。そしてたくさんのものを得たい。窓の外に流れる景色を眺めながら私はこの先一か月半のパリでの生活に胸を弾ませていた。

私がフランスに行こうと決めたのは前年の秋だった。大学を出て公立学校の教員になったばかり。教師の世界をほんの一部を覗いたに過ぎない私だったが、なぜか心はモヤモヤしていた。仕事に対する期待と現実のギャップ、教師として体験する学校という社会、建前と本音が交錯する大人の世界、生徒や保護者、同僚との人間関係、未熟な自分への苛立ちなど様々な思いが私の中で渦巻いていた。

学校という世界は私の予想と大きく違っていた。これがリアリティ・ショックというのだろうか。「教えられる立場」から一転して「教える立場」に立った私の心は理想と現実の狭間で揺れ動ていた。そんな中で決断したフランス行きだった。フランスは私が高校生のころからあこがれていた国で、いちばん行きたかった国だ。フランス語を学び始めたころから必ず行こうと心に決めていた。何より当時の私は日常生活から遠く離れた海外に身を置いて自分を見つめ直したかった。

私にとって海外に行くのはそれが初めてだった。大学の学費を親に出してもらった私は、学生時代に海外に行くなど考えられなかった。友人が渡航費用を親からもらい交換留学に出かけるのを羨ましい気持ちで眺めていた。だから自分で収入を得るようになったら行こうとずっと思っていた。

参加したのは民間の組織が実施するフランス語の語学研修ツアー。滞在中はソルボンヌ大学の夏期文明講座を受講する。時間的な制約はあるが、そんな中でも私はできるだけ自分の足でパリの街を歩き、その中でいろいろなことを考えたかった。私はこの旅を自己省察の旅にしたかった。

現在のソルボンヌ夏期文明講座(2023年)↓


私が参加した(たぶん)研修旅行の現在↓ 



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