短期大学の現状と今後の展望
今回は私が働いていた短期大学(以下:短大)全般について、今後の展望も含めて書いていこうと思います。
①短期大学とは
短期大学について文科省は以下のように述べています。
(1)短期大学制度の沿革と特徴
短期大学は,学校教育法において4年制大学と目的や修業年限を異にする大学と位置づけられており,昭和25年の制度創設以来,特に女性の高等教育の普及や実践的職業教育の場として,大きな役割を果たしてきました。(中略)
また,短期大学への進学者に関する指標の1つとして,自県内進学率が挙げられます。(中略)
(2)短期大学卒業後の進路について
現在,短期大学では様々な分野の教育が行われていますが,とりわけ,幼稚園教諭や保育士,栄養士や介護福祉士など,地域の専門的職業人の養成の面で重要な役割を担っています。
また,卒業後には4年制大学への編入学や,短期大学専攻科への進学などにより,さらに学習を続けるという道も開かれています。
(引用:短期大学について:文部科学省 (mext.go.jp))
つまりまとめると・・・
・短大は女性の高等教育や実践的な職業教育の場
・地元への進学率が高い
・卒業後は幼稚園や保育士などの専門的職業に就く。また4年制大学への編入や専攻科への進学もある。
こんな感じです。
②短大への進学率の推移
それでは最近までの短大の進学率はどんなものか見てみましょう。
上記のグラフは高等教育機関で働いている人なら一度は見たことがあると思います。文科省が出している18歳人口と大学などへの進学率の昭和35年から平成27年までの推移です。情報量が多いですが、要するに・・・
・18歳人口は平成初期から減少している
・大学入学者数は現在もゆるやかに増えている
・短大への進学は平成初期を境にどんどん減っている
・専門学校へは平成初期を境に緩やかに減少し、ここ数年は横ばい
ただ、現在はもう令和4年なので、もう少し推移が変化しているかもしれません。上記グラフにもあるように、世の中では四年制大学へはどんどん進学しているが、短大の入学者は逆にどんどん減少しているのが現実です。
こんなこと言ったら元も子もないのですが、私はこのグラフを短大の経営方針の参考にしませんでした。こうした包括的な話や文科省のように全体を語らなければならない場合は役立ちますが、例えば東京の18歳人口の減少率は地方に比べて緩やかですし、逆に地方はもっと過酷な現状です。そうなると最初に割を食うのが地方の短大です。特に大阪や福岡、名古屋のような都市部でない場所の短大はかなりシビアになると思います。ですので、学校の経営方針などミクロの話をする場合は、それぞれのスケールにあったデータを活用すべきだと思います。
③かつての短大は現代では時代錯誤?
短大の定義や入学者数の推移を見てきましたが、短大へのニーズが減ってきているのが分かったと思います。ストレートな言い方をすると、かつての短大のような形ではこれからどんどん入学者数が減っていくと思います。
女性の職業教育の場であれば女子大など大学に行けばいいし、専門的スキルを身に付けるのであれば専門学校に行けばいい。これらがもろに上記グラフに現れています。
これに追い打ちをかけるように国の高等教育の修学支援新制度が令和2年4月から始まりました。こうした施策が金銭的理由で諦めていた高校生に四年制大学進学の後押しをします。短大のポジションがこのままではどんどん無くなっていきます。
④これからの短大のあり方
それではこれからの短大はどうすればいいのでしょうか。私なりに思う所を書いていこうと思います。まずは短大のニーズの整理をします。
短大のニーズ
・専門的スキルの習得
・学費
・進路(就職か進学か悩んでる)
こんな感じかと思います。専門的スキルは基本線になると思います。ただ、これは後に記述しますが専門学校との差別化を図る必要があります。これが明確化されれば専門学校と短大で悩んでいる学生を取り込める可能性が出てきます。
また、学費については四年制大学と比較して2年分安いと言えます。こうしたことは大学側のアピールになります。
そして進路に関しては、就職しようか進学しようか悩んでいる学生、特に3月ギリギリまで悩んでいる高校3年生にとりあえず短大に進学する、ということを提案できます。2年間で様々な体験をして改めて就職するのか、四年制大学に編入するのかもう一度考えるチャンスを与えることができます。
次にこれからの短大を見ていきます。
これからの短大
・四年制大学、専門学校との差別化
・ニーズを生み出す
・付加価値を作る(短大に来ることによって習得できる事)
まずは差別化。といっても具体的な事というよりも、短大の教職員はこれを常に念頭に置いて課題意識をするべきです。
その中で、あえてニーズを生み出してしまおう、というのも一つの戦略です。今はいくらでも学校→受験生にアピールできるチャンスがあります。YouTubeやインスタグラム、TikTokといったSNSは若者は食いつきやすいです。そうした発信力を駆使してニーズを生み出す。私は以前ちょっとしたショートドラマを作ろうと計画していました。保育士のニーズを増やすために学園を舞台にした短大生を中心としたちょっとしたドラマです。実現しませんでしたが、そうした高校生が将来を考えた時ちょっと面白いかもと思ってくれる情報を発信し、短大のニーズを作っていくこともできます。
そして最後に付加価値を作る。これはもちろん差別化にもつながるのですが、もう少し具体的になにができるようになるのか、もしくは今あるものから更にプラスアルファでできるようになることを増やしていく。そしてそれを受験生に明示していけば、四年制大学でも専門学校でもなく短大へ進学する、という道も出てくることかと思います。
まとめ・おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回は短大の現状と今後の展望についてお話ししてきました。少しニッチなジャンルになりましたが、これもまた一つの世界ですし、短大の職員もれっきとした大学職員ですので転職先にお勧めでです。
今回の記事が少しでも大学職員を目指す人たちのためになれば幸いです。
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