きものを仕事にしてみたら
好きなことは、好きなことのまま(趣味)として取っておく方がよかったかもしれません。でもわたしは第二の人生をきものでスタートしました。好きなことを仕事にして毎日を過ごしたかったのです。
そしてやはりきものを仕事にするのはたいへんなことでした。
こんなことがありました。甥の結婚式に出るのに、着付けとヘアセットをお願いしたら、一人25,000円、娘と二人で50,000円、結婚式に出席するだけで、大出費。着付師さんって儲かるのかな?
着付け教室に行き出したころ、先生方のお召しになっているきものが素敵すぎて、とにかく高そう〜?!実際、展示会などで知ったきものの値段が信じられないほど高くて、先生方はいったいどれくらいお給料をもらっているのかしら?
まず着付けの仕事なんですが、着付師がお客様の着付けをするのはいわゆるハレの日。その、ハレの日が一年のうちに何日くらいあるのか、ということです。
わたしは主に着付けのお仕事をしてきましたが、着付けのお仕事がない平日は、百貨店の中にあるレンタルきもの店で働いていました。百貨店は、元旦以外毎日営業していますから、忙しい時期と暇な時期とありましたがそれでも一年中お仕事をさせていただくことができました。
そのうち教室で生徒さんに着方を教えるようになりました。
ところが、着付けの先生はたくさんおられるので、そんなに多くの授業を持たせてもらえるわけではなく、お仕事の量としては、パートタイムにとどまりました。実際先生方の中には扶養範囲より多くの収入があっては困る、という方も多くいらっしゃいました。
着付けの先生となると毎回きものを着るので、季節によって一通りのきもの、帯、長襦袢などを揃える必要がありました。講師ですから、衣替えなどの決まり事を崩すことはできません。袷の季節には袷のきものを着る、暑いからと言って、今日は単衣にしましたー、なんてことはできないのです。また、生徒さんから素敵と思ってもらえるような装いを心がけるとすると、家にあるものだけではこと足りず、新しいものを購入することになりますが、そうなるとお金がいくらあっても足りません。
仕事できものを着る機会が増えると、きもの姿も板についてきます。また、高級なきものを着ていると自分も少し高級な人間になったような、、、そして気がつけば、いつしか仕事以外にきものを着ることはほとんどなくなってしまっていました。
さて、これでよかったのか、今のわたし。今わたしが着ているきものは私が本当に好きなきものなのかどうか。