解説 貧しい人は神の国を受け継ぐ(第二説教集11章1部) #139

原題:An Homily of Aims-Deeds, and Mercifulness toward the Poor and Needy. (助けを求める貧しい人々に対する施しと慈善についての説教)

第11章に入ります。この章は3部構成です。まずは第1部の解説をします。聖句でいうテーマはこれでしょう。

よく言っておく。この最も小さな者の一人にしたのは、すなわち、私にしたのである。(マタイによる福音書 第25章40節)

第1部のポイントは次の4点です。
①施しの大切さとこの説教の目的と要点
②聖書にみる施しの大切さ
③施しの大切さを理解しない人々
④まとめと結びの短い祈り

冒頭で施しの大切さを唱えつつ、この説教の目的と要点が述べられます。

あらゆる悲惨に喘いでいる貧しい人々に対して慈しみや憐れみを持つということほど、神にいたく受け入れられ、み恵みに与れるものはありません。しかしながら、(略)わたしたちはそのような貧しい人々に対してあるべき姿から遠く離れ、むしろ無関心で不注意でいます。極めて大切なのは、(略)この愚鈍さから抜け出し、自身の務めについてよく考えることです。

第一に(略)、施しを行うことがどれほど強く求められていて、またどれほどみ心に適っているのかをお話します。第二に施しを行うことがどれほど有益なことであり、どれほどの恩典や果実がわたしたちにもたらされるのかをお話します。そして第三に、神ご自身を十分に見せるだけではなく、貧しい人々に対して大いに救いとなり、もはや極貧や欠乏という恐れなどなくなるものをみ言葉の中からお示ししましょう。

第11章は3部構成で、この3点について順に説かれます。第1部は施しがどれほどみ心に適っているのかについてとなりますが、これについて聖書から多くの引用をもって説かれます。

「よく言っておく。この最も小さな者の一人にしたのは、すなわち、私にしたのである(マタ25・40)」

「気落ちしている者を励ましなさい。弱い者を助けなさい。すべての人に対して寛大でありなさい(一テサ5・14)。」

「善い行いと施しとを忘れてはなりません。このようないけにえこそ、神は喜ばれるのです(ヘブ13・16)。」

「お前の財産のうちから施しをしなさい。施しの際に、お前の目が妬みを抱かないようにし、どんな貧しい人にも顔を背けてはならない(トビ4・7)。」「飢えている人に、お前のパンを、裸の人にはお前の衣服を分け与えなさい(同4・16)。」

これらをはじめとした聖書の言葉に加えて、クリュソストモスやアウグスティヌスの言葉も引用され、施しという行為がいかにみ心に適うものであるのかが説かれます。これについては次のようにまとめられています。

預言者や使徒や教父や博士がこのように繰り返し説諭し熱心に唱道しているのには何の意味があるのでしょうか。間違いなく、彼らは神への信仰を強く持ち、それゆえ真に自らの務めを行い、み心が何を求めておられるかをわたしたちに伝えています。助けを求める貧しい人々に施しを与えることは神に大いに受け入れられるもので、いけにえでもあります。そこに神はいたく喜ばれるのであるということを、彼らはわたしたちに知らせようとしただけでなく、ひとえに愛ゆえに説こうとしました。

しかしそうであるのに、世の人々が施しについて後ろ向きであることが述べられます。利己的で博愛に欠けていることが強く糾弾されています。

ところが、わたしたちのまわりにいるこの世の知恵に明るい者たちのやり方はこうです。財産のある者は自分の愛して恐れてもいる君主や有力者の寵愛を受けるべく、まずその人を喜ばせようとします。そして自分が困ったときには代弁者になってもらい、自分が利益を得たり、不都合を避けたりすることができるようにしています。このようなことは明らかに恥ずべきことです。

自分のために金銀を用いるくらいなら、貧しい人々に施しをするべきである。そうしない者は天国に至ることができないとさえしています。

なぜわたしたちは、自分の利益や富に結びつくあらゆる喜びをもたらす者の歓心を得ようとしていながら、貧しい人々の友情や愛情を得るのに怠惰で億劫であるのでしょうか。キリストはご自身の名において必要とする人々に冷たい水を一杯でも与えた人には報いを約束されています。その報いは天の国であり、わたしたちが貧しい人々に対して持つ慈悲をもった愛情をどれほど強くすすめておられるのかを明らかにされています。

これを踏まえ、貧しい人々への施しを努めて多く行うことを説き、短い祈りをもって第1部は終わります。

今回は第二説教集第11章第1部「貧しい人は神の国を受け継ぐ」の解説でした。次はこの試訳となります。

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