「ミシンと金魚」永井みみ【読書感想文】※ネタバレあり
デイサービスと訪問看護で生活しているカケイさんの日常と半生。カケイさんは認知症があって、体も不自由で排便も困難。
このカケイさんの語り。読点が多い独特のリズムがすごく楽しい。「コロナうず」とか言葉を間違えるのも好き。作者がケアマネジャーで、施設の様子がすごくリアルだった。
=ここからネタバレ=
最初のシーンで抗躁剤を断る介護士さんはヒーローだと思う。お嫁さんも「金目当ての上にアタリきついなー」と思ったけど、旦那が自殺して義母だけ残ったという背景ならいい人の部類に入る。
どのような形であれ、彼女のことを思ってくれる人に囲まれている。
カケイさんの人生は外から見ると「底辺」だけど、中から見ると全然そんなことはない。
「悪いことがあると、おなじぶん、いいことがある」と言えるから。
「ミシンと金魚(=道子)」は彼女が生きたうちの「いいこと」で、それがタイトルになってる。
「たくさんあった悲惨なこと」より「いいこと」を見る。
認知症だろうが天然キャラだろうが、その人の長い人生っていうのがやっぱりある。「今」はどうしても下の世話が必要な「厄介な子供」だけど、「子供扱いするな」の裏にはこういうのがあるんだと思った。
カケイさん、すてきだ。