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チャレンジングな幻想小説『アホウドリの迷信 現代英語圏異色短篇コレクション』

岸本佐知子さん、柴田元幸さんの訳した短編アンソロジー。10編。

文体とか表現の味わいとかは、小説をスラスラ読めるほど英語ができない私にとって、翻訳者を信じるしかない。
韻とかね、原文読めたらいいのにな、といつも思う。

文体の味わいが特に重要なんだろうなと思うのが
「足の悪い人にはそれぞれの歩き方がある」
「野良のミルク」
「名簿」
「あなたがわたしの母親ですか?」

「アガタの機械」は小説ならではの楽しみがあると思う。
この機械の形を想像するのが楽しい。ミシンのようで、受話器がついていて、映像が幻燈のように現れる。
どんなものなんだろう?

短篇の間に2人の対談記事が挟まれていて、解説の代わりになっている。

今回一番すごいと思ったのは「引力」


===ネタバレ===

最後の姉妹の選択が、すごい。
難民ボートに乗るたくさんの子供たち。ボートが転覆しかける。水泳のできる姉妹にはなんとか泳いで渡れるところに陸地がある。
危険を冒しながら上陸し、泳げるからこその引け目を感じながら生き延びるのかなー。
と予想したら、
姉妹が泳ぎでボートを曳航しはじめる。

姉妹にとっては生存確率が大きく下がり、損な選択に思えるけれど。

この物語に結末はない。
子供たちを海に追いやるのは、ほかならぬ私たちだ。

「引力」リディア・ユクナヴィッチ

という突き放した厳しいエンディング。
第三世界の子供たちを経済的に追いつめた大人たちに、何かを迫っている。

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