続コンプレックス Vol.4

気を取り直して、真剣に仕事を探し始めた。
もう人に頼るのはやめよう！
ややこしくなるし、何のしがらみも無いところで見つけたい！
という思いが強かった。

もう、ありとあらゆる人材バンクに登録した。
そしてネットの求人も徹底的に検索した。
う～ん、有りそうで無いなぁ～･･･

そんな時、「〇拝の湯　支配人募集」というのを見つけた。
これは筑紫野市で、我が家から車で10分かからない場所である。

詳しく見ていくと、第三セクターのような形で経営していたのを
〇神テルラをやっている福太郎が買い取ってスタートすることになったようだ。

〇拝の湯だけでなく、再生事業も色々手掛けているようである。
会社としてはしっかりしたところのようだ･･･

温泉の支配人っていうのもなぁ･･･
とも思ったが、背に腹は変えられない。
選り好みしている場合でも無かったのだ。
早速応募して面接をしていただいた。

30代の再生事業を担当しているマネージャーとの面接であった。
色々話をしたが、先方が私の経歴を見て、また話をしてみて
感じた部分があったようだ。
「ほんとにウチなんかで、いいんですか？」
と聞かれた。

いいも悪いも無い！
もう採用してくれるんだったら、家から近いし
もうハッピーであります！
というのを、そのまま言うわけにもいかないので
オブラート3枚くらい包んで伝えた。

そうだ、そのＳ木さんからもらったメールが残っている。

◇ ◇

笹川様

わざわざメールを頂きまして有難うございます。
今日は、面談の中でも様々なお話をお伺いすることができて、
こちらこそ大変勉強になりましたよ。

いずれにしろ、笹川さんの人柄と能力でしたら、
どこででも、どんな仕事でもきっと幅広く活躍される
ことでしょうね。
まずは、まだ選考途中になりますので、追ってご連絡させていただきます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

〇○郎天○〇ルラ株式会社 Ｓ木　○

◇　◇

役員面接を後日行いますとのことで、
この会社も中々すんなりとは行かなかった。

その役員面接であるが、社長は登場してこなかったが
NO２の、いかにも切れる感じの方であった。

「笹川さんはずっとホテルでやってきて、ウチでやろうというのは、
どういう思いなんでしょうか？」
とズバッと聞かれた。

今までに培ったマーケット分析能力や、企画力などを
発揮して、広く発信し、集客を図るという意味で非常にやりがいを感じて
います。具体的には・・・

という感じで話しを展開した。

今となって思うに、あまりに理路整然と説明し過ぎた感がある。

自慢するわけでは無いが、私が本気を出すと理路整然といくらでも説明する
ことが出来る。

しかし、これはTPOによって使い分けないとならない･･･
ということを、ある時尊敬している先輩から教わった。

「お前な、堤代表が出席される会議なんかで、そんな理路整然と説明してみろ。いくら説明はうまくても、あんまりうますぎるのは相手にある面反感を持たれる可能性があるんだよ。あんなに完璧に説明するんだったら、ちょっと意地悪なことを聞いてみようか･･･みたいな気持ちにさせて、突っ込んだ質問されて、それで答えることが出来ればいいけど、『え～･･･』なんて、急に歯切れが悪くなってみろ。かっこ悪いぞ。場合によっては、自信が無さそうに、わざと間をあけたり、動揺しているふりなんかも混ぜながらやるのがオマエ、大事なんだよ！それがほんとのプロなんだよ！」

な、なるほど･･･って思った。

場の雰囲気を考えたり、何とかこの企画を通したい！
という思いが強いときほど、その思いを出さないように、
でも、出来たらいいなぁ～みたいな雰囲気で話をする･･･
そんな努力を重ねていくと、
色々見えてくるものがあった。
これって、会議術？　本が出せそうである。

その役員の方は、海外での生活も長く、色んなことを良く知っている方でもあった。
話をすればするほど、私というのがどんな人間であるのかが、相手に伝わったと認識している。

そして、その面接の結果は不採用だったのだ！

なんとなく、そんな予感はあった。

私がいくら『今までのノウハウを！』なんて力説してみても、
相手には、この人にはウチの仕事では物足りなさをすぐに感じてしまい、
辞めてしまうだろう･･･
という部分までが読まれたんだと思う。

「読まれてしまった･･･」
つまり、理路整然がこういう結果を呼んだわけである。

当たっているだけに、反省もした。
自分の気持ちに嘘をつくのは良くない！
もう一度最初から真剣に探そう！
と思い直したのだった。