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続コンプレックス Vol.9

あっという間にオープンの日はやってきた。
2006年6月14日である。
この日をどのようにして迎えるかについても随分とO坪氏に進言をした。

九重町の町長を招いて、K藤社長を始め幹部が入り
式典と、食事会を開いたら良いのでは・・・

事前にメディアにも知らせ取材してもらう・・・

しかし、あっさり否定され、ぼつとなった。
ぼつになった理由は分からない。
聞く気もしなかった。

オープン当日もそうであるが、しばらく全く予約は入っていなかった。
それもその筈で、何も宣伝していないのだから、予約が入るわけがない。
こういうスタンスでのオープンは初めてであり、
これでいいのであろうか?
とも思ったが、その点についても触れないでおいた。

結局オープンの日は、お昼から皆でご馳走を食べ、記念写真を撮ったりして
過ごした。

しかし、今はしっかりと稼働しており、満室が続くことも珍しくなくなったので、そういった意味ではもの凄い成長であり、進化であると言える。

*  **

7月のある日、お客様から予約の電話がありました。
偶然その電話を私が受けました。
「もしもし、私今成田空港のラウンジから電話しているんですけど、
セブンシーズに載っているそちらの旅館を見て、これは行かなきゃ!
って思ったのね。大晦日から2泊取れます?」

彼女は、プロバンスへ出発する前の時間を使って
電話してくれたのでした。
その後、確認書を送付しまして、私の名刺を同封したことも
あり、今度はご主人の方からメールをいただきました。

メニューのこと、公共交通機関のこと、送迎のことの確認
などです。
詳細な情報をお送りするとともに、なるべく細かく界ASOの
ことをお伝えしました。
例えば、客室にはCD&DVD対応のオーディオがありますので
ソフトをお持ち下さい。またI Podも可能です。
といったようなことです。
そのお客様は、東京在住なのですが、ご主人のお母さんが
北九州にいらっしゃるとのことで、
北九州からJRで熊本まで来て、そこからバスで来ることに
なりました。
チェックインは12月31日で2泊の予約でした。
そのバスが黒川温泉に到着するのが12:07
前日お泊りいただいた宮崎のお客様をお見送りしたかった
のですが11:50の段階でもまだあがってこなかったので
こちらからお土産の焼酎を持っていき、
「この度は2度目のご利用ありがとうございました。私、これから
ちょっと出掛けなくてはならないもので、ご挨拶だけと思いまして・・
それとお土産の焼酎です。」
と、手渡しました。

「いや~ご丁寧に恐縮です。」と、言われてました。
それから急いで黒川温泉へ、
界ASOまでの車中、
私は、オープン間もない時期にご予約をいただいた
お礼を申し上げ、色んな話題になりました。
ご主人は私と同じくらいの年齢にお見受けしました。
奥様はハッキリとズバリ自分の思いを伝える方で
ちょっとといいますか、実はかなりワガママな感じを受けました。
ジコチューでタカビーな感じ・・・とでもいいますか。
こういう方は、対応を一歩間違えると大変なことになるのを
私は長い経験でよく知っています。

別に知りたくも無いですが、ほんとに嫌になるくらい色んな
経験をしましたので・・・よく知っています(笑)。

ご到着が12時30分くらいでしたので、まだお部屋の準備は
出来ていませんでしたが、最初からお昼は界ASOでうどんを
お出しすることになっていました。
お蕎麦は、その日の夜「年越し蕎麦」が出るので
うどんの方がいいかなと、料理長と相談してお客様に
提案しました。
胡麻の入ったうどんはとても美味しかったそうです。
デザートにチェックインの際にお出しする和菓子「荒城の月」
とコーヒーをお出ししました。

奥様が、
「笹川さん、いまのところ全て美味しいですわ!でも、勝負は
ご夕食よね!おほほほほほ・・」


「そ、そうですね!期待していて下さいませ、おほほほほ!」
って言おうかと思いましたが、
おほほほほ は、カットしました。

1日目の夕食は ソムリエのO田さんセレクトの赤ワインも
好みにピッタリ合ったようで「おいしい!」の連発、
「料理も最高!!」って 3人揃ってニコニコです。

おばあちゃんは、しっかりしていて70歳くらいなのかな?って
思ってましたが、実際は84歳だそうです。
ビックリしました。

年越し蕎麦は22:30~23:00に本館でお出ししましたが、
12部屋のうち8部屋のご利用でした。

そのお客様は、ご主人はワインの酔いで気持ち良く眠って
しまい、奥様とおばあちゃんが食べられました。
翌朝の朝食は、先ずは「お屠蘇サービス」その後「お節料理」
ご飯は赤飯、そして「お雑煮」です。
皆さん、とても喜んでくれました。

10:30~正面玄関で餅つきをしました。
最初に私が皆さんに新年のご挨拶をしまして
最初はスタッフでつき始めました。
餅がある程度 つきやすくなったところで
「どなたか参加しませんか?」と、声を掛けますと
皆さん、次から次へ参加してくれました。
そして、とても楽しそうでした。

そんな様子をカメラに納めていたのはササピーでした(笑)。
彼は、自分で司会をやり、自分で挨拶して、自分で写真を
撮っていました。

そして更に、餅つきの最後に仕上げをペッタン・ペッタン
ついていました。
あまりにもへっぴり腰で、格好が決まっていないので
『クスクスクス・・・』って笑いが聞こえてきました。
でも、これは作戦なのです(本当?)
作戦は成功しました。
つき上がったお餅は、館内に運び女性スタッフが割烹着を
着て丸め作業です。
この割烹着が、また皆 妙に決まっているんです。
今でも写真を見るたび笑えます。
お餅の出来上がるのを待っている時間を利用して焼鯛の入った
お酒を振舞いました。
なんと段取りがいいのでしょう!!
きっと、支配人が段取りを考えるのが好きな方なんだと思います。
お餅は一人3個盛り付け、大根おろし、あんこ、きな粉の3種の
味をご用意しました。
皆さん朝食を食べたばかりでしたが、美味しそうに食べて
いらっしゃいました。
宿泊していらっしゃるお客様が一同に会すことは滅多にありません
ので、とても和やかないい雰囲気でした。
あるお客様のアンケートには、次のように書いてありました。
『元旦の餅つきがとても楽しかったです。ついたお餅も色々な味で
美味しくいただきました。今後もまた泊りに来たいです。』
元旦の日は、餅つきのあと6ルームがアウト、残り6ルームは連泊
でした。
私が黒川へ迎えに行ったお客様は連泊だったのですが、
ステイ清掃の確認が中々ハッキリしませんでした。
ようやく2:30過ぎにご主人とおばあちゃんがロビーに上がって
きましたので、
「お出掛けですか?」と聞きますと
「ちょっと陶芸を見に行ってこようかと・・・」
「それでは清掃に入ってもいいでしょうか?」
「いや、女房が寝ているんですが・・・」
「それでは、清掃はどういたしましょうか?」
「夕食の時間にやってもらえませんか?」
これには困りました。
スローな日であれば、スタッフが清掃に入ることも
出来ますが、満室がずっと続いていてスタッフのほとんどが
毎日朝から通し勤務であり、それでも人が足りないような状況・・・
私は次のように申し上げました。
「申し訳ありません。実は清掃は別会社にお願いをしていまして
お昼の時間帯しか出来ないんです。もし、よろしければ 私が
周辺を車でご案内しますが、如何でしょうか?」
お客様は大変喜んでいただき
「それでは女房をたたき起こしてきます!」という展開に
なりました。
これで晴れてお部屋の清掃も出来ます。
大観峰にご案内しましたが、84歳のおばあちゃんもいますので
歩くのはちょっと大変・・・
駐車場から眺めを見ることが出来る場所に案内しました。
「うわぁ~きれい!!すごい!すごい!」と、3人ともに大満足。
帰りの車の中でも
「笹川さんにここまでしてもらって本当にうれしいわ!私達レンタカー
で来ていたとしても、道が分からないし、ポイントも分からないし、
ほんとにありがとうございました。」
って言われ、それは良かったと思っていました。
もう間もなく旅館 という所まで来た時に 奥様が
「ねぇ、ケーキが食べたくなっちゃった!シェタニさんは休みだし、
笹川さん どこか軽くお茶出来るところは無いかしら?」

これは、困りました。ササピーピンチです!
頭の中に『茶のこ』が浮かびました。
これは、福岡から度々お越しいただいている素敵なご夫妻ご推奨の
ティールームで私も何度か前を通ったことがあります。
私は、
「元旦ですのでやっているかどうか分かりませんが、素敵な
お店がありますので、行くだけ行ってみましょう!」と言いました。
「そうしましょう!」って、奥様は大喜びです。
黒川温泉を抜けて、茶のこを目指してまっしぐらです!
あっ、やってました、やっているじゃないですか、茶のこさん!
いやぁ~、良かったです。
私もご相伴にあずかりました。
「なんでも好きなものをどうぞ!」と言われ
私もなんか小腹が空いていたので
ガトーショコラとお抹茶のセットをお願いしました。
おばあちゃんは、白玉とお抹茶、
ご主人はぜんざいとお抹茶、
奥さんは プリンをオーダーしました。
このお店のケーキや甘味、お抹茶 かなりレベル高いです。
渋谷でお茶している気分になりました。
茶のこでは、色んな話題に花が咲き、私はすっかり
気分転換にもなりました。
おばあちゃんは、
「あなたたち、支配人さんをこんなに長い時間引っ張りまわして
今頃旅館では大変な騒ぎになっているかもしれません。
そろそろ行きましょう!」
ご心配はありがたいですが、私がいなくてもたいして問題は
無いと思います・・・

まあ、そんなことを力説する必要もありませんので、
旅館に戻ることにしました。
2日目の夕食も満足いただきました。
「もうお刺身なんて最高でしたわ、おほほほほ!」って感じです。
3日目の朝食に私は、黒川のコンビニで黒川にしか売っていない
飲むヨーグルトを買ってきて出してあげました。
大層喜んでいただきました。
朝食の後、三愛レストハウス10:13発のバスでしたので、
私が三愛までお送りしました。
車中、今まで色んなところに行きましたが、料理がいいと施設がイマイチ、
施設がいいと、料理がイマイチ・・・というパターンが多かったですが、
界ASOに関しては、完璧ですね!これから知り合いをたくさん紹介しますよ!
と、ご主人からのお言葉。
奥様は、「私昨日 界ASOにピッタリの人を思い出したの!その人独身で
熊本なのよ、ねっ、すごいでしょ!おほほほほ。」

もう、すっかり奥様とも打ち解けましたし、
みんな気さくなムードです。
普通、簡単にここまでは持ってこれません。
茶のこでお茶したのが、なんといってもポイントです。
最後まで名刺はいただけませんでしたし、こちらも仕事に
ついてはお尋ねしませんでしたが、インターネットで調べたところ
(メ○ル○ンチ証券 東京支店 資本市場本部長) ○ ○○氏
でした。
な、なるほど・・・海外へも行く機会が多いわけです。
一期一会です。

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ササピー
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