JR九州高速船 浸水隠し②
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JR九州は13日、同日付でJR九州高速船の田中渉・代表取締役社長を同社取締役に降格とし、JR九州の子会社のJR九州エンジニアリング経営企画部長の大羽健司氏を新社長に就任させると発表した。いずれもJR九州からの出向者だ。
田中氏はJR九州長崎支社長などを経て、2023年にJR九州高速船社長に就任していた。JR九州は、田中氏をJR九州高速船の取締役に残した理由について、「国土交通省の監査に対応するため」などと説明している。
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懲戒解雇となったのは、JR九州高速船の前社長、田中渉氏(56)と前運航管理者の柴田康祐氏(61)、前安全統括管理者の小川仁氏(57)の取締役3人。
ガバナンス(企業統治)の機能不全が明らかになったJR九州では、古宮社長が報酬の月額30%(2か月)を、グループ会社を統括する松下琢磨・取締役常務執行役員(57)が月額10%(2か月)を自主返納する。
ほかにも責任が認められる両社の社員を社内規定に基づき処分したとしているが、人数や処分内容は明らかにしなかった。ただ、浸水を検知する警報センサーを上部に移す工作に関与した運航管理者代行については、26日に記者会見した古宮社長は「それにふさわしい処分をした」と説明した。
また、古宮社長は、8月13日以降の運休や、予約がキャンセルとなった客に支払った補償など、この問題でJR九州高速船が負った損害の賠償を、田中氏ら幹部3人に求める訴訟を起こす方針も明らかにした。
古宮社長は会見で、「株主・投資家をはじめ、みなさまに深くおわびするとともに再発防止に努める」と述べた。自主返納額は自ら決めたとし、「妥当」との考えを示したが、株主らの理解を得られるかどうかは「わからない」と語った。 JR九州グループの社会的信用を著しく損なう結果となり、社長を辞職する考えはなかったのかを問われると「自分のことについては、今回発表している分を考えていたのでそれ以上もそれ以下もない」と述べた。
JR九州が設置した第三者委員会の委員長を務め、調査報告書をまとめた尾崎恒康弁護士も会見に同席し、「安全の真の意味の理解が足りていなかった」などと話した。
ガバナンスに詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「事案の悪質性や田中氏を社長に選任したことを踏まえると、JR九州本体の古宮社長ら取締役2人の報酬一部返納2か月という対応は甘い。加えて、子会社の管理に直接関係するJR九州の監査等委員らが責任をとっていない。子会社幹部を解雇した『とかげのしっぽ切り』と思われても致し方ない」と指摘した。
その上で「安全意識の醸成は目に見えず、もし運航が再開できたとしても、以前のように利用者が戻るかは分からない。来年6月の株主総会ではJR九州の経営責任が改めて問われることになるだろう」と述べた。
浸水隠蔽問題を巡っては、福岡海上保安部による捜査も続いている。
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【ササピー】
JR九州は、JR九州高速船へ出向中の田中社長を、一旦取締役に降格した後、今回懲戒解雇にしたという流れのようである。
一方で本社社長や関連幹部は、期間限定の報酬の一部返納のみという、、、
なにそれ?
と思わざるを得ない。
青山学院大の八田教授が、
「事案の悪質性や田中氏を社長に選任したことを踏まえると、JR九州本体の古宮社長ら取締役2人の報酬一部返納2か月という対応は甘い。加えて、子会社の管理に直接関係するJR九州の監査等委員らが責任をとっていない。子会社幹部を解雇した『とかげのしっぽ切り』と思われても致し方ない」と指摘した。
私もまさにそう思う。
前にも書いたが、
JR九州は、鉄道、高速船、ホテルなど「安全第一」が必須な事業を展開しながら、内実がこれでは「信用は地に落ちた」と言わざるを得ない。