その時代とその時の気持ち。
商品企画をしていると「時代の気持ち」みたいなものにとても敏感になります。
そして少しずつ人や世の中は動いているんだなーとも感じます。
少し長くなりますが、この10年のことを企画的な感想と共に掘り起こして記していこうと思います。
2008年 リーマンショック
2009年 ファストファッション旋風・低価格ブーム
2010年 低価格商品との差別化・機能性・付加価値
2011年 震災・価値ある商品の提案・ブランド原点回帰
2012年 ライフスタイル提案・洋服カフェ雑貨複合提案
2013年 ブランド再構築
2014年 ノームコア・ベーシックブーム
2015年 ハンドメイドブーム
2016年 Reuse
2017年 インスタ映え
これから?
ーーーーー 2008年 リーマンショック
「セールで最終価格にすれば商品はハケる」
この常識がひっくり返った年。50%オフになろうが70%オフになろうが、全く売れない。
それまでは処分価格にすると「何かに役立つかな?」とぐらいに思い大して欲しくなくてもとりあえず買っておこう、というお客さんが多かったのが、セールの最終価格にしても売れなくなったのがこの年。
ーーーーー 2009年 ファストファッション旋風・低価格ブーム
「FOREVER 21」の日本参入を始め「H&;M」など海外の低価格ブランドが軒並み参入してブームになった年。
当時100%日本生産のブランドを担当していたのですが、「安くないと売れない」と日本から中国生産の商品の割合を拡大したのを覚えています。
価格をチェックしてから商品を見るお客さんが多く、価格が高いと見てもらえなかったので「品質よりも価格をまず下げること」がどのブランドでも最重要ポイントでした。
ーーーーー 2010年 低価格商品との差別化・機能性・付加価値
安い商品が溢れ出して街の商品郡が均一化された結果、「どこかで付加価値をつけないと選ばれない」とブランドの「差別化」が唱えられた年でした。
2WAY、3WAYの靴やバッグやアウターがたくさんでてきたり、機能性をアピールした商品が溢れていました。
そんな企画者たちの努力をよそに、安い商品を満喫したお客さんたちは「安くても必要ないものはやっぱり要らないよね」と悟ってしまった感がありました。
ーーーーー 2011年 震災・価値ある商品の提案・ブランド原点回帰
3月に大震災が起きて自粛ムードを過ぎると「必要な物って何だろう」と誰もが思うようになった年でした。
この年に売れた靴はスニーカー。パンプスの底をスニーカー仕様にしたり、持ち運びやすい「ポケッタブル バレエシューズ」など震災時にも動きやすい靴が売れました。
その反面、低価格トレンドを抜け出すべく「メイド イン ジャパン」を押し出したり「ブランドの原点回帰」をアピールしたり『ブランディング』について策を練っているブランドが多かったです。
ーーーーー 2012年 ライフスタイル提案・洋服カフェ雑貨複合提案
この年はどこのブランドもショップにカフェが併設されたり、植物や雑貨がおいてあったり「ライフスタイル」という言葉が踊りに踊った年でした。
実感としては「トレンド」が本格的になくなった年でもあると思います。
業界では企画に入る前に欧州のファッションショーから読み解く「トレンドセミナー」なるものを受講するところが大半なのですが、これが本格的に役に立たなくなった感がありました。
「トレンドよりも自分のスタイルが大事よね!」そんな世の中の雰囲気でした。
ーーーーー 2013年 ブランド再構築
大手ブランドが迷走を続けている中で、「ルイヴィトン」「エルメス」「シャネル」などの老舗グジュアリーブランドは好調。
「安くすましたい物」と「しっかりお金を払っても欲しい物」を分別するのが当たり前になってきて、芸能人やモデルさんでも「H&M」や「ユニクロ」と「ラグジュアリーブランド」を混ぜたスタイリングが一般的になってきた。
なんとか「安くすましたい」ブランドから抜け出すべく奮闘していた企業が大半だった年。
ーーーーー 10年は長いねー! まだまだ続きますよー!ーーーーー
ーーーーー 2014年 ノームコア・ベーシックブーム
「ノームコア」個人的な最後のトレンドワードかも。
スティーブ・ジョブズの黒タートル+ジーンズのような「究極の普通スタイル」。雑誌では「母から受け継いだ〇〇」「10年間の愛用服」のような長く使っていけるベーシックな物の特集が組まれたり、定番が絶賛された年。
ギャル雑誌からミセス雑誌まで同じベーシックスタイリングで「大丈夫か!?」と書店でツッコんでいたのも懐かしい思い出。
ーーーーー 2015年 ハンドメイドブーム
minne ・creema・iichiなどのハンドメイドサイトが盛り上がりだした年。
個人的にはここぐらいから商品=大手企業製品という図式から反れてきたと思う。
大量生産のマス消費を狙って作られた均一的な企業商品に消費者が飽きてきて、背景のあるもの、人とは違う自分だけが持っているものを求める人が多くなってきた印象。
個人作家、地方の企業、下請けメーカーなどがネットの普及によって本格的に大手企業と肩を並べだした。
ーーーーー 2016年 Reuse
メルカリ・zozousedなどの「Reuse」が一般的になった年。
「古着屋さん」のようなこだわりのモノではなく、一般的な服を売り買いする経済圏が定着した印象。
新品でなくても安い方がいいよね、要らない服は売る、が今や当たり前。
ーーーーー 2017年 インスタ映え
充実した日常が一番!
友達と囲む美味しいご飯・旅行・フェス、ステキな日常・体験にお金を払いたい。装いはUNIQLOやReuseで十分よね。
ーーーーーーこれから?
10年前まではトレンドの影響が絶大で、アパレル商品企画は
欧州コレクションが開かれる
→ デザイナーがセミナーでトレンドをインプット・新商品企画
→ 同じ流れ(トレンド)に沿った商品が街に溢れ、雑誌で特集が組まれる
→ マスに売れる!
この図式でずーときたんですね。
でもそれはもうキレイに崩れましたよね。
個人的には今の時代にマスに売れるものを企画するのは難しいのではないでしょうか。
じゃあ、どんなモノを企画したらいいんだろう?というと、個人的に好きなもの、思い入れの強いものをこだわって狭く深く追求して作っていくしかないと思います。
新しいモノを買うことのハードルが高くなった今、お客さんはしっかり見て考えてから必要なものを購入します。
その商品が自分たちに寄り添って企画されたか、そうでないのかはすぐに見破られます。
企業デザイナーが振り分けられたブランドを担当して、自分は対象ではない商品をシーズンごとに数十型も作り続ける商品企画は今の時代に沿いませんよね。
厳しい時代ではあるけれど、個人や小さな企業がこだわったモノで世の中が満たされるのはいい時代ではないかな、と想像します。
そんなこんなで今の私は個人でモノ作りをしています。
たくさんの人に私のこだわりが届きますよーに!
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