【初作品】真実は闇の中? 第二話
私は配信者になりたての頃、当時一番人気のあった、カイヤという配信者にディスコードのチャットで私だけに見える設定で「お前は有名になれない」と言われたのだ。そこから私は本気で活動を始めた。最初の頃は一人増えるだけでうれしかったファンも、増えていくごとにそれはただの数字にしか見えなくなった。あの子を超えなきゃ、というそんな言葉だけが私の脳裏に浮かんだ。底辺の時には感じもしなかった心の余裕にどこか安心さえ感じた。
最近、私のTwitterに一日何百件ものDMが届く。既読マークがつく設定にはしていないが、私は暇が出来るとファンからのDMを読んでいた。〔この前所見だったんですけど見ている側も楽しめるような配信スタイルに惹かれました。推させてもらいます。〕と言った、DMや、〔おはよう‼今日は晴れだね。私は渋谷に行って服を買います‼ひなちゃんは何するのかな?〕と言った報告だったり、多種多様だった。私の中で印象に残っているのは「マリーゴールド」というアカウントから送られてくるDMだった。毎日DMしてくれて、そのたびに赤い薔薇が一本増えた写真も送られてくるのだ。名前がマリーゴールドなら写真もマリーゴールドにしろよ‼と、面白くて覚えている。まあ、実はそういう風に面白くて覚えているファンは何人かいるのだ。
最近と関係して言うのなら、新人として出てきた若い子がどんどんやめている。これもまたカイヤのせいなのだろうか。許せない、底辺の子達を蹴落として何が楽しいのだろうか。そう思った私は勢い任せにカイヤに「新人を脅かすようなチャットはもう送らないで欲しいです。」とカイヤにチャットをした。カイヤの返事は早かった。
「確かに君に対してのチャットは悪意のある物でした。君があまりにも売れそうだったから先に落としときたかったのは事実です。すいません。そして今も一部の新人の子達にマイナスな意味のチャットを送っているのも確かです。だけど今送っている子達に対しては悪意があってやっているのではないのです。詳しく話したいので直接リアルで会って話をしたいです。」
会って話したいって何?そもそも脅迫のチャットは何があっても送ってはいけないだろ?そんな思いが込み上げて行く中、私に喧嘩を売った人と話したかったという理由だけでリアルで会うことにした。ただ、やっぱり最初からリアルで会おうと言う人は信用にならない。私は念のため、護身用に少しばかりの武器を持って家を出た。
根暗だった私がみるみる変わっていく。外に出ようなんてこれまでの私なら思いもしなかったことだ。当時推していたVTuberに私もなっていると考えると私ではないみたいだ。
―――――そんなことあるはずないのに。
私は、私だ。考えが変わっただけ。大人になったんだ。そう自分に言い聞かせた。