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指南依頼が舞い込んだ 栄光なきクリエイターたち #008
前回の記事
noteを見ていると不思議に思う。あるクリエイターには多くのフォロワーがついているのに、ほとんどフォローもされずに淡々と投稿を続けるクリエイターがいる。フォロワーが少ないクリエイターが書く記事はつまらないのか?
断じて否。
彼らにとっては、他人からどう思われるかなんてどうでもいいのだ。読み手を意識していないから、ややもすると素っ気なかったり、癖が強すぎたりもする。しかし、彼らが書く記事には、ブレない強さや真似ができない自由さがある。
そんな栄光なきクリエイターたちをそっと追ってみよう。わたくし御丹珍の独断によって選ぶ。原則として1記事につき1クリエイターのみを採り上げる。事前に記事で紹介する承諾を得るべきか迷ったが、そもそもフォロワーがいてもいなくても気にしない方々なので、私も思うままに紹介させてもらう。当該クリエイターの方には、この場にてお礼を申し上げます。(文中敬称略)
今回は、拙稿(つぶやき)を受けて、自分の記事のどこを直せば良くなるかを教えてほしいという依頼に応じる。
のん
ああ、楽しいなぁ!他人のどこを直すがいいかを考えて、口を挟むってのは至福の時だわ。ついでに、おためごかしな説教までできるんだから、もう死んでもいいかな。
私が上のつぶやきを投稿すると、のんからこんなコメントが来た。
先ほど記事にいいねくださりありがとうございます🙇嬉しいです😭
どこを直せばもっと良くなるのか思案するのも楽しみと仰っておられたので、もし感じることなどあればマイナスな意見も大歓迎ですし、プラスもあれば教えてもらえると嬉しいです🙇
初見で不躾なご依頼と感じさせてしまっておりましたらすみません。
能年玲奈も、芸能活動に本名を使わせてもらえなかったり、noteの書き方に悩んだり、いろいろ大変なんだなと溜息をつく。この瞬間にも読者から「あーあ、どうせ書くと思った」という声が上がっているのは承知している。しかし、私はくだらないことほど書かずにおれない病気なのだ。
それはさておき、リクエストにお応えしてマイナスな意見も含めて書く。
「あ、わたし今全然自己理解足りてないんだわ」
って。
心配しなくても自己理解が足りている者など実際にはいない。いるように見えるとしたら、彼が模範回答を知っているだけなのだ。自己理解が足りていると自己評価する者は、実のところはメタ認知ができていない。大切なのは自己理解ができていないと気づくことである。わざわざ御丹珍に指南を申し出る心意気が気に入った。バッサリと斬って進ぜよう。
結論から言えば、のんの文章には特に悪い点がない。記事中の主張に破綻もなくストレスなく読める。したがって、何をどうアドバイスしたら良いのか随分と悩んだ。言っておくが、頼まれてもいないアドバイスを当シリーズで敢行し、無礼にも放言してきた私が、指南を依頼してきたのんに遠慮するはずがない。
しかし、投稿前の推敲に入ったところで、一つ直すべき点を見つけた。Web記事としては一文が長すぎる。文章に苦手意識がない人に多く見られる落とし穴だ。モニターやスマホ画面では、長いセンテンスは好まれないので、長くなってしまったら二つに分けよう。
のんの一連の投稿には、悪い点は少ないが、目を瞠るような特徴がないようにも感じた。残念ながら今のままでは、のんが書く記事なら読んでみようという読者は、そんなに多くは現れないだろう。さて、どうしたものか?
主張を一点に絞るべし
自身はソロ活を好むのに、一人寝が怖くてずっと一人旅を避けていたというのんだが、初めての一人旅を思いのほかに満喫できたそうな。
ここで、私から質問がある。一人で寝たくないのにソロ活が好きなら、これまでに日帰りや0泊2日の弾丸行程は検討しなかったのか?この点を詳しく書けば面白くなるはずだ。まあ、いい。そのうち頼んだよ。
読者に向けて声を大にして言いたい点を絞り込むことが、のんの記事に欠けている。私ならば、下に引用する内容を見出しと本文冒頭に持ってくる。
まず、高速バスが良かった。
大阪から出発する高速バスはWILLER Expressを利用したけど、思ったより快適!
4列シートのリラックスで女性専用席。
初め席に着いたときは、狭そう、、って思ったけど、案外そうでもなかった。
しかも、一人寝が怖い人にとって、一人になれない夜行バスは言い知れぬ孤独が襲うこともないのだ。高速バスは時にホテル代まで節約すらできる一人旅の心強い味方だ。
「一人旅デビューには高速バスがおすすめ」
「初めての一人旅にアレを利用してみたら最高だった」(有料記事向きか)
美味しかった居酒屋の話を書くのもいい。しかし、タイトルやツカミに一番言いたいことを持ってくれば、なぜその記事を書くことにしたのか自然に伝わるものだ。
のんの元記事の語り口は、一人旅のノウハウを伝えるものではなく、旅日記のようなものだから、「楽しみ方」としたタイトルと記事の方向性が合致していないのだ。インターネットに公開された記事は、クリックされなければ読んでもらえないし、タイトルと内容が不一致だとリピートされない宿命を負うんだよ。栄光なきクリエイターたちは、例外なくタイトルの選定とツカミの熟考を軽視している。
備忘録もしくは思考整理として書いたものを、ついでに公開しているだけだとの反論が聞こえる。読んでもらわなくてもいいと本気で思っている方には、公開前の下書き保存に留めておくことをお勧めする。
せっかくだから、自分が書いた文章を、原稿ではなく記事として読んでみたいって?非公開のままでもプレビュー表示で読めるじゃん。
問えよさらば答えられん
のんが思い切って御丹珍にコメントしてみなければ、私からズケズケとアドバイスすることはなかったろう。
もし、記事にコメントが1件も寄せられないとしても、外に向かって思いを問いかけることで、何かしらの気づきが得られるはずだ。
しかし惜しいかな、のんの文章には読者との対話がない。疑問形にする必要はないが、書いている最中にも読者がいることを想定した構成と文体にする必要がある。読者が「自分に向けて書かれた記事」と思ってくれたらシメたものである。
御丹珍のnoteポリシー
指南なんかしちゃったついでに、さらに調子に乗って手前味噌を並べる。
私はnoteにおいて、読書感想文の類を書くつもりはない。日記を書くつもりもない。基本的に記事を書くために私生活を開示したくないのである。だから、他人を講評するほうが気が楽でもある。
読書を好むが、感想文とやらは出された課題であって、一般的には読み物にならないと考えている。同様に、何月何日にどこそこに行ってきました、なんてレビューする気はない。日記は言うまでもなく、今日は誰に会ったなどと、報告文書を書く気もない。
出不精なのもあるが、個人的旅行記は書かない。観光案内は行った所をすべて書くことはせずに、大津など地域を絞って特集する。本当に薦めたい所だけ書きたいからだ。広域について書く場合は、自家用車を所有しているのに駅から歩いて行ける所しか書かない。なぜなら、駅近だけを特集する記事は探しても見当たらないが、確実に需要が見込めるからだ。音楽なら気軽に聴ける約2分間の曲しか紹介しない。どれも取り上げる範囲が限定されるので、同一コンセプトで競合しない。
ましてや、人目に付かないクリエイターばかりを立て続けに紹介するのは、おそらく私だけだ。おかげさまで当シリーズは驚くほどの好評を博している。
クリエイター紹介をしている方は他にもいるが、私は放っておいても人気が出るであろうクリエイターについては、敢えて記事しないことにしている。その時点において力量十分で人目につくなら、わざわざ私が紹介する必要がないからである。
多くの方に読んでいただけるようになったのも、御丹珍のnoteは何について書くつもりなのか、明確に伝わっているからだと考えている。コンセプト別に細分化して執筆が滞りがちなのが難点だな。細かく分けたらすぐにネタが尽きるかといえば、逆にテーマを絞れば絞るほど書くべきことがはっきりするんだよ。別のことが書きたくなったら、新しくシリーズを始めたらいいんだからね。中には、行った所や食べた物について、 手当り次第に書いている人がいるが、読み物シリーズとしてはどうしても冗長かつ散漫になってしまう。
先程は主張を一点に絞れと言ったが、記事を立てるテーマもできる限り小さく絞るほうが、書くことを見つけやすい。自分の胸の内を書くにも、感じたことをすべて書こうとせずに、例えば鼻が低いコンプレックスがあるなら、鼻のことだけを突き詰めて書いたほうが面白いし、今後のネタに困らないものだ。
ちなみに、執筆するシリーズによって文体を変えている。ですます調とである調と、読者を想定して使い分けているつもりだ。
記事を何本か読んだところ、ややもするとのんは、一本の記事に多くを託そうと詰め込みすぎるきらいがある。言いたいことを小出しにしていくことで、のんの色が鮮やかに浮かび上がるよ。
良い点を3つ
もちろん、のんには良い点もいくつかある。
同世代の水準を明らかに上回る文章力
若年層によく見られる稚拙なSNS短文の悪影響をほとんど受けていない。文法も正確性が高くて痛痒を感じずに読める。
地に足が着いた基本姿勢
社会情勢や周囲の声に浮き足立つことなく、冷静に洞察していることが窺える。私は内省的な記事を評価する。
記事内に過去記事を貼っていたこと
過去記事を自分の記事内に貼って振り返らないと、なかなか読んでもらえない。記事が長い期間読まれることで定評のあるnoteでも、記事の賞味期限は1週間もないだろう。よく以前に書いた記事に触れているのに、引用リンクも貼らないし記事も埋め込まない人がいる。わざわざ過去記事を探す読者などまずいないことを認識すべきだ。今後も鬱陶しがられるほどに、ビシバシ貼りたまえ。
最後に、細かいことだが、、、
改行する度に余白を何行か空けているが、その効果を考えているか?
詰めろと言いたいのではない。
空けない場合、1行空ける場合、2行以上空ける場合、いずれも明確な意図をもって使い分けるべきだ。たまに、段落の代わりに何行も空白にする人を見るが、読みやすいかわりにスカスカな印象を受ける。
改行するにせよしないにせよ、余白を取るにせよ、読み手にどんな印象を与えるかを考えたうえで行うべきである。
のん、礼には及ばんよ。私は君の100倍は楽しませてもらったから、礼を言うのはこっちのほうだ。
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