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その聞き方じゃつまらんのだよ 栄光なきクリエイターたち #007
前回の記事
noteを見ていると不思議に思う。あるクリエイターには多くのフォロワーがついているのに、ほとんどフォローもされずに淡々と投稿を続けるクリエイターがいる。フォロワーが少ないクリエイターが書く記事はつまらないのか?
断じて否。
彼らにとっては、他人からどう思われるかなんてどうでもいいのだ。読み手を意識していないから、ややもすると素っ気なかったり、癖が強すぎたりもする。しかし、彼らが書く記事には、ブレない強さや真似ができない自由さがある。
そんな栄光なきクリエイターたちをそっと追ってみよう。わたくし御丹珍の独断によって選ぶ。原則として1記事につき1クリエイターのみを採り上げる。事前に記事で紹介する承諾を得るべきか迷ったが、そもそもフォロワーがいてもいなくても気にしない方々なので、私も思うままに紹介させてもらう。当該クリエイターの方には、この場にてお礼を申し上げます。(文中敬称略)
今回は、note執筆の目的となる、こども食堂をインタビュー取材する記事シリーズを本格的に開始せんと意気込んでいる若者を紹介する。自己紹介を兼ねたこども食堂立ち上げ体験記を書いたばかりの彼に、ウザったらしい上から目線のアドバイスを送る。
てけ
上級心理カウンセラーの資格を持ち、大学を卒業したてなのに、既にこども食堂まで立ち上げたという。全国のこども食堂を訪ねてインタビューするつもりらしい。社会活動家の卵だな。なかなか真似ができないことだ。私はてけの思いに応えるべく、またしてもおせっかいな忠告をすべく筆を執った!ちなみにてけは、コメントを送った私をフォローしてくれたので、いつもどおりに忌憚なく書いちゃうよ。
こども食堂・無料塾
てけの記事を読めばわかる。近頃の若いもんなどというのはジジババの自己正当化で棚上げだ。近頃の若いもんは昔よりも利己的な意識が薄まり、真剣に公共福祉を考える者が増えているように思う。
てけはその代表選手だ。
なんと感心な若者なのか。気に入った!近うまいれ👸👉🎁
皆さんこんにちは!てけです!
私は2022年に八王子市でこども食堂を立ち上げました。
最初の投稿は僭越ながら私こども食堂との出会にについて3本立てでお伝えさせていただきます!
気軽にお読みください!
こども食堂だけではない。「八王子つばめ塾」を皮切りに、授業料を徴収せず講師が志願制の無料塾にも取り組んでいる地域福祉に取り組むエラい人達をインタビューして、記事にしようとnoteを始めたらしい。傾聴のスキルも高いと見えるし、その意気込みは大変に素晴らしい。応援するぞ。
だがしかーし、ちょっと待った。意義深い素材に反して、てけがこれからやろうとしている取材執筆方法は、あくびが出て熟睡させてしまうほどつまらないのだ。本格的に書き始める前の今なら、すぐに練り直すことができるぞ。
つまらない取材記事のチャンピオンはインタビュー形式
涙が出るほど隣人愛に溢れるてけだが、おせっかい極まりない私が気になったのは、「インタビューしてみた!~その思い、聞かせてください~」という、熱い想いがひしひしと伝わるものの、方向性が残念なクリエイター名であった。それでもてけが書いた2本の記事が面白かったのは、インタビュー形式ではなく、てけ本人による独白だからである。もしこれを私が、てけにインタビューして記事にしてもちっとも面白くないだろう。
インタビュー形式は最もポピュラーな取材手法でもあるので、あの人の話を聞きたいと思い立ってインタビューに出向こうと考えるのは無理もない。しかし、誰もが思いつくだけに記事にしたら余計につまらないのだ。しかも、個人として記事を書くてけには、インタビュー形式を採る必然性がない。
てけが本当に書きたいのは、現場における生の声のはずでインタビュー記事ではないはずだ。ドキュメンタリーと相性が悪いのは、お定まりの一問一答形式ね。
─ はじめまして、てけと申します。早速ですが、御丹珍さんの簡単なプロフィールと、「栄光なきクリエイターたち」のシリーズを執筆したきっかけをお聞かせ願えますか?
御丹珍:こちらこそよろしくお願いします。わたくしおたんちんは愛知県在住の中年男で、現職はセールスマネジャーです。noteを読んでいて、フォロワーが少ないクリエイターの記事はつまらないのではなく、自己アピールやコミュニケーションに消極的なだけなのに気づきました。そんな目立たないクリエイター達を見つけ出して、記事にして紹介することにしました。
上の妄想インタビューを続けて読みたいと思うか?一問一答形式が合うのは、FAQなど初歩的な心得を説明したり、読み手が元から関心を寄せていた人物に聞く場合である。
私がこの記事を敬称略にして、今日知り合ったばかりなのにこんな軽口を叩いているのは「てけさんは大学を卒業してすぐに子ども食堂を立ち上げた志が高い若者です。」なんて調子で書いても、死ぬほどクソつまらんし、てけの人柄に思いを馳せることなんてできんからなんよ。
まるで独りでに語られたような「聞き書き」
では、どんな取材執筆形式がいいのか?
ズバリ「聞き書き」だ。じかに長時間面談できることが条件になるが、ただ質問して答えてもらうのではなく、語り手が独りでに話しているかのようにまとめる手法だ。聞き書きはオーラル・ヒストリーを将来に残すために、最も必要とされるノウハウではないだろうか。
渋沢栄一の曾孫である渋沢寿一が、実行委員長として聞き書き甲子園を主催している。聞き書きは持続可能な社会を作るために欠かせない知恵を継承するツールである。
花香(民宿の名称)を続けてこれた原動力はお客さん。お客さんが来てくれんと終わりだもんでね。私はこの地域の人たちをすごく大事にしてる。民宿を始めたころから、「花香に行ってみ」って地域の人から聞いて来てくれたっていうお客さんの声があって。これはやっぱり、地域の人たちを大事にしないと、お客さんができないなって思った。そいで、応援してくれる人たちの言葉を信じて、頑張らなきゃって思う。もし、生まれ変わっても花香をやってみたいと思う。もっとほかにも、やりたいこともあるけど、できないでいいから、生まれ変わっても、みなさんに可愛がられたかなって感じるし、この仕事が好きだから。それが一番良かった。名古屋の方行ってたから、そっちで結婚して、戻ってこなきゃこんなとこにはいなかったかもしれんなって思うけどね(笑)。だから、ここに備わった人生だなって思う。何もできないけど、お客さんだけは大事にしようと、なんとかやってる。
な、語り口が自然で、インタビューよりも遥かに読み応えがあるだろ?しかも、この話を聞き出したのは、民宿の老女将とは何の縁もゆかりもなかったごく普通の女子高生なんだ。
聞き書きの主な担い手は若者である。
日本一の聞き書き名人塩野米松
作家の塩野米松は、聞き書きの名著を何冊も綴ってきた。聞き書きの極意をここに述べている。
まずは塩野が会話のうちの半分は話し、どうでもいい話を交えながら打ち解け、一生分すべてを語ってもらうという。しかし、原稿には塩野の語りは一切書かれない。だからこそ語り手の言葉が生き生きと胸に沁みるのだ。
質問を準備して型通りに聞くインタビューとは違って、カウンセリングで身につけた傾聴は聞き書きでこそ生きるのではないか。
感心なてけは、子供にも優しい眼差しを向ける。
そのような磨かれずにこぼれ落ちていく可能性の原石は、もしかしたら磨いたら磨けばダイヤモンドだったりするかも知れません。
将来社会を変え、世界を変えるかも知れません。
私もまさに磨かれずにこぼれ落ちそうな、安易にインタビューをしようとしていたてけを見つけたところだ。中身があっても伝え方一つで、反響は全く違ってくるものだよ。noteでは特にね。
あなたも見つけよう。知られざる栄光なきクリエイターを。
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