「夫のちんぽが入らない」を読んで
私の地元が仙台なので年末年始は仙台で過ごしました。帰省すると必ず蔦屋(TSUTAYA)に行きます。
ここの蔦屋はタリーズコーヒーと繋がっている大きめな店舗です。私はここの空間や本の配置が好きなので、特に決まっていない本を買いに行きます。
今回もいつものように適当に5冊ほどの文庫本や単行本を選んでよし、もう十分かなって思った時に目に入ったのが「夫のちんぽが入らない」という驚きのタイトルの小説でした。
え、普通の小説一覧の中にこんなものが?と好奇心で手に取ってみて、帯や裏表紙を読むと、エロ小説(そんなものあるのか知らないが)ではなく普通の小説らしいことはわかりました。見開き1ページ目を立ち読みしてみると
何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。
この部分を読んで即買うことにしました。
読み進めていくと、心から笑うことがあります。普通に声に出して何回か笑いました。その現象だけではなく、その現象を表現する文章がまた面白さを高めています。
この小説の面白さは、一瞬声に出して笑ってしまったと思ったら次の文章は非常に真剣な話になることが度々あることです。このギャップがまたリアルさを引き立たせているように感じます。割と海外ドラマとかはこのように、真剣な話をしている中で平気で冗談を突っ込んでくることがありますよね。
タイトルの通り、性の悩みについての話がありますが、それに限らず2人の男女の人生、特に女性について話が進みます。しかも男女ともに教員になるので、教員免許を取得した私が、教師としての話を読むと共感できることが多々あってまた入り込んでいきました。
私は最近あまり小説は読んでいなかったので久しぶりに読みましたが、表現に感激したのは初めてかもしれません。例えば、女性が大学入学後に間も無くして恋人ができた時に以下のように表現していました。
住民票を移すよりも先に恋人ができた。
住民票のことをあえて出すことで、いかにすぐ恋人ができたかが違和感なく伝わってきます。大学入学後に一人暮らししていた私だから尚更その表現がしっくりくるのです。
著者も最後に本小説に関して批判や中傷まであると述べており、確かにAmazonのレビューをみると、気持ち悪くなったや意味がわからないといった意見があります。彼らの意見の共通点として自身で理解できないことが納得できない点です。そもそも彼らは小説に対する姿勢が誤っている気がします。
とりあえず大学時は一人暮らしをしていて、学校教育に関わっていて、恋人がいる人なら間違いなくどハマりするのではないでしょうか。私がそうなので笑。
小説は読み手の経験によって捉え方が変わってきます。小さい頃に読んだ時と今読むと違う考えがわくものがありますが、それも経験の違いによるものです。経験が異なって、作品の世界を想像できないことを"納得できない"と捉えるはナンセンスです。
私はたまたま、見かけたから本書の存在を知ることができました。なぜ今まで知らなかったのだろうかと思うほど、読む価値のある小説だと思います。ぜひこのnoteを読んだ方も読んでみてください。