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2014年12月の記事一覧
ハイファイ・ゴースト(2/2)
物心つくまえから、幽霊は身近な存在だった。
生きるために必要な栄養として、なくてはならない存在。
乳幼児のときにどうしていたのかといえば、口移しで与えられていたというのだから徹底している。
本当になくてはならないのか、絶食ならぬ絶吸を試してみたこともある。けれど結果は歴然としていた。体重はみるみる減っていくし、体力も落ちていく。
つまり私の家系は人間じゃないのでは、などと父に問い
ハイファイ・ゴースト(1/2)
世間はクリスマスムード一色、と見せかけて中はどろどろに混じった廃液みたいなものかもしれないが、少なくとも表面的には真っ白なので安全性は保たれている、ように思える。
発覚していない不祥事のような、渾身の白さ。
おれがそんなふうに俯瞰というか腐感(という言葉は多分ないが今作った)して物事を見るようになったのは、友人の長谷川カズカという女のせいである。
こいつが見る世界を通しておれの世界は
雪を踏む(短編小説/1015字)
扉の向こうは雪景色だった。
凍える深夜の末端を、照明が青白く染めている。街の音がその色に閉じ込められてしまったみたいに、静か。
靴はただのスニーカーだったけれど、気にせず一歩、白へ踏み入れる。
想像の外から音に触られて、肌がざわついた。
思わず足元を確かめて、何食わぬ顔の静寂を見つめてしまう。
とても奇妙な音だった。
箱の中をもう一度覗くように、おそるおそる、ゆっくりと、