【#読物語:本】「スウィンダラーハウス」(作:根本聡一郎)
この頃世間にはやるもの。夜討ち、強盗、偽求人――。
「闇バイト×特殊詐欺×社会問題」を、センセーショナルかつ克明に描いた小説が、『スウィンダラーハウス』だ。
フードデリバリーの仕事で生計を立てる青年《アオイ》は、配達先で意識を失い、目が覚めると見知らぬ5人とともに脱出不能な「家」に閉じ込められていた。そこで、正体不明の黒幕から画面越しに命じられるのが、いわゆる特殊詐欺。黒幕いわく、「詐欺で1億円稼ぐまで、この家からは出られない」――。
黒幕による“ビジネスプラン”の解説と、わかりやすいマニュアルやアプリ、そしてこの仕事が“社会正義”であるとの布教により、もともとこのような仕事に前向きであった他のメンバーに引きずられ、彼は用意された名簿の高齢者に電話をかけ始める。
精密な取材から構成された、「匿名・流動型犯罪グループ」による“ビジネス”の内幕が描き出される。これほどの巧妙さでは、あなたの家族が金を巻き上げられるのも時間の問題、と思わざるを得ないだろう。
物語が進むうちに、6人のメンバーそれぞれの、ここに至るまでの過去やこのような仕事を求めた動機が語られる。そして、黒幕側がこのような仕掛けを編み出してまで犯行に及んだ理由も……。
この登場人物たちに、果たして作者はどんな結末を用意したのか。そして、1億円の行方は……?
これは実写化間違いなし!だまされたと思って、読んでほしい。
(2024-12-11 山形新聞)