できない理由を並べる人達。
自分で限界を決め付けない。
「不労所得が欲しい」同僚との会話で何か面白そうな銘柄がないかを私に聞く時の枕詞で、本気で不労所得で早期退職をしようとしている私とは違い、働きたくないでござるを言い換えただけの愚痴に近い。
きっと以前にメディアが早期リタイアやFIREに関する話題を取り上げて、資産所得だけで働かなくても食べていける世界を知ってしまった影響だろう。
話を深掘りしても、特段具体的な目標や計画があるわけでもなく、漠然と世界が平和だと良いねレベルの不労所得が欲しいでは、「どうせ薄給には無理だ」にも似たメタファーすら感じてしまう。
似たような境遇で既にそこそこの金融資産を築いている私からすれは、メンタルブロックによって自分自身で限界を決め付けてしまっている同僚とは、金融資産への向き合い方に対してどうにも温度差がある。
予算が数万円程度で面白そうな銘柄を紹介して欲しい。的なニュアンスで私に尋ねられたところで、それ位の資金で一発逆転を狙う気なら、宝くじと大差ない博打でしかなく、とても運用とは言い難いし、ハイリスク覚悟なら他人の意見を参考にするべきではないと内心思いながら、無難なETFやインデックスファンドの類を紹介する。
因みに同僚に資産総額は明かしていないが、会計の知識が豊富だと思われているためか、全面的に信頼されているため、性格の悪い私はこれを利用しない手はないと、カモになって貰う時期を、マスク越しに舌を舐めずりながら今か今かと待ち侘びているが、結局いざという時が来ないまま別れの時が来て、結果的に良い奴だと誤解されたまま終わることが往々にしてある。人を信じることほど危ないものはない。
やったことがないのに、どうして分かる?
それはさておき、資本主義社会の構造上、何もしなくて不労所得が増えるのは資本家だけであり、我々労働者は何かしなければ、不労所得は増やせないのが世の中の真理である。
だから私は高卒で社会に出て、労働はクソであることを身をもって体験し、金融資産所得で労働からおさらばするために、いくら必要か目安を見積もり3,000万円を目標にした。
理屈としては、都内居住でも一ヶ月でおおよそ10万円あれば、趣味や雑費諸々を含めて生活できるため、年率4%で運用するなら25掛けして3,000万円と、当時は税金の知識も皆無だったため、ざっくりで定めた。
それを30歳までに運用しながら達成するには…と現実的な利回りで積立金額を逆算したところ、月に15万円と出て卒倒した。当時は手取り13万円だったからである。
しかし、出来ないとは思わず、どうしたら残業に頼らずに月15万円積み立てられるか?と、脳みそに無理難題を投げっぱなしにして、携帯や水道光熱費、保険を中心に固定費を削減しながら日常を過ごしていた。
とはいえ、費用削減には限界がある。そもそも論、私が霞を食ってる仙人化し、一ヶ月0円生活を達成したところで、毎月プラスとなるキャッシュフローが13万円で、目標額に届かないのだから、好転するわけもなく、同世代が大学を卒業して社会に出る時期には、毎年の目標額からは周回遅れとなってしまった。
仮想通貨バブルの恩恵を受けても届かない。所得レンジが似たり寄ったりの周囲で毎月15万円の積み立てが出来ている人もいなければ、毎月15万円貯蓄したいと言ったところで、あまりの無謀さからか、冗談だと思われ揶揄われる始末。
やったことがないのに、どうして無謀だと分かるのだろうか。持ち前の反骨精神が煮えたぎった瞬間だった。年収300万円だと税金と社会保険料で2割天引きされ、可処分所得およそ240万円。目標の180万円を差し引いたら、月の生活費は5万円。税金や社会保険料を独学して、ここまでは算出できた。
今でこそ月6万円生活を地で行くが、当時はまだ荒削りで月7.5万円程。月額換算で2.5万円。年間で30万円不足している。もう収入を増やす他ないと、副業を試すも上手くいかなかったため、30歳までの辛抱と割り切って転職。
年収400万円に引き上げて入金力は年間200万円超となってから、徐々に周回遅れだった目標額との差は縮まり、数年後に逆転した。端から無謀だと思っていたら、今の境地には達していないだろう。
不安はあって当然。
安堵したのも束の間、30歳までの辛抱と割り切って転職したが、想像以上の負荷が掛かっていたのか、20代半ばで大病を患い入院、手術。現役世代で一番健康な時期である筈の20代で病に倒れ、死の恐怖に直面するウルトラCな経験までして、今まで生きてきた中で形成してきた価値観が、オセロの如くひっくり返ってしまい、文字通り、命を削ってまで従前の生活には戻りたいと思う様になった。
これ以上、自身が壊れるような労働をしたくない。でも、労働から解放されるために必要な目標額にも達していない。入院中、フランスベッドの上でおとなしくするしかなかった私は、また脳みそに「どうにかならないか?」と無理難題を投げた。
入院したことがある人はわかると思うが、生活リズムは6時起床、21時消灯と固定で、私の場合は絶食を指示されていた。検査の時間を除くと、1日15時間もの可処分時間を室内で、基本的に横になって過ごさなければならない。下手に動いてお腹の虫が鳴っても、ご飯にありつけないからだ。
まさか戦後に生まれた私が、やなせたかしさんがアンパンマンを創る動機にもなった、「人生で一番つらいことは食べられないこと」に共感する境地に、20代で達するとは想像もしなかった。
そうして、Amazon Primeのビデオと電子書籍を消化していたが、日頃消化せずに溜まっていたコンテンツなど、1週間もあれば全て消化してしまい、とても1ヶ月後の退院予定日まで暇が潰せるほどのコンテンツはなく、この時だけはNintendo Switchを持たずに外出したことを後悔した。
とにかく暇過ぎて、普段なら絶対に興味すら示さないであろう、寄贈された書籍コーナーをなんとなく眺めていたら、「イギリス式お金をかけず楽しく生きる」のタイトルが目に入り、直感でこれだ!と読み進めた。
弱冠でざっくりと決めた目標の3,000万円は、あくまでも都内で生活するなら、娯楽費も含めてこれ位欲しい。と言う願望を元に算出したFatFIREに近いものだった。
しかし、この本を読んで家賃が月1万円程度で、生活を工夫すれば、生活するためのコストはまだ抑えられる余地があり、地方暮らしなら現有資産だけで何とかなりそうだと直感し、今春に早期退職する。現在は地方移住の段取りを組んでいる。
老後資金対策程度の資産規模で早期退職だ。傍から見たら無謀極まりないと思われるだろうし、不安がないと言えば嘘になる。しかし、試してみたいと思う好奇心や、やってみないと分からないと思う反骨精神も混在しており、厨二病全開な青二才感が漂っているが、できない理由を並べて平凡な生き方をするより遥かにマシだ。自分の人生くらい、自分で責任を持って過ごしたいものである。