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捨てずに修理な職人気質。[MDR-XB950]

大量消費社会へのアンチテーゼ。

 以前、私は器用貧乏で大抵のことがひとりで完結してしまうことから、日常生活で食料品や消耗品を除いた金銭的消費を殆ど行わず、霞を食っている仙人染みた低消費生活を当たり前のように出来ていることが経済的独立への近道である旨を記した。

“そんな見た目は勝ち組、実態は底辺な一介の鉄道員が、20代での経済的に独立(FIRE)が現実味を帯びて来たのは、工業学科出身で大抵のことがひとりで出来てしまう器用貧乏さに寄るものだと推察している。”

器用貧乏だと消費しない。|Feu

 これまでも、パソコンの液晶モニターに虫(死骸)が混入したり、ネオ一眼のはめ殺しレンズ内に埃が混入して写りに影響が出たことから、まずは修理代の見積もりをメーカーに依頼するのだが、大抵の場合、想定以上の値段で買い替えが視野に入る価格帯であるため、ダメ元で自分で分解して、除去したり、クリーニングしたりして不具合を解決してきた。

 そして、今回は音は出るものの、装着するパッド周りがヘタって使いものにならないヘッドホンの部品交換をするに至った。型番を見たところソニー製のMDR-XB950で、購入価格は1万円弱だったと記憶している。

7年位使用。右のイヤーパッド、ヘッドバンドがボロボロ…

 同型番は廃盤となっているが、恐らく同じ設計と思われる無線モデルが現存していることから、互換品のパーツがAmazonで入手できた。交換するイヤーパッド、ヘッドバンドの2種類で3,000円程である。

 もし買い換えるのであれば、同価格帯のヘッドホンを視野に入れるだろうから、自分で修理できるだけで70%オフは大きい。

 社会人の1万円位、大した金額ではないと思われるかも知れないが、お金は使わなければ貯まる。ひとつひとつは数百円から数千円かも知れないが、その積み重ねが年単位で持続することで、数百万単位で差が開くのである。

 それに、性能に不満がなく、機能としては問題ないのに、それ以外の事由で買い替えてしまうのは、モノづくりを学んできた工業学科出身者として忍びない。

 きしめんケーブルの耐久性を考慮すると、いつ断線してもおかしくない経年具合ではあるものの、その時にどうせ無線イヤホンに買い換える可能性が高いのなら、ダメ元での修理が失敗しても諦めがつくものである。

部品が届く前に分解。

 本来なら、部品が揃ってから分解した方がネジの紛失リスクなどが軽減出来るのかも知れないが、調べてみたところ、どうやら粘着テープで固定している可能性が高そうとの情報を入手した。

 性格上、粘着テープを剥がす作業にイライラしてぶっ壊すという本末転倒な未来が脳裏をよぎったため、部品到着時に穏やかに組み立てが出来るように作業工程を何段階かに分けて行うことにした。工業学科出身なので、電気小物を分解するのは躊躇いがない。

ヘッドバンドのネジ4つを除いて粘着テープ…

 取り敢えず、左側のイヤーパッドは壊れていないので、分解せずそのままにしている。これは、右側を取り付ける時に参考になるのと、仮に片側だけ互換パーツで不揃い感が出なければ、作業自体が省力化できるのと、今後左右どちらが壊れた際に予備パーツとして流用できるためである。決してイヤーパッド外周に付いていた粘着テープを剥がすのに手こずって二度とやりたくないと思ったからではない…。

 ヘッドバンドを固定するプラパーツが到着する互換パーツに付属しているか不明だったため、これも粘着テープを丁寧に取り除いて、組み合わせた状態で保管し、部品の到着を待つことに。

先にヘッドバンドが到着。

 1枚目の画像を参照して頂くと分かるように、純正品のヘッドバンドは黒である。本製品は黒をベースにアクセントで赤が使われているものの、個人の美的センスでは赤が物足りない感が強く、その点が不満だったため、どうせ交換するのであればヘッドバンドを赤色にして、自分だけのオリジナル商品に変えてみせようなどと、遊び心が出てしまった結果、赤いヘッドバンドを注文する運びとなった。

 Amazonのセット販売でも、ヘッドバンドとイヤーパッドの色は統一されているから、わざわざパーツ毎に色を分けて注文する変態もそうそう居ないだろう。

長さが微妙に足りなかった以外はいい感じ。

後日イヤーパッドを組み込み。

 イヤーパッドが片方外れた状態で別に熟成はしないけれども一晩寝かせ、両面テープを貼り付けた状態で部品が到着するまで待つ。

 部品到着と同時に貼り付け作業を行うが、ここで問題発生。イヤーパッドの外周が細すぎてメッシュに貼り付くわ、イヤーパッド側に隙間が出来るためしっかり貼れず簡単に取れるわ、下準備をしたにも関わらず、散々な結果となったため、本体に取り付けた両面テープを取っ払い、貼り付け方法をイヤーパッド側に変更。

せっかく下準備したのに、うまく貼りつかず結局剥がす羽目に。

 両面テープがチラ見えして見栄えが悪い箇所があるものの、肝心の貼り付けがちゃんと出来たので、しっかりと圧着固定してから、はみ出た両面テープを本体側に押し込む微調整を行い、自身の美的センスが許す水準となったところで作業終了。

両面テープ細切りするとハサミがベタつくけど仕方ない…。
自動車の内装にありがちなデザインとなった。
1枚目画像比較用。耳周りの材質が純正と異なり、結局両側換装することに。(ヘッダー参照)

お金持ちほど、良いものを長く使う。

 この執筆は、部品を換装して新デザインで蘇ったヘッドホンでお気に入りの音楽を聴きながらノリノリで記しているものである。

 我々が生活している資本主義社会は、煎じ詰めると利益最大化が絶対であり、その手段として大量生産大量消費に走っているのが現代の先進国と言える。

 しかし、地球の資源は有限であり、いつかは枯渇する運命にある。だからこそ、米国がSDGsを推進しているが、我々消費者も、より安くて便利を求めてしまえば、社会はそれに答えてしまう。

 壊れたら修理するより、新しいものを買ったほうが安上がりと考えがちだが、それは大量生産された安物の話であり、お金持ちほど良いものを長く使う傾向にある。

 私は悩む理由が値段なら買うが、欲しい理由が値段なら買わないと決めている。それは価格ではなく価値で判断していることに他ならない。

 今回修理したヘッドホンも、8年近く前のモデルとはいえ、性能自体に不満がなかったことや、後継機種に相当する現行モデルが設計を踏襲していて互換品が出回っていることから、修理する選択肢が浮上した。

 しかし、大衆に選ばれがちな低価格帯のモデルであれば、互換パーツそのものがなかった可能性もある。もちろん、価格帯が高いからと言って必ずしもロングセラーになるとは限らないが、魅力的な製品であればあるほど根強い人気となる可能性は高く、魅力というのは品質や性能の高さの裏返しで原価が嵩み、結果として価格が高くなりがちな傾向にあることは否定できない。

 とはいえ、なにかモノを買う際に価格ばかり見て価値を妥協していないか、修理などのアフターサポートが充実しているかなどの視点を加えてみると、お金持ちが良いものを長く使う行動心理が少しは理解できるかも知れない。


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