推しとお話してきたお話
前回は行けなかったライブのお話をしたが、やっぱ悲しいから行けたライブの思い出でもお話しよう。
昨年の11月、私の激推しロックバンド「THE NOVEMBERS」の新潟公演に行ってきた。ホントは帰ってすぐ書きたかったんだが(忙しくて手がつかなかったので)数ヶ月経った今改めて感想書いてみようと思う。
今回のツアーは並々ならぬ気合の入った回だったと感じられた。まぁ彼らはいつもすんごいパフォーマンスを見せてくれるのだが今回は別格だった。それはツアーのコンセプトに表れている。以下は開催に先立ってのフロントマン小林祐介のコメントだ。
ということでバンド名を冠した新アルバム「THE NOVEMBERS」のリリースに先立って収録予定の新曲たちをファンの眼前で披露するというスペシャルなツアーなのだ。しかも終演後にメンバーたちから手渡しでアルバムを受け取れる特典付き。
また、引用したコメントにもあるように、このタイトルは彼らがデビュー時に出したEP(ミニアルバムみたいなもん)と同じくセルフタイトル、彼らの新たな名刺にするための渾身の作品になることは間違いない。
一応初代「THE NOVEMBERS」収録の「she lab luck」を紹介しておこう。実はゲスの極み乙女やインディゴで有名な川谷絵音は街頭スクリーンで流れたこの曲を見たことにより音楽の道に進んだのだ。
いつもは東京や名古屋の会場で参加していたのだが、今回は新潟に初上陸した。行ける日程がなかったからってだけなんだが、新潟もなかなか興味深い街であった。今度改めてちゃんと観光もしてみたいね。
公演前に物販でCDを購入。受け取るのは引換券で現物は終演後のお楽しみだ、なんてったって新曲たちとの初対面は生演奏なのだから。ワクワクしかしないよね。
先鋒はすげえキャッチーに疾走する新曲「BOY」だ。
繰り返すがすんげえキャッチーでびっくりした。ノベンバの楽曲ってどちらかというとスルメ曲的なマニアックな輝きを放つものが多いため1発目で心を掴まれることに素直に感動。
この記事を書く3日前(2月14日)にPVがアップロードされたがこの曲で作ったのは大正解だと思う。色数を抑えた絵作りがクールでかっこいいよね。
3年ぶりの新作でどんな曲が来るのだろうか?とドキドキしていたがこれだけでバッチリ信用できる会心の楽曲だと思う。
またまた繰り返すが「キャッチー」が新曲群を味わった初見の感触だ。新曲の中の一つ「Seaside」なんかはノベンバの得意技の一つである空間系エフェクターを用いた浮遊感のあるサウンドが持ち味だが、純粋に歌モノとして聴きやすくなっている。
ふわふわキラキラしたサウンドの中でケセラセラショータイム!って明るく歌われるとこっちもなんだか嬉しくなってくるよ。
そして新曲たちの中で最もキャッチーなのはMC後に披露されたロックバラード「かたちあるもの、ぼくらをたばねて」だろう。
音数を抑えたシンプルなイントロから、俺は間違いなく”歌を聴かせる”曲と捉えた。
この”破り捨てた”の歌い方にグッと来る。そのタイミングで彼らに後光が射すかのようなライティングも見事だったね、別のライブでも是非とも聴きたい名曲だと思う。こっちでPV作るのもアリだったんじゃねえかな。
そして尖った作風もしっかり抑えてるのが今作の信用できる点だ。後半で披露された「GAME」は初披露なのに鬼のように盛り上がった。
2分程度しかないがテンション上がるヤバいビートだ。この曲は音源だとちょっとパワーダウンしちゃうかな? ライブじゃないとケンゴマツモトのステージからの煽りがねーから。
このアレンジを考えたのがメンバーで誰なのかは知らないが「suiside」がめちゃくちゃ好きなんだと思う。自殺のことではないよ、インダストリアルロックの元祖とも言われるアメリカのパンクバンドだ。ノベンバは過去に「ghost rider」という曲をカバーもしている。
また、今回の公演で間違いなくハイライトとなったのはバンド名でもある11月をタイトルに冠した楽曲「November」だろう。
来るべき時が来てしまったなあと帰り道に曲目を見て思ったのを覚えている。
バンド名がTHE NOVEMBERSで同名のアルバムに収録されるNovember。生半可なクオリティの曲ではない。
これは、誤解を恐れて言えばノベンバ流のボヘミアンラプソディのような「ノイズ・ロック・ワルツ・バラード〜ドリームポップを添えて〜」だと俺は捉えた。そんなジャンルないだろうけれど。
ノベンバがここまで提唱してきた美学をありったけに詰め込んだ7分間。かなり大胆な長尺だが(だからボヘミアンラプソディに例えた)ひとときも気が抜けない怒涛の展開を見せる。
音楽経験0.00年の俺に言わせてみれば、「ここがサビだろうな?ってカッコいいメロディが来たー!と思ったら奥にもっとすげえ展開が隠れている」タイプの楽曲だ。初披露時には気が付かなかったがアレンジの伏線回収がすげえのなんの。
馴染みのない不穏なビートと歌メロで幕が開いたのに、帰る頃には暖かく壮大なワルツのようなバラードで終わる。
また、前半に怒涛のラストで使うパーツを少しずつ散りばめているのだ。だから唐突感がなくシームレスになだれ込める。
歌っているメッセージも彼らがここ数年で歌ってきた集大成のように感じられる。私は特に前作収録の「rainbow」との共通項を感じた。
これは行くところまで行ってしまったなあと思う。解散しちゃうんじゃねえかとも。もちろんまだまだバリバリ現役だけどね。
そして、今のサブスク時代にこの美学が伝わる人ってどれくらいいるのかな?って不安も感じる。明らかにタイパに反した楽曲だから。でもさあ、音楽は時間芸術だよ。演者の敷いたタイムラインに縛られることで得られる感動もあるんだ。
終演後にはドキドキワクワクの手渡し会を体験した。ステージで激しい演奏をしていたヒーロー達に会って話せるなんて夢のようだ。活動が比較的自由なインディーズバンドだからこそ出来るイベントだよね。
全員と軽くお話をして握手もバッチシ決めてきたんだが、唯一反省点がある。
それはギター担当のケンゴマツモトに対し「ステージから目が合ってずっとドキドキしてました🤗」とクソキモいヲタクじみた話をしてしまったことだ。
相手もプロなんで笑って対応してくれたが、本当に悪かったと思っている。普通に気持ち悪いよな。トークスキルを磨いてこなきゃいざという時に失礼な言動が突発的に出てしまうことをよく学んだよ。
そんな反省もあれど無事ニューアルバムと貴重な経験を得てライブハウスを後にしたが、エレベーターで一緒になったガチファンの兄ちゃんとの会話が感慨深かった。
兄「メンバーとお話しできました?」
俺「少しでしたが出来ましたよ🤗最高でした、お兄さんは?」
兄「僕は福岡の回で会ってきました!やっぱ最高ですよね、こんなバンド他にいねえっすわ」
「他にいねえっすわ」が私のなかでしばらく流行語になったのはまた別の話。
最後に最高にポップで爽やかな新曲「morning sun」を紹介して終わろう。
おしまい