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【指揮者メモ】芸術という言葉について

【芸術という語】

芸術artという言葉はプラトンの時代に端を発していて、ギリシャ語テクネーのラテン語訳arsが語源だ。そして同語源の「テクニック」と同じく「技術」を意味いていた。今の芸術に相当するものは「美しい技術fine art」と長年呼ばれていた。

この西洋の伝統を知っておかないと相当に混乱する。バッハの「フーガの技法 (Die Kunst der Fuge / The Art of Fugue)」がなぜ「フーガの芸術」ではないのか分からなくなる。18世紀中頃はまだ技術であって、ゼロではないが別に自己表現が主目的ではないのだ。

しかし、超感覚的な理念を感覚的に分かる形で表現する技術を持つ者を天才のひとつの条件としたカントの「判断力批判」あたりから変化してくる。続くシラー(第九の作詞者)の世代が芸術作品における精神性を強調しだして、現在の芸術観に近くなっていく。

西周がart / kunstを「藝術」と訳したのは明治時代であり、名訳だが、変化した後なので元々の意味が取りにくい。なお、カントはハイドンと同世代で思想的な指標になる。

指揮者メモ 伊藤玲阿奈・玲於奈・レオナ

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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