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社交不安、対人緊張が強いよしきくん① インテーク編

はじめに

社交不安を訴えて来談し、他者への緊張や不安の解消を目標として、相談室にて取り組んだ実際の相談事例です。ご本人とお母さんの承諾を得て、4回に分けてご紹介します。


初来室

夏の暑い日、お母さんに連れられた高校生の男子が、伏し目がちに相談室に入ってきました。彼の名前は、よしきくん(仮名)。16歳の通信制高校1年生です。
よしきくんは小学校低学年までは、活発で野球が得意な少年だったようですが、高学年になるにつれて、人付き合いが億劫になり、小学6年生の後半には、学校に行けなくなってしまいました。ちょうどその頃、新型コロナウイルスの全国的な感染の広がりもあり、長期的な休校が相次いだ時でした。そのタイミングで、自室にひきこもって、オンラインゲームにハマり、中学校は不登校のまま3年間で卒業しました。
そして、同年4月に通信制高校に入学し、週1日の登校と自宅学習で半年間過ごしていたところでした。よしきくんによれば、「人見知りで、よく知らない人と話すことが苦手。緊張してうまく話せない」「人にどう思われるかとても気になる」とのことでした。心配したお母さんの勧めで、お母さんと2人で来談しました。

現状整理

よしきくんの現状を整理すると、まず、学校では、ほとんど会話することがありませんでした。唯一、となりの席の子からは話しかけられましたが、自分から話しかけることは一切なく、反応も最小限にしていたようです。変な動作をして周囲から注目を集めないように授業中は視線を教室前方に固定し、休み時間中は時計を見て、時間が過ぎるのを待っているとのこと。伸びをしたり、周囲を見渡すことはできない。スマホを取り出すこともできない。ペンの音を不用意に立てたり、水筒に氷を入れることもできず、無駄な動きをしないように、音を立てないように学校生活を過ごしていました。
そうした人付き合いの苦手さを克服するために、自発的に放課後の部活動やボランティアクラブに入ったものの、それぞれに参加した際に、自分がうまくコミュニケーションが取れなかったり、人前で話すことができないということを体験して以降、参加できなくなっていました。

初回、よしき君は、セラピストが質問をすれば小さな声で応答することはできましたが、視線が合うことはほとんどありませんでした。それでも、お母さんだけではなく、本人からも、はっきりと「なんとかしたい」というコメントが聞かれたので、次のような条件をもとに継続することにしました。

条件とは、次のような内容でした。
①半年間は月2回は通うこと。
②お母さんも月1回、本人とは異なる枠で予約し来談すること。

お母さんも本人も提案を理解し、条件を快諾されたため、次回の約束をして初回面談は終わったのでした。


次回、よしき君とセラピストのアセスメント編をお届けします。


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