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小さな奇跡

2021年、今日付で開業届を出した。誕生日と同じなら、きっと忘れないと思ったのが今日を選んだ理由だ。おかげで、毎年この日は仕事について考えている。

「Webライター」なる仕事があると知ったのは2016年。「お小遣いくらいは稼げるかな、面白そう」程度のノリでWebライターを始めた。

そして、2019年に職場が閉鎖して、愛犬が他界。しばらくは何も考えずに泣き暮らした。まだ若い犬の他界による喪失感は大きく、眠れず食べられない。典型的なペットロス症候群だ。頭ではわかっていても、コントロールは難しい。そのころはライターの仕事もほぼしていない。

無職でぶらぶらしている生活は楽だった。しかし、無限には続けられないので、「さて、これからどうしよう」と職探しを始めた。年齢的に、もう転職は厳しいかもしれない。ずっと書いて暮らしたいと思っていたくせに、その段階でもライターを本業にするという発想がなかった。副業として対応としてみて、感触はよい。器用貧乏だからある程度はできるだろう。それでも踏み切らなかったのは、「どうせできない」とマインドブロックがかかっていたんだと思う。すでにフリーランスだった妹に相談しつつ、踏み切れないまましばらく過ごしたが、新しい犬を迎えて前に進む意欲が出た。

「正社員就職したって会社が閉鎖することもある。それなら一度くらい、好きなことに挑戦するのも許されるだろう。若いころあれだけ『文章で食っていきたい』と思っていたのに一度も挑戦しないのは違う」そうやって私のフリーランス生活は始まった。

雇われずに生きるということ

雇われずに生きるのは気楽で楽しい。適度に案件があって自分で調整できるなら、フリーランスは最高だ。

私は自分の性格が「フリーランスには向いていない」と思い込んでいた。自己管理能力に自信がないし、営業力は低め。自己肯定感が低くて、強くアピールできない。副業時代に書いたものや紙媒体時代に書いたものは、実績として使えないだろう。

私を含め、家族の誰もが「難しいのでは」と思っていたが、初月で会社員時代の収入を超えた。その年の5月ごろは案件が少なくて苦戦した記憶があるものの、それ以外はクライアントや案件に恵まれて今に至る。

何年か過ぎてみて、結局は「向いていたのかも」と思うようになった。作業をし始めれば何時間でも集中できる。クライアントとの連絡は苦ではないので基本は即レスだ(午前は無理)。経理の仕事をしていて請求担当だったので、請求書を作るのも嫌いではない。今までの経験がすべて生かせる。悩まず、もっと早く挑戦すればよかったと後悔しているほどだ。

インボイスとAI

わりと穏やかな毎日を過ごしていたのだが、2024年から状況は変わりつつある。理由は、インボイスとAIだ。

インボイス制度が始まり、手放さざるを得なかった案件がひとつ。金額が変動した案件がふたつ。さらに、AIが広く使われるようになり、内製化で減った案件がひとつ。また、2024年から始まって順調だった案件もAIの影響を受けて量が減った。新規案件が増えなかったのに全体的な金額減とならなかったのは奇跡だ。終了していると思った案件が復活した……という出来事が続いたおかげで乗り切った。この奇跡が永遠に続いてほしい。

さて、AIにどう対応していくかは、流行り始めのころから考えている。

使えるようになっておけば案件は増やせるかもしれない。しかし、法規制が始まったら状況が変わるかも。使用を前提として案件を請けてしまい、何らかの事情でAIが使えなくなったらパンクするかも。

何より私は、「自分で書きたい」気持ちが強い。記名記事ですらないのだから、本来はこだわらなくてもいいはずだ。それでも、自分で書きたい。年齢的に、ライターを続けられるのは15~20年。そのくらいの年数なら、なんとか乗り切れるのではないだろうか。乗り切れないのならアルバイトやパートを探せばいいだろう。

将来的には淘汰されるかもしれないし、心変わりするかもしれないけれど、「AIを使わないライター」でやっていきたい。今は、まだ。

AI自体は技術的におもしろいと思っているので、いつか自分のブログでは使うかもしれない。露骨に「AIが書きました」みたいな構成や記事には嫌悪感があるものの、うまく活用して時短につなげている人は尊敬する。なんだって使いかた次第だ。

小さな奇跡

無事に今年の開業記念日を迎えられたのは、クライアントや周囲の人々のおかげ。家族や犬が健康で、安定した仕事量があり、たまに遠征できて、日々のSNSも楽しい。いつもすべての条件が満たされるとは限らないだろう。

どれもこれも、ちょっとした小さな奇跡だ。

心から感謝しつつ、無事に来年の開業記念日を迎えたいと願っている。

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ren
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