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書評_011_世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか/山口周著

美意識について。おそらく誰の中にも美意識というものはあるのだけれど、意識しないとどんどん後回しにされる。隅に追いやられがちな美意識に光を当てて、「いや、美意識って実は凄いもんだよ」と新たな解釈と行動を与えてくれる本。

どんな人にオススメかというと、右脳か左脳かでいうと、左脳の人。理性と感性かでいうと理性の人。理屈っぽい人。著者の山口周氏はコンサル出身。アーティストが書いたアートの本ではなく、理性、ロジック、サイエンス畑の人が書いた美意識、アートの本。頭で考える癖がついている人にもスッと入ってきて、理詰めの限界に共感し、なぜ今「美意識」なのか、考えるきっかけになる。

本書の構成はとてもシンプル。タイトルにもあるように、なぜ今美意識なのかという問題提起をしたのち、大きく分けて3つの理由を挙げる。それを具体的に掘り下げていくという流れ。時間の無い人はまえがきだけ読んでも概要がつかめる。著者が挙げる3つの理由。

①論理的、理性的な情報スキルの限界
②世界中の市場が自己実現的消費へと向かいつつある
③システムの変化にルールの制定が追いつかない

①の背景にあるのは現代がVUCAだから。

Volatility 不安定
Uncertainty 不確実
Complexity 複雑
Ambiguity 曖昧

こんな状態では、問題を構成する因子のどんどん増えていき、それが動的かつ複雑に変化すると型にはまった問題解決アプローチは機能しない。渋谷ハロウィーン is ブッカである。

読み進めていくと、なぜ美意識が必要とされているのかが部活終わりのポカリ並に浸透してくる。本当に共感することばかりなのだ。ソニーウォークマン誕生の話、経営におけるアート、サイエンス、クラフトの話、クックパッドの熱いロマンVS冷たいソロバンの話、ダサい国でマーケティングしたらダサいものが生まれる話などなど。

ここまで読んだあなたはもう美意識を鍛えたくて我慢ならない状態になっているはす。じゃあ、どうやって美意識を高めるのか。ちゃんと本書の中に用意がある。著者は一つの方法としてVTS(Visual Thinking Strategies)を薦めている。簡単にいうと、絵画を観察して、観たもの感じたものを言葉にしていく。

1何が描かれているか
2絵の中で何が起きていて、これから何がおきるか
3どのような感情や感覚が、自分の中に生まれているか

実際にやってみたのだけれど、とても良い。アートを選んで、観察して、観えているもの、感じたことを言葉にしていく。ただそれだけ。鍛えられるのは観察力。観察力が必要とされない仕事はないはず。部下の様子が最近おかしい、顧客がYESと言っているが何かわだかまりがありそう等。観察力を磨きたいと思ったらVTSをやるべき。お金もかからず、時間も15分あればできる。

こんな素敵な本を書いた著者は山口周氏。コーン・フェリーのコンサルタント。コンサルぽくない。この動画でも「美意識」にも触れている。

AIなどのテクノロジーの発展で、あらゆることがテクノロジーに代替されるのは間違いないが、人の心を動かす、感動させるということは人間にしかできない。その根本となるのが「美意識」。特に日本人の持つ美意識は世界的も評価されている。日本人が世界で闘える協力な武器。「美意識」を鍛えたくなった人は是非。

サイエンスではなく、アートで引っ張る経営者といえば。
こちらの本もオススメ。宇宙開発の奥にある「美意識」とは。


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