見出し画像

フラペチーノの最後みたいな、

藤村玲乃は、唐突に動き出す。

 例えば、3日間開催しているイベントがあったとして、どの日に行くかを当日の朝の気分で決めたりする。旅行計画も、ある程度だけ決めたらあとはその場の空気で動く。藤村玲乃は、唐突に動き出す。その最たる例が、髪を切る時である。
 そもそも、3ヶ月に一回行けば良い方という美容師泣かせなのであるが、前日に「明日行くかー」と思って予約する。なので、だいたい行きたいところは予約できない。いつも予約サイトで口コミを見て、なんとなくで美容院を決める。今日は、都会の美容院にした。学校前に通るから。
 人の良さそうな美容師さんに迎えられながら、席座りシャンプーを受ける。ヘッドマッサージはできるだけ強い方がいい。髪を乾かされながら、ドライヤーの音の中に、バイト先のお兄さんの話を思い出していた。

「スタバの25周年の抹茶、あさってまでじゃない?」

Instagramにスタバを挙げていた。

そうだスタバに行こう。

 実は、この25周年大阪抹茶フラペチーノ(正式名称は大阪 25th めっちゃよくばり クリーミー 抹茶 フラペチーノ。長いね。)には、普段スタバに全然寄り付かない僕にも、ちょっと思い入れがある。
 僕が正しければ、20周年にも抹茶フラペチーノが販売されていた記憶がある。当時、高校生の僕。部活の仲間たちとこれを飲んだことがあります。その年の11月はとても風が強く、寒空の下で氷の塊であるフラペチーノを飲みながら駄弁る……。よく体調を崩さなかったなと思います。スタバに友達を行くという経験が自分の中にあるのがちょっと嬉しかったんです。

数年ぶりのスタバへ

 ということで、そんな思い出の周年記念大阪抹茶フラペチーノ(正式名称ではない)を飲みにスタバへ。意気揚々と店内に入ると、てきぱき手つきの店員さんたちのにこにこ笑顔を浴びる……。スタバに来ると自分までイケてる感じ、もっと言うと陽キャになれた気がするのなんでなんでしょう。あの空間には、店員さんが放つ陽キャパワーが蓄積されているのだろうか。(実際は、店員さんのコミュニケーションパワーのおかげな気がします。)
 しばらく並んでいると、自分の前にメニュー表を片手に順番に並び損ねた女性二人が。陽キャパワーを受けた僕、先におゆずり。なんだかいい気分です。そしたらその後、フラペチーノを受け取る際に彼女たちが日本語が分からない人に、「呼ばれているよ」と教えてあげている場面に遭遇しました。小さな思いやりの連鎖を目の当たりにして、ちょっとあったかくなった。

 フラペチーノ片手に二階席で、榊原紘さんの『推し短歌入門』を開く。まだ、全部読み終わってはいないのですが、すでにちょー面白い!!短歌に興味のあるオタクの皆様には、ぜひ読んでほしい一冊です。短歌の用語・ルールから、オタクとして短歌を書く方法まですごく分かりやすく書かれてあります。僕自身は、ほとんど短歌初心者なのですが、(これを読んだおかげで)ちょっと短歌を書き始められるぐらいになりました。歌会にも、いってみたいなー。

 本を読んでいると、座席の前を行ったり来たりする女性が。ここの二階席、人気なようです。フラペチーノは半分ほど飲み終えたぐらいでしたが、先ほど思いやりの連鎖を見た僕は席をおゆずりしました。女性に「ありがとうございます」をもらって、撤退!陽キャパワー付与持続時間はここまでです。

ココアとチョコレートってなにが違うの?

 外に出たら、思ったより寒い!氷の塊ことフラペチーノが手に張り付いて痛いのなんの。外の座席で飲んでる人もいたけど、みんなこれ普通に飲んでるんだな……。と思ったところで、5年前、一緒にスタバに行った彼らを思い出していました。元気なのだろうか。

 それと共感してもらえたことのない話を一つ。寒空の中、冷たいものをいっぱい飲むと僕に起こること!

「すごい咳が出る。」

 これ僕だけなんですかねぇ。喉が冷たくなるとすごい咳が……。横断歩道の真ん中でむせるむせる。あと、これは共感してもらえると思うけど、紙ストローってぼきぼきになりますね。これは気温とか関係ないんでしょうけど。
 そういえば、フラペチーノを飲んでいて思ったのですが、ココアとチョコレートの違いってなんだ?なんか一緒にされていることが多いこの二つですが、僕はココアが苦手です。逆にチョコレートは全くそんなことなく、むしろ好きなんですがこの違いはなんなんでしょう。インターネットに聞いてみるとカカオマスからココアバターを抽出したのがチョコレート、その残りがココアらしいです。ココアバター……?僕は油がある方が好きってこと?

 んなことを考えながら、電車でフラペチーノがなくなったカップを持っている。捨てるタイミングを逃した。フラペチーノは、始めの姿の華やかさから一変、どろどろの甘くも美味しくもないじゃりじゃりが残るだけになっている。なぜか僕の頭の中には、フラペチーノの最後みたいな○○という比喩が頭をめぐっていました。
 フラペチーノの最後みたいな結末、フラペチーノの最後みたいな女……。いつかどこかで使ってみたい比喩だ。


宣伝

ありがたいことに1月10日から16日まで、
現在所属している大学で卒業制作個展を行うことになりました!
(※13日、14日は入試期間のため立ち入り禁止です。)
現在、全力制作中ですのでぜひ楽しみにしていてください!
詳細は細かく決まり次第公開いたします!よろしくお願いします!


文章に関するお仕事はX(旧Twitter)のリプライやDMでお待ちしております。また、問題などありましたらご連絡ください。

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

この記事が参加している募集