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IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (PHPビジネス新書)

#Voicy  のプレミアム放送 がきっかけで買いました。

10年前に出版された本ですが楽しく読めました。

本の中からツイートしました。

「小学校から」というのはちょっと極端かもしれないですけれど、複式簿記は早いうちに学んだ方が良い、というのは同感です。

この一方で、こんな指摘もされています。

これからのビジネスパーソンは、みんな会計リテラシーを上げて、決算書を読めなければいけないという論調があるが、私はそんな簡単なものではないと思う。ただでさえ複雑な企業体の中身が、そんな一般的な指標だけでわかるようなら、誰も苦労はしない。生物としてのヒトについてだって、わかっていることは限られている。個体レベルでさえそうなのに、企業のように集団で動いているような組織について、そんな簡単にわかるわけがない。
冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (p.70). PHP研究所. Kindle 版.

「決算書を読む」「読める」ということは、一体どういうことか、を考えさせられます。数字だけを見て、それを計算して、いろんな指標を並べてみて、そこで終わっているだけでは「読める」ではないよ、ってことなんでしょうね。

「決算書を見て、自分で有用なメッセージが作れる」=「決算書が読める」

この #会計クイズ本  では「自分でメッセージがつくれる」=「読める」としています。メッセージの有用さを増す、高めていくためには、数字だけではなく事業の仕組み、仕掛け、競合との違い、独自性、時にはその歴史を知る必要が出てくるでしょう。数字の変化、動きとそれらの要素がうまく絡めることができた、そんな仮説を持てる。そういう状態がいいですねえ。

事業の経済性分析は、経営分析の王様なのだ。
冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (p.99). PHP研究所. Kindle 版.

「事業の経済性」という言葉。

16 業界構造の変質の陰には、必ず経済構造の変化がある


このチャプターで登場します。「事業(の)経済性」という言葉、 #中神康議さん  も説明されています。

そこで出てくるのが「事業経済性」というフレームワークです。そして、これを理解する第一ステップは、世の中に事業は星の数ほどあれど、「儲けの出方」には四つの「型」しかない、と理解することです。
このような対話は、その企業の事業の経済性に関わるものなので、「これは参考になる資料だね」と感謝されることも多いです。

#NVIC  さんのおおぶねオーナーズマニュアルにも出てきます「事業の経済性」。

事業の経済性をどう捉えるか、が非常に大切で、これこそがプロの仕事。

経営分析といっても、PLやBSをすでに起こった過去のものとして静態的に見る話と、今現に起きつつあるストーリーとして動態的に見る話はまったく別ものである。リアルな経営分析で重要なのは後者で、その企業、その事業がどういう位置づけで、どんな仕組みで儲けているのか(あるいは構造的に儲からないようになっているのか)をダイナミックにつかむこと。これこそが経営分析なのだ。
冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (p.98). PHP研究所. Kindle 版.

これまでに起こったこと、今起きていることをどう関連づけるか、その見立ての精度を高めるのは過去に起こったことをしっかりと細かく分析することが大切だと感じました。ええ歳こいて今更何を、とも思うところもありますが、そういうことをあらためて気づくことも大事なんだ、って自分に言い聞かせてます笑

経営分析において、計数的なモデリングやシミュレーションを行うときに、絶対に忘れてはいけないのが、そこで置いている前提条件に人間的なリアリティーがあるか、である。このカネボウ化粧品の例は、その重要性を如実に教えてくれている。
冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (p.103). PHP研究所. Kindle 版.


26 そもそも勝ちパターンがつくりにくいビジネスもある


このチャプターで「機会事業」「障壁事業」が登場します。

みさきなりの回答は「障壁」のひとことに尽きます。世にはあまたの事業がありますが、みさきはそれらをバッサリと二つに分けます。「機会事業」と「障壁事業」です。 機会事業とは、世の中に数多く生まれては消える事業機会をモノにして実際に利益を上げている事業です。素晴らしいではないか、と思われるかもしれません。ところが長期投資家は機会事業には見向きもしません。

中神さん率いる #みさき投資  さんも解説されていますね。

NVICさん:

この参入障壁には様々な形態があり、NVICは13年以上に及ぶ長期投資の歴史の中で類型化を行っています。
ビジネスの構造自体(技術的差別化、顧客との関係性、そして何よりもコストや価値に関わる経済構造)に、他社よりも有利になる持続的なメカニズムを組み込める、あるいは環境要因の変化にかかわらず、一定の売り上げと収益を維持できるメカニズムが組み込まれているビジネスがある。要は「勝ちパターン」を構築できるビジネスだが、これを持続的な成功の「壁」をつくれるという意味で、「障壁事業」(バリアビジネス)と言う。
冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (pp.153-154). PHP研究所. Kindle 版.

株式投資にも「機会事業」っぽいやり方がある、と思います。つまり、価格の動きを見てそれを追いかけながら投資判断する。この種のやり方は、投資先が頻繁に忙しく慌ただしく入れ替えられていることが多くなると推測されます。一方で「障壁事業」的な株式投資は、価格ではなく「事業の経済性」で判断する。それが持続的に維持されるか、あるいは強くなる余地が認められるか、で判断する。分析には、相応の手間と時間が掛かる。だから、投資先はそんなに増やせない。また、投資の期間も長くなる。

僕がアクティブファンドを眺めてみる際に、強く興味を持つのは、投資先の入れ替え度合い、1社をどのくらい長く保有しているか、です。厳選、1社の保有期間もそれなりに長いのに、長期で見て成績がイマイチのアクティブファンドもあります。そうしたファンドは「事業の経済性」を捉える、その分析がイマイチなんだろう、ってことだと思っています。

36 経営分析で同業他社を丸裸にする

経営分析は、自社の問題点をあぶり出すだけではなく、同業他社の強みや弱みを知る格好の手段でもある。
逆に、絶対にかなわないことが経営分析から判明することもある。相手の儲けの仕組みを真摯に捉え、学んだ結果として、同じことをしてもかなわないという判断を行うことも重要な経営判断である。
冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (p.200-201). PHP研究所. Kindle 版.

答えは、学びと実践の繰り返しの中に

最後のチャプターでこのように述べられています。

僕は個人投資家ですし、時間等の制約もあってできることなんてたかだかしれています。でも、それでも、数字を見て、想像を働かせながら、自分なりのメッセージ、仮説をつくっていくことはできるはず。その数を積み重ねていくと、また新しいメッセージ、仮説がうまれてくる。そうしたことを楽しみにしたいと思っています。
また、投資しているアクティブファンドから発せられるメッセージをそれと照らして「なるほど、プロはこう見るのか」ということを楽しめたらな、って。

楽しい読書体験を得ることができました。

この本と出会うきっかけを下さった大手町さんに深く感謝です。


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