何に生まれ変わったら一番嫌か、事あるごとに考えてしまう。 前世で何をやらかしたやつがこんな姿になってしまうのだろう、ととても気の毒に思えてしまうのだ。
あまり上品な話にはなっていないので、
下品な話が好きではない方は読み進めないことを推奨する。
ただ、無暗に茶化して下品にしているわけではなく、そうならないために日々の生活を正しくしようという決意の表明であると捉えていただけると
書いた方としては大変ありがたく思うところだ。
さて、前世のことなんかには全く詳しくはないのだけれど、
前世のことを考えることがないわけではない。
音楽のことなんか全然詳しくはないのだけれど、
カラオケに行けば何曲か唄うよ、くらいな程度だと言えば
わかりやすいのかわかりにくいのか。
いや、このたとえが本当に合っているのかどうかの自信もないから、
読まなかったことにしてくれるのが一番いいかもしれない。
TV番組なんかで占い師的な人が出てきて、芸能人の前世が何だったか言ったりしている。正直、全部嘘だと思っている。
あんなのは確かめようもないんだから何を言ってもいいわけで、
「アラブの王様」とか「ヨーロッパの貴族」とか「中世のお姫さま」とか言われて喜んでいるが、そんな人が生まれ変わって極東の島国で三流コメディの芝居をしたり、温泉ですっころんで失笑を誘うレポーターだったり、破壊された日本語ひっさげて読モなんかしているわけないだろう。
俺が考えているというのはそういうこととはちょっと方向が違う。
後世ではいろんなものに生まれ変わると言う。
それはそれは恐ろしいではないか。
何に生まれ変わったら一番嫌か、事あるごとに考えてしまう。
そして嫌だろうなあ的なものに出会う度に、
一体前世で何をやらかしたやつがこんな姿になってしまうのだろう、ととても気の毒に思えてしまうのだ。
もう色んなものが気の毒だ。
こうは成りたくないものばかりなのだ。
朝起きる。
枕によだれが垂れている。 恐ろしい。
枕の身になってみろ。 おっさんの涎だ。 どうだ恐ろしいだろう。
生まれ変わったらおっさんに使われる枕にだけはなりたくないと思う。
シャワーを浴びに行く。
パンツを脱ぐ。
パンツ…いまの今まで直接陰部に触れていた。 恐ろしい。
パンツの身になってみろ。 おっさんの陰部だ。
屁をかまされたって逃げられない。 どうだ恐ろしいだろう。
生まれ変わったらおっさんに履かれるパンツだけにはなりたくないと思う。
朝飯の後にトイレに行って便を出したら尻を拭く。
ここまで書いて恐怖で狂いそうになる。
ああ、恐ろしい。恐ろしすぎる。
じっと大人しく壁で待機しているトイレットペーパー…
一体どんな思いで待っているのだろう。
死刑執行を待っている死刑囚と違いはしない。
便だぞ、便をダイレクトに擦りつけられるのだ。 嫌だ。絶対に嫌だ。
恐ろしい。恐ろしすぎる。
生まれ変わったらおっさんに尻を拭かれるトイレットペーパーだけにはなりたくないと思う。
いや、自らをおっさんおっさんと言ってちょっと卑下してはいるものの、
老若男女、人間ほぼほぼ一緒だ。
女優のもアイドルのも涎は涎、陰部は陰部、屁は屁。クソはクソだ。
フローラルの香りのする屁やペパーミントの香りのクソはない。
臭いものは臭い。
だから枕にもパンツにもトイレットペーパーにもなりたくない。
まだある。
小便器にも便器にもなりたくない。嫌だ嫌だ嫌だ。
恐怖だ。そうだろう。
毎度毎度入れ代わり立ち代わり排泄の処理をさせられるのだ。
一体前世でどんな悪事をしたらこんなことになるのだ。
地味なところだが、靴下も嫌だ。同じ理由で靴も嫌。
剣道の小手にもなりたくない。痛いうえに臭い。
ゲロがぶちまけられた道路も気の毒。
犬に小便をかけられてる電柱も気の毒。
前世での何らかの悪事の結果なんだから、
自業自得と言ってしまえばそれまでだ。
でも毎日毎日、気の毒で仕方がないのだ。
俺もこれまで長い人生を生きてきて
悪いことをしなかったなんてことはない。
「一日一善」とまではいかないかもしれないが、
ちょっとずつ挽回していけたらと思う。
ああ、恐怖が過ぎる話だった。