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本の感想41『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ

結局、人は自分の本当の気持ちを言葉にすることなどできないのだろう。

言葉というのは便利で、かつ人類にとってかけがえのないものだ。文明を押し上げるきっかけとなったものであることに間違いない。

しかし、言葉には「拘束」がある。世界や感情をあらかじめ決められた枠ではめ込むような、窮屈さがある。

「喜怒哀楽」という言葉がある。このように人間の感情を主な四つのもので分類してしまい、理解させてくれるはたしかに助かる。「感情」という混沌とした曖昧な中から、「これは悲しみ」、この状態は「怒り」などというように体系立てたのは叡智ともいえる。

ただ、本来人間の感情(体の中の反応)はそんなに単純なものではない。本当は無限通りあって、人によっても違ってくるだろう。そこが言葉の窮屈さである。

しかし、そんな窮屈さを乗り越え、かつ本来は曖昧であるものを、例えや他の単語を組み合わせて絶妙に表現してのけるのが作家だ。村上春樹や、このヴァージニアウルフがそうだろう。 


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