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本の感想3『掏摸』中村文則

前回書いた本の感想2(ホリエモンの本)の、教育=悪と似ているところがある。これを読んで、常識という概念をぶち壊してくれ。

善悪の概念をぶち壊す

あなたは、自分のことを善人だと思うだろうか?一瞬でいいから考えてみてほしい。

当たり前のように、大抵の人は自分自身を善人だと思っているだろう。なぜならその人はその人の正義感や道徳があって、それに基づいて行動したり話したりする。だから、本人からしたらすべての行動は善だ。

なので、人々は、それ(自分が善人であること)を疑うということもできない。

となると、世界は善で成り立っているのだろうか?すべての人間が自分の善に従って生きる。それなら世界は善で成り立っているように思える。

しかし実は、そうでもない。なぜなら多くの人は、あるものに対して無関心、無知ということを逃れられないからだ。

例えば、563円という金額は、使い捨ての注射器が100本買える。これは、多くの子供達の命を救うことができる。

つまり、俺が定期的に飲んでいるフラペチーノ代で助けることができる命がたくさんある。それを無視したうえでの一杯。あるいは、知ってても動かないで飲む一杯。それは俺だけじゃない。

世間で行われている「募金」といった形で貧困者のためにお金を集める習慣がある。しかしこれすらも、集めたお金が正しく届かず、正しく使われない可能性もあるというのが世界の構造だ。

ここで再び問うが、世界は善で成り立っているだろうか?いや、そんなことは一切ない。

「そんなこと知らなかった」ということがどうやってもあり得てしまうこの世界は、誰もが無意識に悪となっている。

善で成り立たない世界の常識で生きる俺やあなたも、もちろん善でありうるはずがない。なぜならその世界の教育、社会常識、考え方で塗り固められ、今に至っているのだから。

所有は悪

所有(ものを保有する)という概念があるのであれば、この世のほとんどの所有も悪になってしまう。

なぜなら所有できない飢えた子供が世界中に大勢いるから。いや、たった一人飢えたこどもが存在するだけでも、その他のすべての人の所有は悪になりうる。

(中村さんはこのように「悪」という言葉を用いるが、不平等という言葉でもしっくりくると思う。上記のように、世界は不平等としても成り立っている。)

所有という概念を否定できるのであれば、「盗み」の概念もない。あるいは、10億持っている人間から10万をとったとしてもそれは無に等しい。これによって、小説の登場人物は自分の行為を正当化し、痛みやストレスから逃れているのかもしれない。

価値観とは、都合の良いもの

動物は、その数が多ければ多いほど多様性が生まれる。特に人間という「私という意識」を持つ高次な生物は、多様性が存在しやすい。さて、誰かがこの世の中で悪事を行ったとする。もちろんそれは大勢の人間から非難される。ただ、その行為が悪という証拠は何だろうか?

「法律を破っている」という案があるかもしれない。ただ、法というものは時代によって変わるもので、しかも悪で成り立つ人間が作ったものだ。本質的に法とは、その内容によって利益を得ることができる人間によって勝手に作られたものである。

ほかに、法というのは、この世の中にもともと真実として存在していたものではない。知らぬ間に、自然的に発生したものでもない。

全ては人間が勝手に作り上げたもので、人間はそれぞれ自分の中の正義、考え方の中で行動している。なにかに失敗する、人から非難される、というのはただこの世に存在する「一般的な倫理観や法というツール」をうまく活用できなかっただけに過ぎない。

この世の中にあるのは、すべてツール、道具にしか過ぎない。喜びも悲しみといった感情も、すべてこの世から与えられる刺激に過ぎない。

だったらいかにそれらを楽しめるか?味わい尽くせるか?そんな感じで生きれれば、常識に支配されずに済むかも知れない。ちょっとは気を楽に生きれるかもしれない。少し違った見方でこの世の中に触れることができるかもしれない。

その他余談、派生して考えたこと

「所有」という概念が重視されなくなってきた。ルームシェア、カーシェアリング、さらに最近では服やカバンのシェアサービスまで盛んになってきている。

最先端を行く人間たちが口をそろえて、「モノを自分で持つのは無駄だ」と、言い始めている。たしかにその通りで、「モノ」はすでに世界に存在している。その恩恵を享受するには、借りるだけで十分だし、コスパがいい。

最後に

ここまでくると、人間は自分のことだけ考えていれば合理的だ、という考えに陥ってしまうことがある。

しかし意外とそうでもない。その理由を、マンキュー(経済学者)が挙げた経済の第十原理の1つから説明してみよう。

交易(取引とか、貿易とか)は、全ての人々を豊かにする

これは経済以外にも言える。人間は歴史の中で、より良く協力できた集団が国や政治を支配してきた。戦争に勝ってきた。経済をより成長させてきた。

つまり、いかにこの世が虚無で、人間の命に神聖な意味が無いとしても、人と仲良くした方がより経済的に、楽しく生きられる。





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