本の感想16『億男』川村元気
小説は古典以外あんまり読まない。あるいは、読んでても人に言わない。恥ずかしいから。この本に関しては、藤原竜也が映画に出てたという理由で読んでみた。まあ脳死で読めてまあいい暇つぶしにはなった。現代の自己啓発書みたいなもんをテーマにしてるんだろうなぁ。
お金持ちになりたいと心から願っているのか?
「学問のすゝめ」の有名な一説は誰でも知っている。
『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。』
世間の多くの人はこの文の意味を「人間は平等」的な意味だと思っている。でも実は違う。この文には続きがあるのだ。
『されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるはなんぞや。その次第はなはだ明らかなり。「実語教」に、「人学ばざれば智なし、智なきものは愚人なり」とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり』
つまり、人の上下貴賤というものは、天が創り上げるものではなく学問の有無によってできあがる、というニュアンスだ。ルール(天、世界、仕組み)自体は誰にとっても平等に与えられており、それらルールを理解したり、うまく利用できた者が富み、知らない人間が貧しくなっていく。
(まったく世間の情報の利用の仕方は本当に醜い。自分に都合がいいところだけを使い、人を操ろうとする。)
多くの人間が金持ちになりたいと願う。その中の何%が「お金(経済、投資、政治、こんなんしか思いつかない)」について本気で調べようとし、学んでいくだろうか?思っていても行動できる人はさらに少ない。行動できても継続できるやつはもっともっと少ない。
「あたりまえ」を見つけること、実行すること
この世界では当たり前でないことの方が目立つし、良く思われがち、と作者は登場人物に言わせている。(まあその当たり前もそもそも存在しないんだけど。)勝つためには本質を見つける目が必要で、そして見つけたらあたりまえにやる。それだけでほとんどの勝負は勝つことができるとも言う。たしかになぁ。でもこれを現実にできる人がこの世の中にどれだけいるだろうか?
これは僕自身が体験したことだが、オセロや将棋は少し勉強すれば一般の人間にはまず負けないレベルまで簡単にいくことができる。オセロとかの存在を知った時(小学生)に、他の人に負けたくないと強く思い、本やネットで3日だけ勉強した。そしたら実際に負けなくなった。世界はこれと通ずるものが多い。
学校での成績、就活、賭け事など、情報や知識、努力があれば高い勝率で勝てるものは無数に存在する。ただ、人間は感情や欲に囚われがちだ。そもそも怠惰に勝てない。テストから左右される今後の人生よりも、今この瞬間の「怠ける」というちょっとの利益を選んでしまうのだ(僕もその一人)。理解していても行動できないし、行動しなければ理解してないことと同じだ。
いいと思った名言、まとめ
「人間は信用にしかお金を払わない」
伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』の中で、心に残っている言葉がある。「人間の最大の武器は信頼と習慣だ」これはまじで的を得ている。
「うまくお金を使うことは、それを稼ぐのと同じくらい難しい」
僕も投資じゃなく消費をしちゃう。
「金持ちが、お金をどのように使うか分かるまで、その人間をほめてはいけない」
確かに、二世はそもそも金を持ってるから、金持ち=賢いわけではない。使い方次第で脳味噌がわかる。
この本がいいと思ったのは、ソクラテスとかトランプとかそういった人たちの名言とか考え方を引用してるとこだ。物語として楽しめつつ、自己啓発も含めている。このやり方はいいと思った。