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カタリゴト

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アンソロジーに投稿したものや、ちょっとした短編
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#小説

風の鈴(ショートストーリー)

 チリン、チリン。  どこからか響く風鈴の音。  夏になると迷い込んでくる涼だ。  鳴ったからといって、身体が涼しくなる訳じゃないのに。  見えない場所に涼しさを纏っている。  いつだったか買った風鈴は、どこにやったっけ?  物を整理する時間があるなら、寝ていたい不精者。  その割に、なにかを始める時には活発になり。  必要な物を揃えるだけ揃えて、それで満足してしまう。  ほとんど使われずに終わった趣味のガラクタは、押し入れに詰め込まれて、わたしの中からすっと消えてしまう。

山の上の海(ショートショート)

 GPSで示された現在位置は、海の上だった。  テントの外では、雪が舞い踊っている。  スマホの画面の中で点滅するアイコンは。  山の上とは正反対の、ハワイに程近い北太平洋の真ん中だ。  もう少し行けば、小屋があるらしいという予想で進んできたけど。  小屋など全く見当たらず。  陽も沈んできたので、テントを張ってこの場所で一泊することになった。  完成した頃に吹雪きはじめた雪は。  宙の黒さえ飲み込んで。  あっという間に白い世界を作りだした。  お互いに寝袋に身を包み。

言葉の森(ショートストーリー)

「君は、偽善者だね」  夢の底から、私は必至で水面へ顔を出す。  心臓が全速力で走った後みたいに苦しい。  毛布を強く握りすぎて爪が痛かった。  あの日以来、夢で何度その言葉に貫かれただろう。  あの日、国語辞典くんが放った言葉は、棘みたいにずっと私に刺さったままだ。  小学三年生の時だった。 「あーちゃん、ごめん。今日はエミちゃんと帰るね!」  昨日もそう言って、サキちゃんはカナちゃんと帰った。 「ううん、大丈夫」  どうにか口だけは笑う。 「じゃーねー、明日は一緒に帰ろう