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#インスタントフィクション
一度カーテンが閉まると…
あの部屋に入る時は、冷静に、慎重に。
それが鉄則だ。
私は数枚の衣服を抱きかかえ、その部屋を見つめていた。
入口には門番が威圧感のある笑顔で立っている。一度入ってしまうと手ぶらで出ることは不可能なのではないかと思わせるほどの気迫だ。
もちろん、私もその気でここにやってきたのだが、いざ、あの部屋を前にすると本当に必要なのか、自分の身の丈に合っているのかを考えてしまう。何度も入口の前に立っては、ま
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満開の桜を見上げ、まだ少し堅い制服を馴染ませようと、肩や足を大げさに動かす。
桜の花に出会いを感じていたのは、もう数十年前の話。
いつからか散っていく桜を、くわえタバコでぼんやり見つめるようになった。
あの日の輝きは、もう目の中に残っていない。
少しくすんだ世界の中で生きている。
缶コーヒーを片手に喫煙所のベンチに座る。
たまに吹く風が心地いい。
コーヒーを飲もうとすると、桜の花びらが降って
What is love?
「なんだありゃ……愛についての授業?」
キーンコーンカーンコーン…ガラガラガラ
「はい、皆さん。席について!授業を始めます」
徐々に静かになる教室。
黒板にでかでかと書かれた文字は「愛」
「皆さんにとって愛とはなんですか?」
生徒から次々に声が上がる。
「大切に思うこと!」
「伝えるべきもの!」
「うちに秘めるもの」
「何があっても許すこと!」
一通り言い終わると、生徒たちは答えを求める
なんで「すき」っていわないの?
「ひとのこころ」が ひかってみえる
それがわたしの ちいさなとくぎ
わたしのままと わたしのぱぱは
わたしをみると えがおになって
まぶしいくらい こころがひかる
そのあと「すき」って いつもいう
公園にある ふるーいベンチ
いつも 2人ですわってる
あのおにいさんと おねえさん
どっちもこころは 光ってる
なんで「すき」っていわないの?
男子のこころが 光るとき
それはサッカーしてるとき
君が腕に抱えてた紙袋が破れて
幼い頃、泣き虫だった私。
きみはいつも私を心配して、隣にいてくれた。
私はきみのやさしさに憧れていた。
小学生の頃、涙を隠すように走り去ったあの子。
あいつはあの子を追いかけ、寄り添った。
私はあいつのやさしさに憧れていた。
中学生の頃、一人きりで泣いていた彼女。
彼はそんな彼女を笑顔に変えてみせた。
私は彼のやさしさに憧れていた。
高校生の頃、私の隣で涙を流したあなた。
私には何もできなか