初恋
緊張か不安か。
震えた手で書いた一通の手紙は、淡く苦い青春の象徴だ。
中学一年生のあの日。それは唐突に……衝動的に。
買ったばかりのシャーペンと便箋を机の上に置き、軽く息を吐いた。
何度書き直したかは覚えていない。
殴り書きの文章。
ただこみ上げる想いを不器用に綴った。
今となっては、この世から消してほしい代物だ。
冷たい風が吹き抜けた夕暮れの土手。
あの人の文字は相手を傷つけまいというあたたかさに溢れていた。
自分に酔ったように遠くを見つめ、ダサい自分を笑った。
強がりと愛情を込めた負け惜しみの手紙。
精一杯の言葉。
窓際の席、風に揺れるカーテン。
買ったばかりのふで箱を机の上でくるくる回すのがクセだった。
くるりと回るふで箱……その下から一通の手紙。
前の席の友達に見られないよう、さっと隠した。
あの人の文字は、僕を傷つけまいというあたたかさに溢れていた。
恋が散った、あの日。
愛を知った気がした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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