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Romance


「これじゃわからないよね……。ねえ、私と付き合ってみない?」
あいつは黙ったままボケっとしている。
「も~、なんとか言ってよ。はあ……ちょっとお手洗い行ってくる。そろそろ時間だから帰る準備してて」
私は席を立った。
「あっ、そうだ!さっきの告白、オッケーなら今日のご飯代、あんたの奢りね!」
精一杯の笑顔を作った後、私はトイレに駆け込んだ。

鏡に映るのは、珍しくお洒落した私。あいつはちっとも気づいてないけど。
「どうしようどうしよう……なんかカッコつけちゃったけど、そもそもあいつお金持ってんのか?持ってたとして奢ってくれるか?ずっと黙ったままだし」
どんどん不安になってきた。
「私のカンはずれてた?いや、落ち着け……。私のカンははずれたことない。これがはじめてだけど。うん、大丈夫だ。行こう」

「お会計、済ませといたから」
トイレから出ると、やけに男らしい顔をしたあいつが言った。
「ありがとう!」
今度はちゃんと笑えてたと思う。だって、あいつの手が震えてたから。

「今日はありがとう。さっきはびっくりして言葉が出なかったけど、これからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくね!気づいてないほうがびっくりだよ」
「そうかな……。てか、顔赤いよ?飲みすぎたんじゃない?」

私の彼は、やっぱり鈍感野郎だ。


前回の続きになっています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




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