後輩の中嶋さん(仮称)【理想と現実】
雪もすっかり解けた3月下旬。朝。
入り江を右手に、徒歩で会社に向かう。
いつもと変わらない通勤ルート。
いつもと同じ時間帯。
2年後輩の中嶋さん(仮称)が、左側を自転車で追い抜いていく。
黒いダウンのフードを浅く被り、重心は後ろで、空中を眺めているよう。
*理想
ツツー
だるそうに自転車で追い抜いていく。
「な~か~じ~ま~!」
追いかける。
速度を落とし、振り返るがすぐ前に向き直す。
「うぇ~い」
すかさず、だる絡み。
「なに自転車で通勤してんだよぉ!」ドスッ
冬季は自転車通勤を禁止されてる。
「自転車貸せよ~」
自転車を無理やり奪う。
「じゃ~な~」
自転車に乗って逃げる。
振り返ると、中嶋さん(仮称)は立ち尽くしている。
*現実
ツツー
だるそうに自転車で追い越していく。
(あ、2年後輩の中嶋さんだ)
(今日も脱力してるなぁ)
次第に離れ、小さくなっていく。